オブジェクト指向による基幹業務システムの開発
(PDF文書,401KB)


【要旨】

1.背景と目的
弊社サービス本部では、空調業界での世界bPを目指した『顧客第一の視点での最高のサービス品質実現』と『高効率なサービス業務体系の実現』を支援する戦略的情報システムとして、1988年に開発したサービス部品管理の全国オンラインシステム構築を皮切りに、1994年以降は、オープンシステムによるシステム構築を志向し、分散データベース、分散トランザクション技術など駆使し、「攻めのサービス」を実現する常に他社に先駆けた先進的な情報システム構築を行ってきました。
@業界初の遠隔保守事業の実現
空調機故障診断・予知機能付き遠隔監視システム「エアネットサービスシステム」の構築(1994年)
Aサービスマン出動管理による24時間365日受付体制の実現
サービス集中受付・訪問スケジュール監視システム「SQSES−DRシステム」の構築(1996年)
Bグローバル部品調達管理の確立
『空調事業のグローバル展開』とサービス部品受注・供給方式の業務改革を目指して新たな部品管理システム「SQSES(サクセス)−BRシステム」を構築しました。(1999年)
SQSES−BRでは“オブジェクト指向”を採用し、新しいグローバルビジネスモデルを構築できましたので、今回これを論文提案させていただきます。
 詳細は以下に述べさせていただきます。

2.システムの概要と特徴
SQSES−BRシステムでは、以下の3点をシステム化狙いに掲げ、部品倉庫集約という業務施策による在庫圧縮、倉庫業務の効率化をシステムで支援し、受注〜出荷までのリードタイム短縮、在庫引当最適化などのシステム機能充実により、従来以上の顧客サービス向上を実現しました。
@20数箇所の部品在庫倉庫から2拠点パーツセンターへの集約による在庫圧縮(在庫金額25%削減)
A全国24時間以内のお届け体制の確立
B国内販売店様へのリアルタイムでの情報提供(在庫状況・納期回答状況)と業務効率向上(部品情報検索・部品発注機能)
SQSESで目指すシステム要件を実現するには、全国部品倉庫の在庫情報を一元的かつリアルタイムに管理し、約1,200台のクライアントPCから受注・発注・在庫引当/照会といったトランザクション処理を高レスポンスで実行できる処理能力と、刻々と変化する経営環境に柔軟に適合していけるシステム構築技術が求められ、これに応えて以下の特徴を持ったシステム構築技法を施策しました。

システムの特徴
1) 3階層C/Sモデルの採用
システム構成は、在庫引当等のリアルタイム在庫情報更新処理と高レスポンス確保のシステム要件を実現させるため、以下のような3階層型C/Sモデルを採用しました。
@データベース層:データベースサーバ(DBサーバ)で全国部品倉庫の在庫情報を一元的かつリアルタイムに管理する。
Aアプリケーション層:複数のアプリケーションサーバ(APサーバ)で受注・在庫引当等の業務プロセスを負荷分散させ、各クライアントPCからのトランザクションの高速処理と短時間応答を行う。
Bプレゼンテーション層:GUIによるデータ入出力支援機能やAPサーバとの通信、部品イメージ表示処理を行う。
2) オブジェクト指向分析/設計技法の採用
一般に3階層C/Sモデルでシステム開発を行う場合、各サーバ・クライアントで開発するプログラムは別個に開発され、個々が連携して初めて一連の業務が完結する構造となり、このため従来のシステム設計技法ではプログラム間インターフェースなどのシステム設計が複雑となり、システムテストや設計変更・仕様変更への対応が非常に煩雑となってしまいます。
今回のシステム開発では、オブジェクト指向分析/設計技法を採用することにより、プログラムの実行環境に依存することなく、業務本位の観点から業務の独立性を高めたシステム設計でき、今後のシステム拡大や業務ルールの変更等に柔軟性、迅速性を持って対応することが可能となりました。

3.評価
オブジェクト指向技術は大規模システムには不向きと評されることもありますが、当社ではプロジェクト体制とツール導入の2つの面で以下のような施策を講じ、従来方式のシ開発に比べて初期システム開発では生産性30%向上の確証が得られました。
・プロジェクト体制面での施策
オブジェクト指向設計の成果物である”クラス”の管理責任者を設けました。
クラス管理者は各クラスの共通オブジェクトを管理し、各サブシステムでの冗長開発の排除とシステム全体の整合性を保持しました。
・ツールの導入
オブジェクト指向によるシステム開発は今回、殆どのメンバーがはじめての経験であったが、オブジェクト指向設計ツールにラショナル社のROSE、プログラム作成ツールはForteを採用して、その技法の早期習得と開発作業の効率化ができました。
また、Forteで作成したオブジェクトは、ネットワーク透過型の分散オブジェクトであるので、業務ピークの高負荷トランザクション時にも、その実行環境(サーバ)のコントロールによって即座にレスポンス対策が可能であることが実証されました。

4.総論
”オブジェクト指向”は、これまで制御系、インターネット関連や小規模システムで活用されてきた手法であるが、今回のプロジェクトでは、部品管理システムというリアルタイムなデータベース更新を伴う基幹トランザクションシステムに“オブジェクト指向”を適用しました。その結果、業務設計、プログラム製造、システム運用、システム変更というすべてのフェーズに亘り、有効なシステム開発・構築手法であるという確証が得られました。また、当社の空調営業情報システム(NAVIT)の構築に向けても今回のノウハウが反映でき、空調営業・サービストータルの基幹情報システムを端末3000台という規模でオープン化の実現ができました。