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ものづくり未来戦略

-IoT活用の「タテとヨコの拡大」で次世代型ものづくりを実現する(前編)-

NEC プロセス業ソリューション事業部 バリューインテグレーション部 関 行秀

関 行秀
NEC プロセス業ソリューション事業部 バリューインテグレーション部

世界の「製造業IoT元年」は、ドイツが「インダストリー4.0」を提唱し、次世代型のものづくりへの舵を切った2011年であるといわれています。日本の製造業はその動きに何年も遅れていると指摘されてきました。では、日本がIoTをフルに活用して、新しいものづくりを目指すにはどうすればいいのでしょうか。そのカギを握るのが、IoT活用の「タテの拡大」と「ヨコの拡大」という考え方です。「日本版インダストリー4.0」を実現するための方法論と最新事例を2回にわたってご紹介していきます。

製造業IoTは「実装」から「実践」のフェーズへ

次世代型の製造業のあり方を示す「インダストリー4.0」という考え方がドイツで提唱されたのは、2011年のことでした。その後、米国でも14年にIIC(インダストリアル・インターネット・コンソーシアム)が設立され、新たな製造業の模索が始まりました。

これらの動きに呼応する日本側の動きがスタートしたのは15年からです。RRI(ロボット革命イニシアティブ協議会)やIVI(インダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブ)といった団体が組織され、NECにも製造業IoTに関するさまざまな相談が寄せられるようになりました。

この時点でのIoTは、可能性を探る「実証」の段階にありました。それが昨年からは、製造現場にデバイスやインフラを導入し、IoTの基盤を整備する「実装」の段階に入っています。さらに今年になって、そのIoT基盤を活用して新しい価値を生み出す「実践」の段階が始まっていると私たちは考えています。

年々進んでいく製造業におけるIoTの導入段階

その根拠は2つあります。一つは、日本の製造業の動向です。NECが主催する「ものづくり共創プログラム」には現在、1,099社、3,854名(2017年6月末)に参加していただいています。その分科会の1つであり、昨年度活動した「IoT研究会」の会員企業48社を対象とした最新のアンケートによれば、91.7%の企業がIoTの実装を加速させ、次のフェーズを目指す段階に入っています。

もう一つは、海外の動きです。世界最大の産業フェアであるハノーバーメッセのキャッチコピーは、15年の「Join the Network (ネットワークの構築を目指そう)」から、16年「Discovery Solutions(ソリューションを見つけよう)」を経て、今年は「Creating Value(価値を創造しよう)」になっています。製造業が次の段階に入っていることを示すコピーと言っていいでしょう。

また、日本がパートナー国を務めた、これも世界最大のIT見本市である「CeBIT2017」において、日本は人と機械、人と技術、企業と企業、生産者と消費者をつなげ、付加価値を生み社会課題の解決をはかる「Connected Industries」という考え方を発表しました。これはまさしく、製造業IoTの「実践宣言」と見ることができます。国内外の製造業は、明らかに新しい時代に入ろうとしているのです。

世の中では、IoTを活用したビジネスが加速

プロセスのイノベーションの2つの方向

IoTの実践が実現するのは、いわば「つながる工場」です。工場内、工場間、さらに製造業を営む企業間がつながることによって、そこに新しい価値が生まれる。それが製造業IoTの「実践」です。

「つながる工場」では「プロセスのイノベーション」が実現することになります。イノベーションには、タテとヨコの2つの方向があります。この2方向にIoTの実践を拡大していくことによって、製造プロセスが刷新されるのです。

プロセスのイノベーションは、何よりも製造現場におけるさまざまな「無駄」を省くことによって実現します。一製造現場における無駄には、「動作の無駄」「手待ちの無駄」「不良品をつくる無駄」などがあります。これらはいわば「タテ方向の無駄」です。一方、製造現場間のバリューチェーンに発生している「ヨコ方向の無駄」もあります。例えば「作りすぎの無駄」「在庫の無駄」「運搬の無駄」などです。

IoTの実践を、一製造現場における「タテ方向」(Manufacturing Process innovation:
製造工程の高度化)と、製造業のバリューチェーンにおける「ヨコ方向」(Value Chain Innovation:バリューチェーン全体の最適化)に拡大していくことによって、製造プロセス全体の無駄を解消し、効率化、高速化、バリューチェーンの最適化、品質向上などを実現していくこと。それが、次世代型ものづくりが目指す一つの方向であると私たちは考えています。

「タテの拡大」と「ヨコの拡大」

IoTを活用した個体管理と動線分析

では、「タテの拡大」「ヨコの拡大」とは具体的にどのようなものなのか。まずは、タテの拡大から説明していきます。

そもそも、工場の役割とは何でしょうか。答えはシンプルです。「よりよいプロダクトを適正なコストで生産すること」。この本質はIoT時代になっても変わることはないでしょう。一方、最近では、市場のニーズの多様化を受けて、仕様などを細かく変えるマスカスタマイゼーションが増え、生産工程が複雑しているという実情もあります。

