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日本のものづくりに合った“日本版インダストリー4.0”は実現可能なのか

2015年12月28日

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ドイツ連邦政府が主導するものづくり革新プロジェクト「インダストリー4.0」、米国主要企業が取り組むIICなど、IoTを活用した製造業革新の動きが加速してきた。海外での取り組みが活発化する中、日本企業がこれらに対抗することは可能なのだろうか。


ドイツ連政府が主導するものづくり革新プロジェクト「インダストリー4.0」や米国の主要企業が取り組むインダストリアル・インターネット・コンソーシアム(IIC)など、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)を活用した製造業革新の動きが加速している。これらの流れは「まだ先の話だ」と思いがちだが、実はそうではない。既に差し迫った危機として日本の製造業のもとに押し寄せてきている。

ドイツ企業と取引のある、ある日系部品メーカーの話だ。その企業は取引先のドイツ企業の視察で「IoTへの対応が遅い。品質が人手に依存している」という評価を受け、それにより「対応する姿勢を示さなければ今後発注を打ち切る」と言われたという。既にIoTをベースとした新たな競争ルールが生まれていることを象徴している。

これらの製造業革新の流れはもはや止められない動きになりつつある。しかし、日本のものづくりは独自の強みを持っており、世界と戦うためには、この強みを残しつつ対応を進めていく必要性がある。“日本版インダストリー4.0”を実現することは可能なのだろうか。

IoTを活用した2種類の製造業革新

現在、欧米で取り組みが進んでいる製造革新の動きは大きく分けると2つの側面がある。1つは工場においてIoTによるバリューチェーンイノベーションを実現する「つながる工場」の動きだ。これを象徴するのが、自律的な生産ライン実現を目指す、ドイツの「インダストリー4.0」である。もう1つが、製品においてIoTによるバリューチェーンイノベーションを実現する「つながる製品」である。これだけを指すわけではないが、象徴的なのがGEを中心としたIICの取り組みだといえる。

図版IoTを活用した2つのイノベーション

「次世代ものづくり基盤としての理想の姿は、これらの両面を組み合わせ、『徹底したローコストオペレーション』(つながる工場=Process Innovation)と、『ライフサイクル全体で新たな価値を強化し続ける製品とサービスの創造』(つながる製品=Product Innovation)を実現することだ。」(NEC)という。

ただし、これらの価値はまずは「つながる」ことから始まる。

日本のものづくりの強みは、“現場力”や“すり合わせ技術”などとして説明されることが多いが、それがいかに卓越した高品質の製品を生み出しているとしても、属人化された状況から抜け出し切れていない点が課題だといえる。人が中心となることで“人の力”を最大化するという強みは発揮できるが、一方で問題点の情報が現場以外で把握できずシステムとして問題解決ができないという弱みを持つ。

先述したドイツ企業の例を見ても、IoT化を進めトレーサビリティをしっかりと確保し、“システム”として品質や生産能力を提供できることが既に「IoT時代の製造業としての取引条件」になりつつある。「見える化」と「つながり」を実現していることが、グローバル競争を戦う上での前提条件となりつつあるのだ。

「ビジネス」を考える必要性

では、日本の製造業がIoTを駆使して、この「見える化」と「つながり」を実現し、次世代ものづくり基盤を構築するにはどうしたらよいのだろうか。

IoTを活用した「つながる工場」「つながる製品」に取り組む中で、実は重要なのは技術的な側面だけではなく「ビジネスモデルをどう描くか」という視点だ。例えば、インダストリー4.0が目指すような「つながる工場」により目指す「マスカスタマイゼーション(大量生産と同等の効率でカスタム品を生産すること)」の世界では、「顧客が製品の発注をする」という点を起点とし、それに必要な部材の在庫確認や発注などが自動で行われ、さらに生産システムがこの情報を基にリアルタイムに生産順序や工程を自律的に変更して、最適に生産するというようなことが行われるようになる。

これらの自動化を実現するためには、製造装置や製造装置の制御システムおよびMES(製造実行システム)、さらにその上位となるSCM(サプライチェーン管理)やSMS(販売管理システム)、CRM(顧客管理システム)などとの連携が実現できていなければならない。これほどの大掛かりな投資を行うためには、マスカスタマイゼーションで顧客にメリットを生み出し、それにより新しいビジネスチャンスを作り出す必要がある。「ビジネスモデルをどう描くか」ということが「つながる工場」の実現に必要だということだ。

