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歴史探訪
 

下町情緒と異国情緒が交錯する上野

訪問した人
オリエンタルモーター株式会社
情報システムソリューションズカンパニー
海野 貴史さん

[写真]

 東京の北の玄関口・上野。多くの人でにぎわうこの地にも、明治以来の歴史が息づく空間があります。

 ここを訪れたのは、精密小型モーターおよび制御用電子回路などの開発・製造・販売を手がけるオリエンタルモーター株式会社の海野貴史さん。会社ではシステムの開発やマネジメントを担当し、最近では販売基幹システムのリプレースを手がけました。また、関東NUAのマネジメント研修会に参加し、人材育成やコスト削減、セキュリティなどのIT部門共通の課題について他社の方々と情報交換をしながら課題解決のヒントを探っています。「他社の人が何を考えているか、知ることのできる機会は少ないので、貴重な体験だと思っています。今後は、もっと若い人も参加できるような企画があるといいですね」。

 そんな海野さんは5歳の男の子と3歳の女の子の父親でもあります。「休日はほとんど子供の相手をしています。最近ではアスレチックがお気に入りで、よく一緒に行っています」と笑顔で語ってくれました。

優美な洋館が残る旧岩崎邸庭園

写真 明治建築の流麗な姿を今に伝える旧岩崎邸の洋館

 上野駅から不忍池のほとりを歩き、10分ほどで到着したのは、旧岩崎邸庭園です。鹿鳴館やニコライ堂を設計したジョサイア・コンドルが設計した洋館は、異国情緒あふれる外観を今に残しています。この建物は、主にパーティーなどに使われたものだそうです。2階には、美しい金唐紙の壁紙が復元されていて、往時の面影をしのぶことができます。また、建築当時に造られた暖炉を、後にガスが通るようになって埋めた跡も見られ、明治期から現代に至る時代の変遷が見て取れます。海野さんも「客間が八角形に見えるように工夫していたり、階段に柱がない特殊な構造だったり、あちこちに見所がありますね」と感心した様子です。

 

 洋館から和館へと渡る通路は、畳廊下になっていて、ここで「洋」から「和」へと気持ちを切り替えるしかけなのだとか。その和館には、明治を代表する日本画家・橋本雅邦作の障壁画が残っていて、欄間などには岩崎家の家紋である「菱」がかたどられています。海野さんは「私はこの和館がとても気に入りました。さすがに岩崎家が建てただけあって、和風建築を極めたという感じがしますね」と語ります。

写真 旧岩崎邸のビリヤード場は、当時珍しい山小屋風の建築

 和館から外へ出ると、大名庭園の形式を一部踏襲したという広大な庭があり、その片隅には撞球室(ビリヤード場)があります。この建物は、当時の日本としては非常に珍しいスイスの山小屋風の作りになっていて、洋館とは地下道で結ばれているそうです。「趣の違う建物が並んでいて、見ていて飽きませんね」と海野さん。

 

昔の東京がよみがえる下町風俗資料館

写真 昔の看板や生活道具などが並べられた展示室

 上野公園に戻って、台東区立下町風俗資料館を訪れてみました。ここには、江戸時代の風情を残す東京・下町の街並みが再現されています。1階の展示室には、当時の大きな商店や、駄菓子屋などが実物大で展示されていました。海野さんは「こんなに古い店ではなかったですが、駄菓子屋にはよく遊びに行きました」と楽しそうに眺めています。

 
写真 懐かしい雰囲気が満ちる、昭和30年代の暮らしの風景

 2階へ上がると、これも区内の銭湯で実際に使われていた番台や、昭和の一般家庭の居間が再現されたスペースがありました。実際に居間に座ってみた海野さんは「家具はもう少し新しかったですが、うちも昔はこんな雰囲気でした。ちょっと懐かしい感じがしますね」と語ります。玩具コーナーにはけん玉やベーゴマ、竹とんぼといった昔懐かしいおもちゃが並び、海野さんも一時童心に帰ったようでした。

 

 下町風俗資料館を出て上野駅に向かうと、上野公園に向かう家族連れや観光客とすれ違います。東京の真ん中、上野周辺にも、さまざまな歴史が息づいていることを感じた一日でした。

(2009年9月28日掲載)

旧岩崎邸と下町風俗資料館一口メモ

 旧岩崎邸は、もとは旧舞鶴藩・牧野氏の屋敷でした。三菱財閥の創業者・岩崎弥太郎の息子、岩崎久弥が家族9人で暮らした場所です。当時、敷地の広さは15,000坪もあり、明治29年(1896年)に完成した洋館と現在残る和館のほかにも、20棟あまりの建物が並んでいたといいます。現存する洋館は、木造2階建て、地下室付きで、明治期の上層階級の邸宅を代表する西洋木造建築です。戦後は一時GHQに接収され、その後は最高裁判所の司法研修所などとして使用されていましたが、現在は重要文化財に指定され、内部を見て回ることができます。
 台東区立下町風俗資料館は、昭和55年(1980年)の開館です。明治・大正ころまでの下町は、江戸の名残を残していましたが、大正12年(1923年)の関東大震災と、昭和20年(1945年)の戦災によって、その面影は急速に消えてしまいました。さらに、昭和30年代の高度成長期には、再開発が進み、町の様子はすっかり変わっていきました。こうした中、古き良き下町文化を後世に残そうという気運が高まり、各方面からの資料提供などの協力を得て、下町風俗資料館として結実したのです。


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