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林エバンジェリストが語る 最新技術動向

林エバンジェリストの顔写真

エバンジェリストの林です。

今回は、有線通信でも無線通信でもない新しい通信方式である「人体通信」を取り上げてみます。

「人体通信」は、人の体をケーブルの代わりに使ってデータ通信を実現する技術です。例えば、人と人が初めて会って握手したときに、通信路が確立し、名刺データの送受信が行えれば、非常に便利です。また、現在交通系の電子チケットとして利用されているSuicaやPASMOといったICカードを利用する場合も、従来は改札機にICカードでタッチする必要がありました。しかし、人体通信が普及すれば、ICカードでタッチする必要がなくなり、鞄やポケットに入っているだけで改札機を通り抜けることが可能となります。

今回は、この「人体通信」に焦点を当て、どのような仕組みで通信し、どのような利用が考えられるのか等の最新動向をご紹介します。

第31回 人体通信

「人体通信」は、人の体をケーブルの代わりに使ってデータ通信を実現する技術です。導体である人体を通信媒体として利用する通信であり、定義上、有線通信や無線通信には該当しない新しい通信方式とされています。

この通信は、人間の体に微弱な電流を流すことで行われます。もちろん人が感電したり、ビリビリ感じたりすることはありません。流された電流は変調され、データ通信を行うことができます。専用の装置を装着した人が、他の同様の装置を装着した人、あるいは他の装置に触れる時に通信が可能になる、「触ったこと」を一種のきっかけとして扱う通信の様式です。

「さわる」や「ふれる」といった、人間が行っている動作をコンピュータネットワークに応用しようという考えから研究が進んだ方式で、より直感的に装置を操作したり、情報交換を行ったりということが可能となります。

例えば、人と人が初めて会って握手したときに、その二人の間で通信路が確立し、名刺データの送受信が行えれば、非常に便利です。さらに、現在交通系の電子マネーとして利用されているSuicaやPASMOといったICカードを利用する場合も、従来は改札機にICカードでタッチする必要がありました。しかし、人体通信が普及すれば、その必要がなくなり、鞄やポケットに入っているだけで改札機を通り抜けることが可能となります。

便利さの反面、不用意に何かに触ってしまったために、個人情報の流出につながるなどの情報漏えいも懸念されており、対策が必須になります。

人体通信の方式は大きく電解方式と電流方式と呼ばれる2つの方式に分類されます。

電解方式は、送信機側の発振によって人体に電界を生じさせるもので、この電界の変化を受信機で検知する仕組みです。この方式の場合、送受信機の電極と人体が直接触れていなくても通信が成立するという特徴があります。

一方、電流方式は、電線の代わりに人体に電流を流して通信する方式であり、電界方式よりは電磁雑音に強いといった特徴があります。しかし、その反面、電極と人体が直接触れている必要があるため、適用範囲が限られるなどの問題点もあります。

人体通信とその他の通信を比較してみると、通信距離が0~数センチと短く、他の無線LANやBluetooth、RFID(電子タグ)といった通信方式と大きく異なります。また、消費電力は非常に小さく、数mW程度であり、伝送装置に搭載するバッテリーの小型化が見込めます。

新しい通信方式は、標準化がなされて初めて普及するという原則があるため、標準化の進捗状況も見ておく必要があります。人体通信の場合、IEEE802.15(近距離無線の標準化)

「BAN(body area network)」という名称で活動していたIG(Interest Group)を、2006年末からSG(Study Group)に昇格させ、2007年1月から,SGとして標準化の議論が開始されました。

BANは人体周辺の機器(身につける時計やセンサ,携帯電話機など),および人体内部(いわゆるインプラント機器)などを対象にした無線通信に向けた規格になります。近距離無線通信ではPAN(personal area network)という概念がありますが,その伝送距離をさらに短くして人体周辺に限定したようなコンセプトとなっています。

人体通信を利用したシステムは、NTTやKDDI、アルプス電気、パナソニック、アドソル日進などから販売されています。今のところ、電解方式を採用するメーカの方が多いようです。

このような新しい人体通信をどのような用途で利用することができるでしょうか?交通系のICカードでの利用は、既に記述した通りですが、それ以外でも、ドアノブを手で触れただけで入退室を管理したり、鍵の開閉を行ったりといったシステムにも応用できるでしょう。特別な鍵代わりの装置を身につけている人だけがドアの開閉を行うことができるといったセキュリティ用途でも利用できます。

また、近年普及が始まっている腕時計型デバイスと連携させれば、握手したときに自動的に名刺情報の交換を行うといったことが実現できます。さらに、店舗で商品にさわれば、その製品情報を入手できたり、将来は、商品に触るだけで支払処理が終了するといった新しい決済手段としても利用することが可能となるでしょう。

「さわる」「ふれる」といった、普段我々が当たり前に行っている動作を起点としてデータ通信が行える未来のデータ通信に期待です。


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