イントラネット技術を用いてタイヤ製造工場の生産管理システムを実現
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【要旨】

1. 目的・背景
住友ゴム工業株式会社加古川工場タイヤ班では、フォークリフト用タイヤを中心とした産業用タイヤの生産を行っており、このタイヤ生産に関連する部門として生産の計画や進捗状況を管理している生産課がある。
システム的にはタイヤ班ではMS-DOSを中心としたPCが製造現場の工程ごとに設置されており、タイヤを製造する機械(以下:生産設備)の制御や品質管理などを行うFAシステムがあった。  
また生産課では事務所内のPCで生産計画入力業務を行うOAシステムがあり両システムとも順調に稼動していた。しかしながらFAシステムにおいて「NEC PC-9800シリーズ」を使用している為、今後、システム機能の拡張と操作性の改善が実現できずタイヤ品質管理の向上につながらないという問題が発生した。(PC-9800のメーカー保証が数年後に切れるため)またFAシステムとOAシステムがシステム的につながっていない為、生産課ではタイヤ生産情報のリアルタイムな把握ができないという課題も以前からありこれらのことから今回、FA、OA併せて対応を実施することになった。  
まずテーマとして当然ながら生産管理の強化を挙げ、特に品質管理の向上、生産管理業務の効率化を最大の目標とし以下の項目を具体的な課題としてシステム化することになった。
◇ FAシステムのPCを全てWindowsNT化して拡張性を高め、生産設備情報収集の自動化及びバーコード付き無線ハンディターミナル(以下:無線バーコード)を活用した自動チェック、ロット保証記録のデータベース化、音声を用いた生産設備の監視等を実現して品質管理の向上を図る。
◇ イントラネット技術を利用してFAシステムとOAシステムをネットワーク化し生産情報のリアルタイムなモニター化を実現させる。     

2. システム概要  
FAシステムでは基本OSとしてWindowsNT標準とし、開発言語としてRS-232Cを使用した通信機能が充実しているMicrosoft Visual Basic6.0を選択している。  OAシステムではMicrosoft Internet Information Server4.0(以下:WWWサーバ)上で稼動するActive Server Pages(以下:ASP)を基本処理に利用し、グラフ表示などの複雑な処理についてはJAVAを活用することでイントラネットシステムを構築している。  以下に、システムの具体的な機能と狙いを述べる。
(1)生産設備情報の収集の自動化  PCとシーケンサー(プログラム内蔵方式でシーケンス制御を行う工業用電子装置)の通信により、生産設備の稼動状況及び温度/圧力の自動収集が可能となり、生産設備情報がリアルに把握できるようになっている。
(2)製品規格値の自動照合  無線バーコードを活用してタイヤ1本毎に貼りつけた一意のバーコード(チケット)を工程ごとに読み取ることで、事前にデータベース登録した製品規格と照合し、品種間違いや原材料の有効期限チェックを行う。一致した場合には、生産設備に製品規格の値を自動で設定するようにしている。これにより製品規格外れがなくなり品質の安定化につながっている。
(3)ロット保証記録のデータベース化  自動収集した生産設備情報や製品規格値の自動照合で使用したバーコード判定のデータを全てMicrosoft SQL Server6.5に記録しデータベース化している。これによりタイヤ1本毎の各工程の情報を登録したロット保証記録ができ、このデータをWEBブラウザを利用して検索できるようにしている。
(4)音声を用いた生産設備の監視  自動収集した生産設備情報(稼動時間・温度/圧力)を自動で監視する事により、製品規格と照合し適合範囲を超えた場合、合成装置で作成した音声を利用して異常内容を作業者に知らせている。これにより作業者は工程途中の異常発生を瞬時に知ることができるようにしている。
(5)タイヤ生産情報のモニター化  ロット保証記録データベースから工程進捗状況や仕掛り在庫と、生産設備情報(稼動状況)をWEBブラウザを利用してモニター化を実現している。これにより製造現場及び生産課においてリアルタイムな情報把握ができるようになっている。特に、生産設備情報(稼動状況)においては、稼動中、停止中、異常内容などの細かな情報を1画面上で表示しており、稼働状況をひと目で判別でき次作業の段取りや準備がスムーズに行えるようになっている。

3.キーポイント(システム環境面)
(1)イントラネットシステムの利用  
工場内LAN環境を利用してWEBブラウザとWWWサーバを組み合わせることによりシステムが容易にかつ低コストで構築できた。また、プログラムの変更はWWWサーバに対してのみ行われるため、各クライアントPCへのプログラム配布が必要なく運用コストの大幅な削減を実現している。
(2)モバイル端末の利用  
タイヤ班に生産設備情報(稼動状況)の監視モニターとしてMobile GearU(WindowsCE)+ASPを活用している。Mobile GearUの特徴であるタッチパネル機能を利用して画面に触れるだけでさらに詳しい情報を参照できることや省スペース型で生産設備の隙間に設置することが可能であることなどから作業者から高く評価されている。

4.計画       

5.評価
今回のシステム構築によって従来の問題点は全てクリアされ、生産管理の強化が実現できた。特に生産設備の異常監視は詳細な内容まで瞬時に作業者に知らせることができるため、品質の安定に大いに役立っている。さらに、イントラネットの構築により、リアルタイムなタイヤ生産情報が住友ゴムグループ内ならどこでもモニターできるようになった。また、ロット保証記録をCSVファイルに変換して保存できる機能をWEBブラウザから利用できるようにしたことで、品質の分析に役立ち新製品の開発に大きな成果を上げている。今後の課題としては数年後のデータ肥大化による処理速度の低下を想定し、データアクセスの分散を目的としたデータベースサーバーの2階層化を検討している。