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ManufacturingTransformation

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コラムトップ > Vol.06 変革の舞台は用意されている、デジタルトランスフォーマーとなれ

変革の舞台は用意されている、
デジタルトランスフォーマーとなれ

第3のプラットフォームの拡大により、変革の舞台は用意されている

今回が、本コラムシリーズ「Manufacturing Transformation 」の最終回となる。これまでのコラムで扱ってきたキーワードは、IoT(Internet of Things)、オムニチャネル、品質管理、Digital Twinである。これらを各回のテーマとし、製造業で「今」どのような変革が起こっており、「これから」どのように製造業を取り巻く世界が変化していくのかを、そのフロントラインにいる製造業のケースを織り交ぜながら議論してきた。

テーマは多岐に渡ったが、それぞれに共通して言えることが2つある。1つは、各テーマで整理して見てきた「今」をもたらした背景には、新しいテクノロジー基盤である「第3のプラットフォーム」があること。2つ目は、このテクノロジー基盤がもたらした環境で、競合他社の一歩先を進み「これから」の時代を牽引するのが、テクノロジーを武器に変革の道を進んでいる企業だということである。今、第3のプラットフォームの拡大により、製造業が置かれる環境は「Transformation – ready(変革の準備が整った)」だと言える。つまり、変革の舞台はすでに用意されており、後は、読者や読者が所属する組織がテクノロジーを武器に「変革」できるかにかかっている。

ここで、第3のプラットフォームがもたらした新しい世界について、少し整理したい。第3のプラットフォームはIDCが提唱する、ビッグデータ、クラウド、モビリティ、ソーシャル技術を4本の柱にしたテクノロジー基盤であり、その上にIoTやコグニティブシステム、ロボティクスなどの「イノベーション・アクセラレーター」と呼ばれる新しい技術が展開される。これらのテクノロジーが製造業に限らず、企業や個人にもたらした世界を表す際の重要なキーワードが「デジタル」と「コネクテッド」である。つまり、「あらゆるものがデジタル化され、つながる世界」である。前回のコラムで紹介したDigital Twinはまさにデジタル化の産物であり、2回目のコラムで紹介したIoTがコネクテッドな世界を加速させている。第3のプラットフォーム市場が拡大する中、この動きは今後も加速するであろう。

また、この2つのキーワードを念頭にグローバルに目を向けると、海外の製造業は一歩先に進んでいるように感じる。まったく新しいビジネスモデルを確立しクラウドサービスを展開するGE(General Electric)や、電気自動車メーカーとしてシリコンバレーから自動車業界に新規参入し、今は自動運転車開発で業界をリードするテスラモーターズ(Tesla Motors)などが例として挙げられるであろう。日本の製造業がグローバル市場で戦っていくためには無視できない変革が、世界では起こっている。待ったなしで変革を進めていかなければならない状況にあると、筆者は考える。

変革を求められる日本の製造業が直面する「プレッシャー」

しかし、上述のように変革の舞台が用意される中、日本の製造業はグローバル市場の競争相手と戦うための変革が求められており、直面する「プレッシャー」は大きい。特に日本の製造業にとって変革のためとは言え、「これまでのやり方を変えるのは極めて困難だ」という声を聞く変革領域がある。「情報」と「人」のエコシステム(※)環境の構築である。
(※もともとは自然界の生態系や物質循環を意味する「エコシステム」は、IT業界を中心に新しいビジネスモデルを表す際に使われてきた)

今、「あらゆるものがデジタル化され、つながる世界」において、「情報」と「人」の活用に当たり、自社のリソースだけではなく、社外のリソースも活用することが競争力を上げる重要な要素となる。たとえば、グローバル市場に広がる顧客の要望(3回目のコラムで登場した「わがままな消費者」を思い出してほしい)に迅速に応えシェアを維持、拡大することを考えると、自社製品やサービスの展開において開発から製造、保守まですべてを自社やその系列会社のリソースだけでまかなうことに、限界を感じる読者も多いのではないであろうか。しかし、現実問題として、外部の協業パートナーと海外競合に勝るスピード感を持って新製品を開発、製造、市場投入し、顧客が求める保守サービスをスピード展開するのは、「今の体制では困難だ」という製造業が大半であろう。

以下の2つの図で、「技術情報」と「労働力」について、日本の製造業が置かれている現状(As Is)とエコシステムが構築された場合の環境(To Be)を示した。さらに、To Beに向かう「変革の道」を阻む障壁の例をいくつか挙げている。技術情報のケースだと技術情報の機密性によって、外部との共有が困難であったり、時間がかかることや社内外の設計環境が異なることが迅速な共同開発を阻む。労働力の場合は、恒常的かつ柔軟な労働力を確保できずリードタイム短縮を阻み、経営陣などの要職の固定化や人材不足で迅速な組織変革が遂行できないなどの「障壁」である。これらの障壁を乗り越えるために、「第3のプラットフォーム」があり、テクノロジーを武器に変革の道を進むことが、今、可能になっている。図では「第3のテクノロジーが解決し得る領域」として、いくつか例を挙げた。

「技術情報」エコシステムへの変革例

Source: IDC Japan, 2016

「労働力」エコシステムへの変革例

Source: IDC Japan, 2016

デジタルトランスフォーメーション

上述の「情報」と「人」は、日本の製造業にとって特にチャレンジとなる変革領域として取り上げたが、これらはIDCが提唱する企業が進むべき変革「デジタルトランスフォーメーション」の、重要な変革領域に含まれる。デジタルトランスフォーメーションとは、「企業が第3のプラットフォーム技術を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデル、新しい関係を通じて価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」である。そして、この変革を推し進める企業をIDCでは「デジタルトランスフォーマー」と呼んでいる。変革は一昼夜にしてならずだが、すでに舞台は用意されている。自社の組織や業務の中で、今取り掛かることができる領域を見定め、自社の変革を後押しするテクノロジーを手に入れるステージに来ているのではないであろうか。

6回に渡るコラムを通して、「製造業の変革」についてさまざまな切り口から解説し議論してきた。読者や読者が所属する組織が、テクノロジーを武器に「デジタルトランスフォーマー」となるヒントになれば幸いである。

アナリストプロフィール

岩本 直子

IDC Japan株式会社・ITスペンディング・マーケットアナリスト

IT市場調査会社であるIDCにて、産業分野、企業規模、地域ごとのIT市場動向およびIT市場規模の調査・分析をおこなう。産業分野のうち、特に製造業、流通業、サービス業を担当し、グローバルIT ガバナンスや業務部門におけるIT 投資動向、各産業におけるテクノロジートレンドなどを調査テーマとしている

IT 業界におけるBtoB マーケティングのバックグラウンドを持ち、ユーザー企業のシステム環境、ニーズ調査、グローバルIT ガバナンス、M2M(machine-to-machine) や HPC (high-performance computing)、ビッグデータアナリティクスなどの新テクノロジー活用実態調査などを実施してきた。また、CIO研究会に向けたユーザー企業実態調査、役員クラス・業務部門長クラスへのヒアリング調査プロジェクトなども経験している。