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こんなに怖い未払い残業代のリスク(前編)
これだけは知っておきたい経営者のための法律知識 第1回

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何となくリスクは承知しているがどのように対策したらよいかわからない・・・等の経営者の方々が日頃直面するお悩み事について、わかりやすく、解説致します。

石田氏

レイズ・コンサルティング法律事務所
弁護士(東京弁護士会) 石田 達郎氏


慶應義塾大学経済学部、中央大学法科大学院卒業。
日本労働法学会所属弁護士。
経営者の側から労務問題を取り扱うことを専門分野としており、一般の労使紛争のみならず、労働災害、外国人労務問題についても造詣が深い。

1.年々増える労使トラブル

近年の労働者の権利意識の向上に呼応するように、労使間のトラブル件数は年々増加傾向にあります。

厚生労働省発表によれば、総合労働相談コーナーに寄せられた相談件数は106万7210件にも上り、助言・指導申出件数も10,363件と1万件の大台を突破し、過去最多を記録しました(平成25年5月31日付「平成24年度個別労働紛争解決制度施行状況」)。

このような状況の中、漠然とした不安感はあるものの、具体的に自社がどのようなリスクを抱えているのか、それに対してどう対処したらよいのかわからずにいる経営者の方は少なくないのではないでしょうか。

本稿では、労働者とのトラブルのうち、最も多いトラブルの類型の一つである未払い残業代をめぐるトラブルについてスポットをあててお話を進めていきたいと思います。

2.こんなに怖い未払い残業代

まず、始めに頭に入れておかねばならないことは、従業員から残業代を請求された段階で初めて対策をとった経営者には極めて厳しい現実が突きつけられるという事です。
戦後間もない頃に制定された労基法が、就労形態の多様化した現代社会にもはや適合していないという批判をよく耳にしますが、残念ながら現時点で適用されるのは現在の労基法です。

もともと、労基法は労働者保護を目的として制定された法律ですので、トラブル発生後に労基法に従って判断がなされると、多くのケースで経営者にとって厳しい判断がなされます。頭から会社が悪であると決めつけているかのような対応を関係諸機関から受けることも少なくありません。

そこで、経営者としては、自社のかかえるリスクを認識し、紛争をできる限り回避するような方途を探ることが必要となります。

以下、未払いの残業代に関するトラブルが発生した場合に、会社が抱えるリスクとして主なものを幾つか挙げてみます。

(1)労基署に駆け込まれるリスク

まず、一番最初に経営者の方が心配されるのが労働者に労基署へ駆け込まれてしまうことです。 その結果、是正勧告書、指導票等の書類が交付されることがありますが、これらの書類には強制力はありません。
だからといって無視をしてよいかというと、そうではありません。
件数は多くはありませんが、残業代の不払いが悪質と判断された場合には、労働基準監督官による逮捕・送検がなされるケースがあります。
あまり知られておりませんが、労働基準法違反には懲役刑や罰金刑などの刑事罰が規定されています。
例えば、残業代の不払いの場合ですと、法定刑として6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金が定められています(労基法119条)。
そして、労働基準監督官は労基法101条、102条により、警察官と似たような権限を認められておりますので、捜査・送検も行えますし、場合によっては自分で逮捕することもできます。
必要以上に恐れることは不要ですが、あまり軽視することもできないリスクといえるでしょう。

(2)遅延損害金

多くの未払い残業代に関するトラブルは、従業員が会社を退職した後に発生しますが、退職後の未払い残業代の請求権については、法律上、年14.6%の割合による遅延利息がつくことになっています(賃金の支払いの確保等に関する法律第6条参照)。
裁判となると結論が出るまでに1年程度かかることは珍しくありませんから、請求金額が大きければ大きいほど、このリスクを軽視することはできません。

(3)付加金

裁判になった場合に、従業員に対する未払い賃金と同額の金銭の支払いを、裁判所の裁量により命じられる制度です(労基法114条)。この金銭は国に対して払うのではなく、なんと労働者個人に対して支払います。
例えば、従業員から300万円の残業代請求を受けた場合、これが裁判所に認められ、かつ、裁判所から付加金の支払いを命じられると、併せて600万円を当該従業員に支払う必要があります。 これは非常に大きなリスクです。
裁判になった場合にのみ適用される制度ではあるものの、近年の傾向として付加金の支払いが広く命じられる傾向にあるように感じますので、経営者の皆様としては注意が必要です。

(4)同種訴訟の頻発

これが経営者の方々にとって最大の脅威といえるでしょう。
会社の規模や状況にもよりますが、会社全体としての潜在的な残業代債務は数千万円、数億円というケースも少なくありません。
複数人が同時退職し、同時に未払い残業代の請求をしてきた場合、請求金額は簡単に1000万円を超えます。
会社からすれば、何らの売り上げを生むこともない過去の残業代の支払いにこのような多額の経費をつぎ込むことを強いられるとなると、会社経営に甚大な影響を与え、ひいては経営が立ち行かなくなるということも多いのではないでしょうか。
付言するなら、会社経営に甚大な影響を与えるような未払い残業代の請求を受けた経営者の方々の精神的なプレッシャーは計り知れません。
いつ自分の会社が倒産するやもしれず、問題解決まで不安で眠れぬ日々を過ごすことを強いられることになるのです。

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