Webコンピューティングによる「システム開発のための基盤整備」
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【要旨】

『我々の記憶力こそが、お客様へのサービスであった。』と住友林業のアフターフォロー担当は、アフターフォローシステム(以後アフターS)を俊敏に入力しながら、以前を振り返りこう語ってくれた。1年前の操作研修では、マウスを動かす際に、マウスがはみ出ない様にとマウスパッドまで一緒に動かしていた人物とは思えない。
現在、住友林業(株)では、Webコンピューティングによるシステム化が急加速し、汎用機(ACOS)の基幹系システム,日常業務のC/Sシステムが次々にWebに置き換えられ統合されている。この急加速の背景には、次の要因が挙げられる。

1.現場担当者の道具としてのWebシステム作りが功を奏し、現場担当者に情報化意識が浸透した事。
2.ACOS基幹系システムの老朽化による利用ニーズとの相違が飽和状態に達し、Webシステムへの置き換えに留まらず、従来の管理主体から現場主体へとシステム内容が激変した事。
3.手探りで作り始めたWebシステムも、プログラムの部品化,汎用化によって、著しく生産性が向上し、製造コストが減少した事。

Web開発によるシステム化が軌道に乗るまでは決して平坦な道のりではなかった。最初の業務系に挑んだアフターSは、住友林業の家を建てて頂いたお客様の建物情報管理である。アフターの名の通り、最終工程での情報管理である為、膨大な情報を扱うシステムである。試行錯誤の上本稼働を迎えたが、使い易さの探求意識が技術の壁に屈し、使えないシステムを生み出した。結果的に、この猛省こそが現場の意見に耳を傾けるきっかけとなり、5ヶ月後のシステムバージョンアップの際には、絶賛されるまでに改良を成し遂げた。
しかし、依然として製造コストが割高である点が課題として残った。構築したWebシステムは、ハードウェアにNX7000,DBMSにORACLE7,WebサーバーにOWS2.1,フロントエンドにNetscape3(以上)を使用し、プログラムはストアドプロシージャの中にHTMLを組み込むPL/SQLカートリッジをベースに製造し、JavaScriptで画面操作を制御する。どんな簡単な画面製造でも、セッション管理等のWebの弱点を補う為のソースコードを多量に必要とし、複雑さが増している点に加え、仕様ロジックが多種多様に混在する業務系との相乗が多大な工数を必要とした。コスト高を解消すべく、以下の取り組みを実施した。

1.共通機能と固有機能を明確に切り分け、共通機能は徹底的な部品化を行った。
(セッション管理機能,セキュリティ機能,Help画面機能,データダウンロード機能..etc)
2.情報化ニーズに瞬時に応えようと、従来プログラミングを行っていた抽出画面や一覧
画面機能を定義データの変更だけで生成可能な、汎用ツールとして開発した。
3.上記の部品,汎用ツールを最大限生かすと同時に、操作性やレスポンスなどの品質確保のため、画面をはじめとする設計標準を整備しマニュアル化した。

以上により、深い専門知識が無くても、要求水準を満たすプログラミングが行えるようになり、大幅な生産性の向上を実現できた。
発展途上のWebコンピューティングに挑みつつも、ベンダーのバージョンアップに左右されない手作りによる構築を選択したが故に、割高な製造コストが弊害となる。情報化推進に立ちはだかるこの命題に対し、正攻法で迎え撃った結果、広大な活路を見いだす事ができた。
現在では、住友林業の家を建てて頂いたお客様の建物情報は、図面に始まりお客様からの電話での応対までもが記録される。全国に配置した3000台強のパソコン1台1台が多種の情報源となっている。基盤が整った今後は、インターネット技術の特性をより生かした、取引先との広大な情報連係を行い合理化推進を目指す。また、CAD,CAMシステムなどの異種プラットフォームシステムとの情報連係を手掛け、更なる情報の共有化を行う予定である。
冒頭のアフターフォロー担当者が、照れながらこう付け加えてくれた。『このお客様からのお礼の電話が嬉しくて、何度も画面を見てしまうんだよ。』

本論文では、Webコンピューティングが、当社のシステム開発手法として確固たる地位を確保するに至った数々の取り組みについて、上記3点を中心に考察を論ずる。