オ−プンソ−スを利用した商品単品分析システムの構築
(PDF文書,562KB)


【要旨】

a)目的と背景
コープこうべの情報システムは、ホストコンピュータとしてAcos6を継続的に使用しており、94年頃からオープンなシステムへの取り組みとして、サブシステム単位にUNIXサーバーへ切り出してメインコンピュータのダウンサイジングを進めてきている。
オープンシステムで様々な商業ベースのミドルウェアやパッケージを採用してきたが、経年の中から、OSやパッケージのバージョンアップに追従できない問題点や、クライアントへのソフト配布や管理の問題、また運用面でのコストアップの問題が明確となり、今後のオープンシステムの進め方に頭を悩ませている。
一方、商品部ではマーチャンダイジングの改革を進める上で、数値分析のためのデータの持ち方や検索方法で頭を悩ませていた。
流通業界において売場の商品構成は、供給高(売上高)・利益を大きく左右させるものである。今日、メーカーの新商品導入サイクルは早く、もはや「経験」や「勘」だけでは商売は成り立たない。POS実績データを活用し、「売れ筋」「死に筋」をいち早く発見し、その結果を売場へ反映させ、供給高や利益に貢献することがバイヤーの任務である。
これまでは、ホストコンピュータで全店の実績データを集計して、csv形式でパソコンにファイル転送し、エンドユーザーの開発したAccessのDBにインポート後、Excelに変換して数値分析をしていた。全店のサマリーデータで全体の傾向をとらえ、バイイング活動には有効な情報として利用されている。
しかし、今日の右肩下がりの経済状況では、個店の状況を把握して、店舗ごとに供給(販売)戦略を企画する必要がある。そのためにぜひとも個店別の実績情報が欲しい。そういった要望が情報システム部に投げかけられた。
個店のPOS実績になると、300万レコード/月とデータ量が膨大で、パソコンでの処理は限界がある。それならデータベースを用意しようと考えた。しかもコストはかけず、早く実現したい。どうせなら、情報システムの悩みを1つ解決するチャレンジとして、クライアントサーバーシステムからweb技術を利用し、データベースと連携することはできないだろうか。
こうした両者の思いを解決する糸口として、「オープンソース」の存在に着目した。しかし、私自身オープンソースについては雑誌などで少し聞きかじってはいたものの、見たことも触ったこともなかった。そんな私が、「商品単品実績分析システム」を構築しようと、無謀な「ゼロからの挑戦」が始まったのである。

b)システム概要
本システムは、ハードウェアはNEC Express5800を採用、OSにはLinux、データベースにはPostgreSQLを採用した。
これまでの全店実績のしくみの流用と、店舗別に伝送されている個店情報を、ホストコンピュータからLinuxサーバーにファイル転送してデータベースを更新する方式とした。データベースは全店実績用と個店実績用を用意し、月・四半期・半期・年間の単位で実績が把握できるよう、期間別に構成した。また、ユーザーが自由にデータを抽出できるように、商品マスタ・事業所マスタ・業態マスタ・カテゴリマスタのデータベースを用意した。
クライアント側はwebブラウザを利用してLAN環境でデータベースにアクセスできるシステムとした。

c)キーポイント
まず1つ目のポイントは、オープンソースのLinuxを採用したことである。当初、業務システムに適用できないのではという先入観や、新技術のスキル不足などから、導入には懸念があったが、Linuxの開発されてきた生い立ちを調べると、現在では相当安定したOSに成長していることがわかった。また、オープンソースの技術支援をビジネスにしている会社とのお付き合いもあり、サポートを願うことで導入を決定した。
また、データベースについてはPostgreSQLを採用した。データベースは今までoracleを使用し、ライセンス費用や保守料に相当な金額を支払っている。過去においてoracleに関する大きなトラブルが2回あったが、その時もサポートセンターから明解な原因や解決策が受けられず、回避策を我々の手で対応せざるを得なかった経験がある。そんなわけで、オープンソースもネット上にずいぶんと情報が書き込まれており、商業ベースのものと大差がないのではと考えた。その機能仕様を調べると我々にとって充分な機能を装備していることもわかった。また、処理効率も一定確保できる事例を得たため採用を決定した。ここまでくると、この際すべてのプログラムプロダクトをオープンで揃えられないかと考えた。
もう一つのポイントは、webとDBの連携である。Webサーバーには、データベースの連携で親和性に優れていると言われ、世界中でも過半数以上のシェアを誇るApacheを採用した。そしてアプリケーションの作成にはHTML埋め込み型のサーバーサイドスクリプト言語であるPHPを利用することにした。

d)計画
今回のシステム開発にあたっては、(1)OSインストール、環境設定、(2)データベース設計、プログラム開発、(3)ホスト側からの実績系データ配信、(4)商品マスタ・事業所系マスタ等の配信、(5)Webとの連携アプリケーション作成、の5つに大別し、役割分担ですすめることとした。
開発に着手したのは2000年11月の初め、要件定義を固め、2001年2月5日にリリースを完了した。

e)評価
本システムは、ハードウェアに360万円、ソフト開発費に270万円と、比較的低コストで、開発期間もわずか3ヶ月の期間で提供できた。
このシステムは、ユーザーが開発していた全店レベルのしくみを基本にしたため、SEから見るとデータベースも冗長的で美しいものとは言えないが、ユーザーは自分たちの思考とデータの配列が合っているため、違和感なく利用されている。
また、レスポンスもユーザーの期待値におさまっており、喜ばれている。
情報システム部としては、情報検索系のシステムであり、トラブルがあっても業務に致命的な打撃は少ないと考え、新しいものに挑戦する絶好の機会と一定の経験を得ることができた。
今のところ、導入後トラブルもなく稼動しており、今後のハードウェア・ソフトウェアの選択肢の幅を広げ、次期のシステム構築に提案してゆけるであろう。