NUA WORLD 関西NEC C&Cシステムユーザー会

会合 平成24年度

社会に貢献するNECのトップ技術!
第9回 ITソリューションセミナー

小惑星探査機「はやぶさ」の帰還で多くの皆さまにNECの宇宙技術を知っていただきましたが、NECにはほかにも、世界をリードし、世界トップクラスのシェアを誇る技術があります。
2013年3月1日、関西NUAでは「社会に貢献するNECのトップ技術!」と題し、世界最先端を誇るNECのトップ技術を広く知っていただくため、「世界を結ぶNECの海洋技術」「世界に必要不可欠なNECの無線伝送技術」の2テーマで講演を行いました。その内容をご紹介します。

日時 平成25年3月1日(金) 14:00〜17:00
場所 NEC関西ビル38階 ユーザー会サロン

グローバルに社会貢献するNECの知られざるトップ技術

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テーマ: 世界を結ぶNECの海洋技術
〜光海底ケーブルシステムの最新動向〜
講師: NEC 海洋システム事業部長 青木 恭弘
生活やビジネスのあらゆる場面において、グローバル通信ネットワーク環境が必須になっています。NECは1964年より海底ケーブルシステム事業に参入。以来、高信頼技術が高く評価され、世界の海底ケーブル市場でトップクラスの実績を有しています。日本を含むアジア・太平洋地域を中心に世界の主要海底ケーブルシステムを構築。その距離は地球を5周する20万kmにも達しています。

1 海底ケーブルシステムとは?

海底ケーブルシステムは「海底環境下に設置した長距離光伝送システム」と定義することができます。その特長は、(1)大容量/高信頼/長期使用、(2)光中継器およびケーブルの動作環境、(3)高耐電圧の3つです。(1)では、システム設計寿命を25年に設定。回線断時間は年間5分以内、コンポーネントの故障による光中継器の船での回収は25年に1〜3回未満という厳しい基準です。伝送容量は、100Gb/s×100波長×8ファイバペア(約80Tb/s)の大容量。(2)の動作環境では、高耐水圧と高耐圧が求められます。最大水深8,000mでは1cm2当たり800kgの水圧がかかり、ケーブル荷重は6トンになります。(3)の高耐電圧では、長距離光伝送の場合、両端から給電しますが、最大±12,000Vの耐電圧が必要となります。

図:海底ケーブルシステム概念図

2 海底ケーブルシステムの歴史と概要

海底ケーブルシステムの歴史は、モールス信号を送るため、1850年にドーバー海峡に敷設したのが始まりです。以降、電信ケーブルから同軸ケーブルの時代に移行。1963年には、日米間で衛星通信が開通し、1990年代前半までは衛星通信が主流でした。1988年には1Gb/sの光ケーブルが敷設され、1999年には640Gb/s、2001年には1.28〜Tb/sと、光ケーブルの時代になり伝送容量は飛躍的に拡大してきました。
最新の伝送容量は80テラビットです。これは1ケーブル当たり最大約12億4,000万の電話回線が同時に通話できる、あるいは約2,100枚のDVD(4.7GB)を1秒間に送信できる容量です。通信衛星と比較すると、安価で信頼性が高く大容量、将来のシステム拡張が容易で長寿命、上空72,000kmの衛星通信に比べ伝搬時間が5分の1などの特長があります。金融取引などリアルタイム性が要求される通信に適しており、現在グローバル通信の99%以上が海底ケーブルを利用しています。
システムの主要構成機器は、大きく陸上局設置装置と海底設置装置の2つに分かれます。NECの海底ケーブル機器は、陸上装置は東北の宮城県で、光中継器などは山梨県の大月工場で、ケーブルは北九州の工場で生産しています。中継器とケーブルは、敷設前に接続し、システム性能試験を実施し、その後敷設船に積み込み、計画された場所に設置されます。
国際通信回線の需要は、北米とヨーロッパ間、北米とアジア間が大きく、情報量の流れに比例しています。2008年から12年の地域別の需要の伸びは、中東92%、以下南アジア88%、アフリカ81%、東ヨーロッパ76%と続き、経済活動の旺盛な地域の伸び率が大きいことがわかります。また使用容量の伸びを見ると、大西洋間が最も伸びており、太平洋間、アジア間、アメリカとラテンアメリカ間と続きます。

