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ManufacturingTransformation

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コラムトップ > 「IoTの新地平」~日本が勝ち抜くための新戦略~ IoTの意義と未来

国際社会経済研究所(IISE)シンポジウム
「IoTの新地平」~日本が勝ち抜くための新戦略~

IoTの意義と未来

シェアリングエコノミーを理解しない「中間」企業は消滅する

IoTが社会に浸透すると、様々なモノにセンサやアクチュエータが装備され、ネットワークを通じて社会に神経が通うことになる。そこには、3つの革命的なインパクトがあると考える。

IOTの3つの革命的インパクト

Source: Nishinari Katsuhiro, 2016

まず、①の人同士が直接繋がり中間が一掃されるということは、多くのビジネスに影響を与える。あらゆる人が提供者ないしは使用者になる可能性があり、ニーズとシーズが直結する。たとえば、米国では個人の3割が銀行からFinTech*1へ乗り換えると予想されている。ホテルは、Airbnb*2に取って代られている―。挙げたら切りがないが、そこでの課題は品質と信用だ。品質・信用の付加価値を生むことができる企業は残るが、シェアリングエコノミー(共有型経済)を理解しない企業は生き残れない。ホテルの増築には多大な費用が必要だが、Airbnbでは部屋数を増やしたければ部屋の提供者を募るだけで限界費用はほぼゼロだ。

IoTにより産業のサービス化が進み、イノベーションと効率化を生む。自動車はコネクテッドカ―となり、IoTの部品となる。定量化できなかったものが定量化できるようになり、人同士のコミュニケーション度までが数値化できるだろう。しかし、情報(商流)は円滑にやり取りできるが、物流が最後のボトルネックとして残る。ロジスティクスをいかに効率化できるか、に大きなビジネスチャンスがある。

*1 Financial technologyの略。

*2 Airbnb,Inc.によって運営される「民泊」を提供する人向けのWebサイト。

AIによる判断の信用性とグレーゾーン消滅の危機

次に、②について考えてみたい。AIは、白黒を勝手に線引きして決めてくれる。だが、人には線引きできないグレーゾーンがあり、それを認めて対応する柔軟さがある。白黒判定を厳密化すると、人間社会に合わないという危惧が生じる。

一方、AIのメリットは大きい。たとえば、生活インフラの電気・ガス・水道では、足りない地域へ自動配分する最適化がグローバルレベルでできる。さらに、AIには「先読み」というメリットもある。問題が起きてからの対処には大きなコストがかかるが、事前に対処できれば最少コストで済む。Passive型から、Active型の社会への脱皮だ。病気の予防や機器故障の回避、経済の安定、交通混雑の緩和、災害予知など様々な分野に適用できる。

IoTの“肝”になるAIは、どこで白黒の線引きするかの積み重ねで判断する。いわゆるディープラーニングの世界だが、なぜそう判断したのかを人がたどれないブラックボックスの世界だ。その判断を、人はどこまで信用できるかという課題が残る。

線引きが難しい例には、医療の診断や意思決定(政治・経営・裁判など)、災害予知など多様な分野がある。これらのグレーゾーンにAIを用いた場合、正解があるものにはプラスに働くが、正解がない場合には危険を伴う。たとえば、噴火の予兆をセンサがキャッチした場合、すぐに全住民へ避難しろとは言いにくい。目視確認を行わなければ、人間の納得感は得にくい。その意味で視覚を補うセンサーとしてのドローンの役割は大きい。

IoTによる産業革命と日本の進むべき道について

③の人に対する影響では、死生観が変わる可能性さえある。たとえばAIの先読み判断で、癌になる確率の高い人と低い人では保険価格がどうなるのか。また、死ぬ時期がわかれば、ゴールまでの人生を最適化したスケジュールが組めると言う人もいる。AIの普及は、「人間とは何か」を改めて考えるポイントになる。

また、「人間の存在価値」というテーマも重要だ。クリエイティブな仕事は、機械にはできないとよく言われるが、AIが創造性を定義できたら音楽やデザイン、小説など何でもできるようになる。人間にしかできないものは、様々な矛盾を抱えたグレーゾーンだ。ICTが苦手とするのは矛盾を扱えないこと、つまり矛盾をどうやって解決していくかは、人間の最終判断ではないかと思う。

私は20年来、渋滞(ネック・偏在)をテーマに研究をつづけているが、IoTは世の中の渋滞を解消し効率化する、産業革命に匹敵するシステムだと思う。産業革命を情報やサービス、コミュニケーション、モノ、人、エネルギー、資金などの渋滞をなくす「移動」と定義すれば、IoTは産業革命そのものだ。IoTは高齢化社会の幸福モデルをつくり、多様な課題を解決するツールになり得る。だが、破綻もまた一瞬で起きる。交通で考えると、鉄道の相互乗入れが進み便利になったが、どこかで事故が起きるとすべてが止まってしまう。連鎖を遮断し局地化しないと危機を回避できないが、IoTでは自律的な仕組みづくりで可能だ。

最後に、日本がIoTで取り残されないために、以下4つの方向性をまとめてみた。今後の日本を考える上で、参考にしていただければ幸いだ。

さいごに 日本が取り残されないために

Source: Nishinari Katsuhiro, 2016

講演者プロフィール

西成 活裕氏

東京大学先端科学技術研究センター教授

1967年東京都生まれ。1990年東京大学工学部卒、同修士、博士課程を航空宇宙工学で終える。工学博士。専門は非線形動力学、渋滞学。

ドイツ・ケルン大学理論物理学研究所客員教授などを経て、2009年4月に東京大学大学院工学系研究科教授、同年7月より同大先端科学技術研究センター教授。2007年、著書『渋滞学』で講談社科学出版賞、日経BP・BizTech図書賞をダブル受賞。