「つながる製品」でも同様だ。IoTによる「つながる製品」における製造業の変化として最も顕著な例が、「製造業のサービス化(サービタイゼーション)」である。サービス化とは、「製品をモノとして提供するのでなく、サービスとして提供する」ということだ。顧客が求めているものを「製品がもたらす機能や価値、体験である」と定義し、製造業として「製品を提供すること」をビジネスの根幹に置くのではなく、「どれだけ価値を提供したか」で課金を行う考え方だ。

つまり「次世代ものづくり」を実現するためには、「つながる」「見える化」などを実現するIoT、ビッグデータ関連の技術に加え「ビジネス面で何をするか」という経営的な判断が最も重要になる。

製造業のビジネスからIoTまでを支援する「NEC Industrial IoT」

ただ、経営判断といっても多くの製造業にとって、何をどこから始めたらよいのかつかみどころがないだろう。「欧米の動きは脅威だが、実際に対抗していくために何をしていいのか分からない」というのが正直なところではないだろうか。そこでこの理想像をより現実的なIoTソリューションとして体現すべく、NECがこのほど発表したのが「NEC Industrial IoT」である。

NEC Industrial IoTは、NECが持つ製造業としてのノウハウを基に、自社の持つIoT関連技術を最適化した「次世代ものづくりIoTソリューション」だ。NECは数多くのIoT関連の独自技術を保有しているが、NEC Industrial IoTにおいてポイントとなるのは、先述した「ビジネス」を支える存在として2012年10月に開始した「NEC ものづくり共創プログラム」だといえる。

写真:NEC 第一製造業ソリューション事業部 販売促進部長 関 行秀 NEC
第一製造業ソリューション事業部
販売促進部長
関 行秀

NEC ものづくり共創プログラムは、NEC自身が取り組んできた生産革新やサプライチェーン改革のノウハウを、「ものづくり・業務プロセス」とそれを支える「ITシステムおよびアセット」という2つの視点から提供するもの。顧客となる製造業同士のコミュニティー活動もポイントとなっており、2015年5月末時点で562社、1471人が参加しているという。これまで積み重ねた製造業独自のノウハウを土台とし、IoTをこれらに組み込んで提供するのがNEC Industrial IoTというわけだ。

NEC ものづくり共創プログラムの立ち上げから運営に携わり、NEC Industrial IoTにも関わるNEC 第一製造業ソリューション事業部 販売促進部長の関 行秀は「ものづくり共創プログラムでは参加企業とともに、製造業の抱える問題点をさまざまな切り口から解決する、まさに“共に創る”活動を進めてきました。これを土台に、会員企業などと積み重ねた生きた情報やノウハウを基に、『現場力を取り込みつつIoTを最適に活用する仕組み』と、『ビジネスとして何をするべきかと言うビジネスモデル構想企画』を考えられるのがNECの強みです」と述べる。

同プログラムでは「2015年度中に会員数を1000社、3000人に拡大する」という方針を示しているが「9月からは『Industrial IoT研究会』をスタートし、効果的なIoT活用のアイデアや課題の研究、会員間での実証実験、関係省庁および団体との情報交換・連携なども推進していきます」(関)としている。

パートナー連携と複数企業の共創

NEC ものづくり共創プログラムが価値を持つのは、日本企業同士が「日本のものづくり」に対する、共通のコンセンサスを醸成の場にもなり得るということだ。

多様化するニーズに対して、いつまでも自前主義に固執していたのでは、開発や製造に関するリソースが分散するばかりで真の強さは発揮できない。その意味でもNECの取り組みの中で、「パートナー連携による提供価値拡大」や「顧客との共創」を柱に据えていることは価値がある。

写真 ロボットによる生産設備の自動化 出典:三菱電機

「NECでは、三菱電機様やデンソーウェーブ様など設備機器制御やロボット制御において卓越した強みを有する制御機器メーカーをはじめ、ロボット革命イニシアティブ協議会様※1)やCC-Link協会様※2)、ORiN協議会様※3)、IVI様※4)といった各業界の企業・団体との協業を推進しています。このアライアンスによる強みを、次世代ものづくりに生かしています」と関は述べている。

実際に、これらの関係を生かし、製品やソリューションを実現できているというのもポイントだ。

例えば、NECではスウェーデン IFSの生産管理システム「IFS Applicationsシステム」を活用するとともに販売を行っているが、同システムとMESを連携させ、三菱電機のシーケンサ(PLC)などを通じて製造装置のさまざまな実行情報をそのまま吸い上げられるようにするソリューションなどを既に実現している。三菱電機では生産現場のデータ化と一元管理を実現する「e-F@ctory(イーファクトリー)」ソリューションを提案しているが、同ソリューションとの連携により、さまざまな生産情報の管理とともに、遠隔地でタブレットなどを通じて閲覧できる。