3 海底ケーブルシステムの構成技術

海底ケーブルシステムの技術は、光ファイバに移行してから1990年代前半までは光再生システム、その後、光増幅システムへと進化し、波長分割多重(WDM)、さらにWDMをより高密度化したDWDMの技術により、飛躍的に多くの情報量を送受信できるようになりました。現在では伝送容量100Gb/sを達成し、1994年と比較し10年間で100倍に増えています。
海底ケーブルシステムの主要構成機器には、光中継器、光分岐装置、給電装置、光端局装置、SDH(Synchronous Digital Hierarchy)装置があります。
光中継器は、エルビウムドープファイバ(EDF)と高出力の980nm励起レーザ(LD)を用いた光増幅器を採用。励起レーザは冗長構成をとっています。システムユニットは上り/下りの信号を増幅するため、2つの光増幅器で構成されています。海底分岐装置は、3つの陸揚げ局を結ぶシステムに利用します。海底分岐装置の光回路は、信号をファイバ単位で分岐するFiber branchと波長単位で分岐するOADM/ROADMbranchの2タイプがあり、深海でも高信頼性を保つため、アクシデントがあっても遠隔操作で残りの回線が使えるように切り替えを行います。光海底ケーブルは、敷設する深さによって異なるタイプを使用。水深1,500m以下の場所では、船の錨や漁船の網にかかっても大丈夫なように周囲に鉄線を巻いた太いケーブルを使用します。長距離光伝送では、波形を劣化させる波長分散や非線形光学効果による複合作用が起こりますが、光海底ケーブルには2つの異なる特性を持つ光ファイバを用いた分散マネジメントファイバ(DMF)を使用し、フラットな分散特性を実現しています。
陸揚げ局には、ケーブルターミネーションボックス(CTB)、海底光端局装置(LTE)、給電装置(PFE)、監視制御装置などが設置されています。LTEは、海底伝送路と陸上装置を結ぶ役割を担います。給電装置は、海底中継器に直流の定電流を供給。長距離幹線の場合は陸揚げ局の両端から、支線は片端から給電します。

4 大容量化に向けた技術開発

現在、さらなる大容量化を目指して研究開発を進めています。最近では、無線技術と同様なマルチレベル変調に加えて、光デジタルコヒーレント技術を採り入れ、光変調速度を等価的に低減することにより、チャネル当たり100Gb/sを実現。NECは、既にコヒーレント光受信方式のトランシーバモジュールを製品化しました。
これは、第4世代の技術ですが、近い将来、第5世代の光スーパーチャネル技術を用い、テラビットからペタビットの超大容量化に向けた開発を行っています。光スーパーチャネル技術は、従来に比べて、周波数帯域を効率よく使用でき、大容量の伝送を実現するものです。NECは、2012年1月、1光波長当たり毎秒1テラビットの大容量信号の、1万kmを超える超長距離伝送実験に成功。実験では、1テラのスーパーチャネル信号を4波長多重化し、毎秒4テラビットの総伝送容量を達成しています。NECラボラトリーズアメリカと共同で、マルチコア光増幅技術やマルチモード伝送技術の開発を進め、1.5ペタビットという超大容量の実用化も視野に入れています。

図:伝送技術および容量の変換

5 海底ケーブルシステムの建設と最近の納入実績

海底ケーブルシステムの建設は、システム規模に依存しますが、通常は12〜24カ月程度の工期となります。北九州工場ではシステムアセンブリー試験を行い、敷設船への積み込みは、最大2ライン24時間かけて積み込むことが可能です。海洋工事は、主区間敷設と海浜部・浅海部工事のそれぞれの状況に適した作業を行います。
最近の海底ケーブルプロジェクトには、2013年2月完工のAsia Submarine-cable Express、2013年中旬完工予定のSouth-East Asia Japan Cable System、2014年後半完工予定のAsia Pacific Gatewayがあります。

6 海洋観測システム

NECは、海底ケーブルシステムで培った技術を活かし、30年以上にわたり海底地震観測システムを提供し、緊急地震速報や地震発生機構の学術的な研究に貢献しています。地震計や津波計を組み込んだ海底地震観測システムは防災に役立ちますが、台湾への納入も含め、11システムの納入実績があります。海洋観測システムには、高信頼度型、必要に応じてセンサを追加できる展開型、回収する簡易型がありますが、そのほか環境モニタリング用の先端観測装置もあります。将来的には、分岐装置を利用して機能を分け、海底通信システムと海底観測システムを融合させる計画です。

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