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林エバンジェリストが語る 最新技術動向

林エバンジェリストの顔写真

エバンジェリストの林です。

今回は、「においセンサ」を取り上げてみます。

人間の五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)をデジタル化(電子化)する試みは、IoTInternet of Things)の時代を迎え、ますます重要になってきています。例えば、現場と事務所をネットワークで結び、Web会議を行うのは当たり前になってきていますが、残念ながら、現状では、視覚と聴覚の情報を送受信することが限界でした。これに加え、触覚や味覚、嗅覚情報といった情報が伝達できるようになれば、さらに便利になるでしょう。

五感のデジタル化への試みは、徐々に発展してきていますが、このうち「におい(嗅覚)」に関する部分は、一番取り組みが遅れていました。それは、デジタル化が難しいためです。光の三原色(RedGreenBlue)に相当する源臭要素はいまだ発見されておらず、また、いったん発生させたにおいを制御する(発生させたにおいを瞬時に消し、新たなにおいを発生させるといった動作)のも、現在の技術では難しいのです。

近年、「におい」をセンシングする技術が確立され始めており、ようやく実用期に入ってきました。

今回は、この「においセンサ」に焦点を当て、どのような原理で動作しており、どのような用途に利用できるのか等のポイントを、ご紹介します。

第40回 においセンサ

人間の五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)をデジタル化(電子化)する試みは、IoTInternet of Things)の時代を迎え、ますます重要になってきています。

例えば、現場と事務所をネットワークで結び、Web会議を行うのは当たり前になってきていますが、残念ながら、現状では、視覚と聴覚の情報を送受信することが限界でした。これに加え、触覚や味覚、嗅覚情報といった情報が伝達できるようになれば、現場の状況を共有するといった観点で、さらに便利になるでしょう。工事現場での悪臭や有毒ガス成分の検出をはじめ、爆発物の検知や、食料品の劣化診断、医療・健康管理など様々な領域で「におい」を活用する可能性も出てきています。

五感をデジタル化する試みは、聴覚(電話)、視覚(テレビ)を中心として徐々に発展してきていますが、「におい(嗅覚)」に関する部分は、一番取り組みが遅れていました。それは、デジタル化が難しいためです。光の三原色(RedGreenBlue)に相当する源臭要素はいまだ発見されておらず、いったん発生させたにおいを制御する(発生させたにおいを瞬時に消し、新たなにおいを発生させるといった動作)のも、現在の技術では難しいのです。

今まで、「におい」に関しては、特定の「におい」成分のみを検出するセンサ(たとえば、自動車のドライバーが乗務前に呼気を利用してアルコールチェックを行うセンサや、ガス漏れを検知するセンサなど)は、実用化されていましたが、汎用的な「においセンサ」の研究開発は進んでいませんでした。

近年、「におい」をセンシングする技術が確立され始めており、ようやく実用期に入ってきました。

NECでは、嗅覚分析の実用化に向けた基礎要素技術の確立と業界標準を目指す「MSSアライアンス」を2015925日に発足しました。参加メンバは、物質・材料研究機構(NIMSNEC、住友精化、京セラ、大阪大学、Nanoworld(ベンチャー)の6社です。

では、汎用的な「においセンサ」は、どのような構造になっているのでしょうか?

動作原理を模式図的に説明すると、以下のようになります。

①センサの先端には、単一のガス成分のみを吸着させることができるセンサが搭載されている。

②このセンサに特定のガス成分が吸着すると、歪みが発生する。

③このセンサに電流を流しておくことにより、歪みを抵抗値の変化として捉える。

④様々なガス成分を検出するセンサを数多く並べることにより、センサ周辺の「におい」をデジタル化する。

⑤ただし、この数値を見ただけでは、何のにおいか判断がつかないため、データベースに問い合わせを行う。

⑥特定のガス成分の構成比から、何のにおいであるかをデータベースから検索し、初めてセンサの周りの「におい」を人間に理解できる形で検知することができる。

このデータベースを検索する部分に、NECの人工知能エンジンの一つである異種混合学習エンジンを利用しています。

センサからの計測データから、判別に有効な特徴量の候補を抽出し、「異種混合判別モデル」で、「におい」の判別を行います。

現在のところ、この「においセンシングシステム」は、開発段階であり、ようやくサンプルのセンサをいくつか完成したところです。これから具体的な利用シーンを検討し、実証実験を行って、来年度頃からの実用化となりそうです。

今後、この「においサンサ」が実用化されれば、食品工場での完成品の品質検査や、病院での診断(虫歯、糖尿病、癌といった特定の病気は、特定のにおいを出すということが分かっている)などでの利活用もできるようになるでしょう。また、工事現場での環境計測や、有害ガスの検知といったことも可能でしょうし、コンシューマ用途に広がれば、高齢者が冷蔵庫に保管している食材の劣化を調理前に確認し、腐っている食材を誤って調理することを避けるといった目的にも利用できるようになるでしょう。

今後の「においセンサ」の進歩に期待しましょう。


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