複雑化するプロセスの中で、よりよいプロダクトを適正なコストでつくるにはどうすればいいか──。IoTによってデータを収集し、AIなどを使ってそのデータを分析・活用していくことがその一つの解です。

これまで、IoTによるデータの収集・活用には、2つの壁がありました。コストとテクノロジーです。しかし、その壁はほぼ崩れつつあります。センサーやデバイス、ネットワークのコストが下がり続けていますし、高速かつタイムリーに工場内のデータを収集できる技術も確立しています。結果、かつてのようなサンプル調査や人力による計測ではない、「完全なデータ活用」が可能になっているのです。

NECの工場においても、そのようなデータ活用が進んでいます。例えば福島工場※1では、製造工程のトレーサビリティを実現するための「物体指紋」を導入しています。これは、QRコードやIDタグをつけられないプロダクトや部品をIoTの仕組みを使って個体管理するものです。また、現場従業員が「声」で必要な情報を記録し、音声データによってプロセスを管理する仕組みも導入しています。これは、これまで目に見えなかった情報をデータ化し、可視化する仕組みでもあります。

同じく、NEC甲府工場※2では、ビーコン(位置情報検出システム)を使い、現場作業員の動線を見える化しています。個々の作業員の動きを示すデータと製造工程の情報を管理するMES(製造実行システム)のデータを組み合わせることで、現場作業員の習熟度に左右されない安定した部品供給の仕組みをつくったり、部品の配置を最適化したりすることで、スループット(時間当たりの生産力)を大幅に向上させています。

  • ※1:正式名称 NECプラットフォームズ 福島事業所
  • ※2:正式名称 NECプラットフォームズ 甲府事業所

施設内リソース(人・設備)の可視化

異常検知や最終検査の自動化も

NECの工場の取り組みは、組み立て系の製造現場の例ですが、IoTの実践は大規模な設備を持つ工場でも着々と進んでいます。例えば、巨大な部材をベルトコンベアで流したり、パイプを使って液体を流すといった工程で、振動、音、映像などのデータを統合管理し、AIを使って異常検知をしたり、異常があった場合の要因分析を行っているケースがあります。

従来、そのような異常検知は、熟練の保全要員の点検によって発見され、故障が起きた場合はラインを止めて問題個所を修理するといった作業が行われていました。IoTを活用すれば、そのような問題を事前に予防することができ、故障が発生した場合もダウンタイムを最小限にとどめることが可能になります。もちろん、それらの作業に人手を使わなくなるようになれば、リソースの最適配置も実現します。

施設全体にまたがる巨大設備の異常検知・要因分析

さらに、これまでは自動化が困難とされてきた最終検査工程でも、IoTやAIの活用が進んでいます。最終検査はこれまで、主に熟練の現場要員による目視、触診によって行われてきました。しかし、AIに不良品の画像を機械学習させることによって、自動検査が可能になります。それによって検査業務を効率化させる取り組みを海外拠点まで広げ、年間の人件費の数億円規模の削減を視野に入れた活動をしているケースもあります。

グローバルにおける検査業務の効率化

「タテの拡大」と「ヨコの拡大」の同時並行的実践を

以上、IoT活用を製造現場内で拡大していくタテの拡大の最新事例をいくつか紹介してきました。人や設備の稼働データをリアルタイムに可視化し、故障や異常の兆候をとらえて未然に防止し、業務自動化によって生産工程を効率化し、人や物を最適に配置する──。それが、タテの拡大の具体的な内容です。タテの拡大が実現するのは、「製造工程の効率化・高速化」「プロダクトの品質向上とスループット改善」「設備の故障やライン停止の未然防止」などです。

「タテの拡大」が実現する価値

しかし、一製造現場内における取り組みのみでは、IoTのポテンシャルを十全に活用したことにはなりません。製造現場の間、さらにはさまざまな製造業の間をつなぐ「ヨコの拡大」が同時並行的に実現しなければ、IoTによる真のプロセスイノベーションは達成されないのです。
では、そのヨコの拡大とは具体的にどのようなものなのでしょうか。

(後編に続く)

NEC プロセス業ソリューション事業部 バリューインテグレーション部 関 行秀

略歴
入社後、およそ20年にわたって大手製造業への統合基幹業務システム(ERP)やサプライチェーンマネジメント(SCM)導入プロジェクトに従事する。2012年からスタートした「NEC ものづくり共創プログラム」「NEC Industrial IoT」の立ち上げメンバーの一人。

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