ページの先頭です。
サイト内の現在位置を表示しています。
  1. ホーム
  2. O-N通信
  3. コラム
  4. 第21回
ここから本文です。

林エバンジェリストが語る 最新技術動向

林エバンジェリストの顔写真

エバンジェリストの林です。

今回は、無線給電技術を取り上げてみます。

従来のオフィスで、パソコンなどの端末を利用する場合、ネットワークケーブルや、ビデオケーブル、USBケーブル、電源ケーブルといった様々なケーブルが必要であり、このケーブルがオフィスの外観を損ねる、移動時に邪魔といった問題がありました。

近年では、データ伝送用のケーブル(ネットワークケーブル、ビデオケーブル、USBケーブルなど)は、無線化が進んでおり、ケーブルレスシステムが出現しています。しかし、電源ケーブルに関しては、無線化が難しく、実現していませんでした。

この電力を無線で送るという技術が無線給電技術になります。この技術を利用することにより、電源ケーブルのない、本当のケーブルレスシステムが実現できるようになります。

今回は、この無線給電技術の最新動向をご紹介します。

第21回 無線給電

従来のパソコンでは、ネットワークケーブル、ビデオケーブルUSBケーブルといった様々な種類のケーブルが利用されていました。近年、無線の技術が進化したことにより、データ伝送系のケーブル(ネットワーク、ビデオ、USBなど)は、無線化が進んでいます。しかし、電源ケーブルに関しては、昔から研究されていたものの無線化の実現が難しく、完全なケーブルレスシステムを作り出すことは困難でした。

この、「電力を無線で送る」という技術の第一歩として世の中に出てきた技術が、電磁誘導方式と呼ばれる無線給電技術です。

風呂場や洗面所、キッチンといった水を利用する場所で電力を利用する場合、漏電の危険が常に存在します。そこで、端子のない充電器が開発され、現在では、電動シェーバーや電動歯ブラシといった水回りで利用される製品に向けた、充電しても漏電の心配のない仕組みができました。これが電磁誘導方式と呼ばれる無線給電技術になります。ただし、無線化されたと言っても、高々数ミリの距離であり、ほとんど接触させる必要があることから、サーフェス給電技術などの名称でも呼ばれています。また、この技術では、装置と充電器それぞれにコイルが埋め込まれており、このコイルの位置をぴったり合わせないと、最大の伝送効率が出せないといった問題もあります。

この技術は、後に携帯電話やスマートフォンにも搭載されるようになり、Qi(チー)規格ということで標準化が進んでいます。この技術を利用すれば、充電パッドの上に、携帯電話やスマートフォンを置くだけで充電できる仕組みになっています。ただし、この方式ではあまり大電力を送ることができず、充電に長い時間を要するといった問題もあります。

その後、マサチューセッツ工科大学が磁界共鳴方式という方式を開発しました。60Wの電力を2mの距離まで送信できるという優れた技術で、現在も研究が進んでいます。この方式は、電気自動車(EV)の充電に利用できるのではないかと言われており、駐車場の床下と自動車の車体間で充電ができる様になれば、充電の際にいちいち充電プラグを接続するといった手間から解放されるようになります。

これ以外の方式でも、地球の大気圏外の軌道上に太陽光パネルを設置し、そこで発生した電力を、マイクロ波を利用して地上の設備へ送るといった技術も研究されています。また情報通信研究機構(NICT)などでも、マイクロ波をシートに流すことにより、そのシート上に置かれた装置へ給電するシステムの研究を進めています。

これらの無線給電技術は標準化を行う必要があります。なぜなら、各社が独自方式を採用すれば、共通の充電器にならず、結果として普及が進まないからです。そのために、各団体や学会が中心となり、技術の開発や標準化が行われています。ちなみに上述したQi規格もワイヤレスパワーコンソーシアム(WPC)が標準化を行っています。

また、無線給電システムを構築する際に必要となる電子部品の供給も始まっています。

この技術が標準化され、世の中に普及すれば、例えば、将来、コンセントのない建物が実現できるようになります。部屋に持ち込まれた冷蔵庫やテレビといった各種家電製品は、床のどこに設置しても給電されるようになり、電源ケーブルやコンセントの位置といった問題を気にする必要がなくなります。さらに、自動販売機にこの充電装置が設置されれば、自動販売機そのものが充電スポットとなり、カバンやポケットに入れたモバイル機器を、缶ジュースを飲んでいる間に充電するといったことが実現できるようになるかもしれません。

さらに、モバイル端末の代名詞である携帯電話やスマートフォン、ノートパソコンといったモバイル機器も、ポケットやカバンに入れたままで、特定の部屋に入るだけで充電できるといったことが実現できるようになるでしょう。もうカフェでコンセントが使えるかどうかを気にする必要もなくなりますし、充電を忘れるといった心配もなくなります。バッテリーで動いているという概念さえなくなるかもしれません。さらに、建物を作る際の電力設備の設置が簡単になるかもしれません。

現在の無線給電技術の課題は、大電力を送信できるようにする、伝送距離を伸ばす、伝送効率を上げる(伝送途中のロスを少なくする)といった問題に加え、安全面での対策を含めた法的な問題(電波法や安全規格の策定など)のクリアも重要なポイントとなっています。今後の進化が期待できます。


Top of this page