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ManufacturingTransformation

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コラムトップ > Vol.03 オムニチャネル時代の製造業サプライチェーン

オムニチャネル時代の製造業サプライチェーン

Demanding Consumers – 急速に高まる顧客の期待と要求

「オムニチャネル」とは、消費者が手に入れたい商品の情報入手や注文、受取を、複数のチャネルの中からお好みで選べることを指す。実店舗で商品を確認した後ネットで注文し、近所のコンビニエンスストアで受け取るといった方法が、一例である。流通業界や物流業界ではオムニチャネルを実現するための体制作りが急ピッチで進められている。このオムニチャネル化の動きは、「Demanding Consumers-わがままな消費者」を生み出し、流通/物流業のみならず製造業にとっても、ハードルを押し上げる。「気に入った商品を便利な方法で今すぐ手に入れたい」という要求が一般化するだけでなく、ソーシャルメディアなどでの「口コミ」は企業側がコントロールできない商品情報となり、物流トレーサビリティは当然のサービスとなった。この「買う側」の変化を製造業も無視することはできない。

なぜ、このような変化が急速に起こっているのだろうか。顧客が求める情報や、注文と受取の選択肢の広がりが加速した背景には、第3のプラットフォームの進展がある。ソーシャル技術、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、クラウドの4ピラー上で生み出される「カスタマーエクスペリエンス」は劇的に変化している。また注意すべきは、この変化をもたらすテクノロジーの活用はBtoCだけではなく、当然BtoBの世界でも起こっていることである。自社がBtoBビジネスを展開しているから関係ないと思っていては、取り残されるのは必至だろう。(第3のプラットフォームについては1回目のコラム内で説明をしているため、参照いただきたい)

キーワードはCustomer Centricity

この変化を、製造業の「変革」に発展させる際に浮上するキーワードがある。オムニチャネルの時代、製造業にとって「Customer Centricity – 顧客中心主義」であることが将来のビジネスの方針を決める上で重要な要素となる。Customer Centricityは、IDCが全世界で毎年発表する製造業の動向予測において、ビジネス拡大のためのテクノロジー投資の主要要素と位置付け、ここ数年分析を続けているキーワードでもある。「我が社はこれまでも「顧客中心」でビジネスを進めてきた」という企業も多いだろう。しかし今、顧客は変化を続けている。顧客の求める情報が変化し、商品を入手するスピードやチャネルの選択肢への「期待」や「要求」が高まる中、従来顧客への対応を維持するだけではなく、自社も変化していかねばならない。

また、Customer Centricityは製造業のサプライチェーンにおいて幅広い業務やIT領域に影響を与えるキーワードでもある。以下の図で、顧客の変化が製造業の業務工程のどの部分に影響を与えるかを示した。ポイントは大きく3つある。

  1. 顧客接点の多様化:今、顧客の購買行動の各フェーズにおいて多様なチャネルが存在する。従来のチャネルを超え、ソーシャルやチャットなどを含め拡大している。
  2. 物流の迅速化と可視化:顧客は製品がより速くお好みの方法で手に入ることを期待し、今どこに製品があるかの把握を求めるようになった。物流工程の効率化、倉庫や実店舗、物流業者との密な連携が必要となる。
  3. 顧客発信の情報:企業発信の情報と併せソーシャルなどでの評価が顧客の意思決定を左右する時代となった。顧客発信の情報を捕捉し、製品企画やマーケティング、保守の領域で活用する仕組み作りが求められる。

つまり、オムニチャネル時代の「カスタマーエクスペリエンス」を提供するには、業務プロセス、基幹系システムおよび情報系システム、マーケティング施策や社内外データ連携などの再設計が不可欠となる。

キーワードはCustomer Centricity

Source: IDC Japan, 2015

オムニチャネルの時代に製造業が注目すべきテクノロジー領域

ここまで、オムニチャネル化が製造業にもたらすインパクトを見てきた。顧客の変化に合わせ、製造業はどのように変革を起こしていけるのだろうか。最後に、Customer Centricなビジネスへの変革を後押しするテクノロジー領域/考え方を2つ紹介したい。「Customer Facing Technology」と「Micromanaged Logistics」である。顧客接点と物流工程におけるテクノロジー活用だ。上述のポイントで説明すると、1)顧客接点の多様化と、3)顧客発信の情報が、前者の「Customer Facing Technology」に大きくかかわり、2)物流の迅速化と可視化が、後者の「Micromanaged Logistics」の領域となる。Customer Facing Technologyでは、企業側がSNS上で特定の優良顧客とコミュニケーションを図る「先回り」の仕組みを構築する例や、モバイル端末を活用し、実店舗とWeb店舗の両方で顧客を取り込む例などがある。Micromanaged LogisticsではIoT技術による物流の可視化や、モバイルデバイスでのリアルタイム管理などが挙げられる。

上述の例は製造業サプライチェーンのごく一部での活用例に過ぎず、読者の組織が取り扱う製品や、直販の有無など現在の環境に応じて、取りかかるべき領域は異なる。しかし、製品を手中にする顧客の期待と要求が急激に変化する時代に、いかにスピーディに変革を起こせるかは競合他社に勝つための鍵となる。テクノロジーを味方につけてオムニチャネル時代を邁進する製造業が、勝者となるだろう。

次回のコラムは、「エンタープライズ品質管理」がテーマである。大企業の品質管理の問題が露呈する事件が後を絶たない。製品やバリューチェーンが複雑化する中、品質管理へどのように対峙すべきかを議論していく。

アナリストプロフィール

岩本 直子

IDC Japan株式会社・ITスペンディング・マーケットアナリスト

IT市場調査会社であるIDCにて、産業分野、企業規模、地域ごとのIT市場動向およびIT市場規模の調査・分析をおこなう。産業分野のうち、特に製造業、流通業、サービス業を担当し、グローバルIT ガバナンスや業務部門におけるIT 投資動向、各産業におけるテクノロジートレンドなどを調査テーマとしている

IT 業界におけるBtoB マーケティングのバックグラウンドを持ち、ユーザー企業のシステム環境、ニーズ調査、グローバルIT ガバナンス、M2M(machine-to-machine) や HPC (high-performance computing)、ビッグデータアナリティクスなどの新テクノロジー活用実態調査などを実施してきた。また、CIO研究会に向けたユーザー企業実態調査、役員クラス・業務部門長クラスへのヒアリング調査プロジェクトなども経験している。