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コラムトップ > Vol.02 IoTは製造業成長の起爆剤となるか

IoTは製造業成長の起爆剤となるか

「IoT」はもはや単なるバズワードではない

IoT (Internet of Things)・・・今、各種メディアで目にしない日はないこの用語、製造業にとっていったいどれだけのインパクトがあるのか。

ある海外の製造業CIOへのグループインタビューでは、2014年には「IoTは単なるバズワードだ」という参加者がいたが、2015年の参加者全員の答えは「ノー」、もはやバズワードではないとの回答だった。IDCが国内で2015年4月に実施したユーザー調査では、従業員1,000人以上の製造業の4割以上がIoTを「導入済み」または「導入予定」と答えている。また、ベンダー側は次々とIoTを冠した組織を設立し、ビジネスチャンスを掴もうと血気盛んだ。IoTはもはや一過性のバズワードに終われないステージに来ている。市場規模の拡大もそれを物語る。IDCでは2014年の国内IoT市場売上規模が9兆円を超え、2019年には16兆円に達する見通しを出している。

なお、IoTという用語が浮上しこれほどまでの注目を集める前に、製造業界にはM2M(Machine to Machine)が存在した。IDCでは、M2MはIoTの先駆者であり現在はIoTの一部と捉えている。「マシーン」でとらえた事象をネットワークでアプリケーションに送り意味のある情報に変換する仕組みがM2Mで、「モノ」同士が人を介さずIP接続によりつながるネットワークがIoTである。これまでM2Mでフロントラインを走ってきた製造業が、急速に発展するセンシングやデータ蓄積/分析技術を武器に、今後は他の業種と競争あるいは協業しながらIoT市場を牽引していく。

製造業のIoT導入 3つのシナリオ

さて、製造業がIoTを導入すると一口に言っても、社内利用なのか社外向けなのか、そして業務効率化が目的か付加価値の提供等が狙いかによりシナリオが異なる。図の通り3つのシナリオがあり、「スマート・マニュファクチャリング」、「つながる製品」、「つながるサプライチェーン」である。ちなみに、上記のM2Mは主に「つながる製品」のシナリオに入る。

製造業のIoT導入 3つのシナリオ

Source: IDC Japan, 2015

本コラムの読者が所属する組織は、既にいずれかのシナリオに取り組んでいるかもしれない。自社はどのシナリオで既にIoT導入を進めているか、今後それを拡充するのか、または別シナリオを同時進行させるのか。これらプライオリティ付けは、今後のIoT戦略を考える上で重要な意思決定ポイントとなる。

また、3つのシナリオとも製造業が単独で導入するのは難しく、「誰と組むか」も重要なポイントだ。現在は、センサー、通信、データ蓄積、アナリティクス、セキュリティなど各領域で異なるパートナーと組むのが現状だろう。一方、ベンダー側は「ワンストップ」で製造業を囲い込むべく、大手を中心に買収劇を繰り広げている。協業先探しも熱を帯び、目が離せない。

日々IoTに関する多くの情報が飛び交うが、自社に適したIoT導入シナリオを定め、共に実現させるパートナーを見つけることが成功のカギとなるだろう。

IoTがもたらすManufacturing Transformation

最後に、「つながる製品」のシナリオが発展しIoTが製造業に変革をもたらす例を一つ紹介したい。

今、「つながる製品」を「Product as a Service」として展開する製造業が出てきている。これまでは、「つながる製品」の販売をした後、予防保全などの「付加価値」を提供していた。IoTにより自社製品のステータスの把握がリアルタイムにできるため、使った分を請求する新事業を開始している。「製品販売」から「従量課金」への収益モデルの変革である。また、「つながる製品」が産業機械の場合は製造業自身が顧客となるわけだが、そこではこれまでの「設備投資」が「運用コスト」に切り替わる変革が起きている。

上記はIoTを起爆剤に、企業や事業が「トランスフォーム」し成長するケースと言えるだろう。しかし、そうなるために克服する課題は多い。米国でハッカーが自動車を遠隔で乗っ取る実験が公開され、大量リコールになった事件も記憶に新しく、セキュリティは「起爆剤」ならぬ「爆弾」になりかねない。実際問題「つながる製品」を開発したが、付加価値提供に留まりコストセンターから脱却できないという話も耳にする。また、パートナー間の責任の線引き、収集データのガバナンスなどもIoTにより生まれる課題だ。

これらをどう克服しIoTを起爆剤に成長できるか、製造業の挑戦は始まっている。

次回コラムで取り上げるキーワードは「オムニチャネル」。小売業だけの話ではない、製造業にもインパクトを与えるオムニチャネルの波とその「乗り切り策」などを議論する。

アナリストプロフィール

岩本 直子

IDC Japan株式会社・ITスペンディング・マーケットアナリスト

IT市場調査会社であるIDCにて、産業分野、企業規模、地域ごとのIT市場動向およびIT市場規模の調査・分析をおこなう。産業分野のうち、特に製造業、流通業、サービス業を担当し、グローバルIT ガバナンスや業務部門におけるIT 投資動向、各産業におけるテクノロジートレンドなどを調査テーマとしている

IT 業界におけるBtoB マーケティングのバックグラウンドを持ち、ユーザー企業のシステム環境、ニーズ調査、グローバルIT ガバナンス、M2M(machine-to-machine) や HPC (high-performance computing)、ビッグデータアナリティクスなどの新テクノロジー活用実態調査などを実施してきた。また、CIO研究会に向けたユーザー企業実態調査、役員クラス・業務部門長クラスへのヒアリング調査プロジェクトなども経験している。