図版e-F@ctoryによるリアルタイムな生産進捗の見える化 出典:三菱電機

一方、デンソーウェーブとの連携では、システム間や機器間、ベンダー間の違いを吸収する工場情報システム用ミドルウェア「ORiN2」を活用し、NECが提供するIoTソリューション「CONNEXIVE」を組み合わせることで、工場の外からロボットの稼働状況などを管理できるシステムなどを既に実現している。

NEC グローバルプロダクト・サービス本部 Industrial IoT推進グループ マネージャの森田亮一は「これらは決して先の技術ではなく、今実際に価値を生み出せるものです。将来的に『やりたいこと』を見据えつつ今価値が生み出せることを共に考えていけるところがNECの強みだといえます」と述べている。

写真ORiNを活用したロボット制御 出典:デンソーウェーブ

4つの価値創造で構成

NEC Industrial IoTは、NECが強みを有する画像認識やビッグデータ分析、ネットワーク、組み込みシステムなどの技術を体系化しており、大きくは次の4つのソリューションから構成されている。

1つ目は「現場、現物、現状のデジタル化」だ。NEC独自の画像認識技術を活用して現場やモノの実態を見える化し、大規模な設備追加を行うことなく管理の効率化や現場改善を実現する。例えば、「個体認証トレーサビリティシステム」「AR活用作業支援システム」などがある。画像認識技術を活用することで、これまでは熟練者の技に依存していた工程のノウハウが、誰にでも共有できるものになるという大きなメリットが生まれる。

2つ目は「見えない・隠れた世界を見通す分析」だ。多種多様かつ大量のデータをNEC独自のビッグデータ技術を活用して分析することで、従来見えなかった状況を“見える化”する。異常判定による問題特定・対策の早期化、生産品質の分析による品質向上やリワーク回避、故障予兆検知による稼働率やサービス向上、部品需要予測による在庫削減、電力需要予測による省エネルギーや製品価値向上といった応用がある。

3つ目は「ITとOT(Operation Technology)のシームレスな連携」だ。FA用コンピュータが基盤となって設備機器の通信規格やメーカーの違いを吸収することで、MESなどの業務システムをシームレスに連携させ、設備機器のリアルタイムな最適制御を実現する。また、工場ネットワークにSDN(Software-Defined Networking)と呼ばれるネットワーク技術を適用することで、ネットワーク構成の一元管理や、生産ラインの変更に合わせた柔軟なネットワーク変更、セキュリティの確保を実現する。

4つ目は「製品&サービスのスマート化」だ。これまでNECがM2M基盤として提供してきた「CONNEXIVE」を強化し、センサーデータや映像データなどの時系列データ(構造、非構造)の収集から蓄積、モニタリング、非定型分析、各種データ処理(リアルタイム型、イベント型、バッチ型)などの一連の処理を行い、多様な製品とのコネクトやサービスの継続的な拡張を可能とするIoTプラットフォームを提供する。

写真:NEC グローバルプロダクト・サービス本部 Industrial IoT推進グループ マネージャ 森田 亮一 NEC
グローバルプロダクト・サービス本部
Industrial IoT推進グループ マネージャ
森田 亮一

この分野でも、NECでは産業機械の予防保全にビッグデータを活用し、顧客設備の安定稼働やビジネスの付加価値向上など予防保守の新しいビジネスモデルを構築した東芝機械への導入事例があり、実績を残している。

重要なことは、これらのソリューションがIoTに特化して開発された新技術のみで構成されているわけではないことだ。むしろ、これらのソリューションの根幹を支えているのは脈々と磨き続けてきた汎用性をもった既存技術の数々である。「分断されたプロセスをつなぐサイバーフィジカルSIやセキュアなプラットフォームによって、IoTに向けた価値を提供できます」と森田は強調する。

実際に、NECでは、グループ会社を含めた生産拠点にてこれらの技術を自ら実証を進めている。実証から得られた知見をNEC Industrial IoTの各ソリューションにフィードバックするという。今後も、物体指紋認証技術を活用した個体認証トレーサビリティシステム、カメラ映像を利用した作業員の動線分析システム、ビッグデータ分析技術を活用した設備故障予兆検知システムなどの実証に取り組んでいく計画だ。

図版NECが自社実践を行うスケジュール

“日本版インダストリー4.0”に最も近い

次世代ものづくりを掲げIoTを活用した新たなものづくり基盤を作ろうという動きは、さまざまな団体において日本でも活発化しはじめたところだ。しかし、ここまで述べてきたように新たなものづくりの姿を実現するには、ICTに関わる技術面、ビジネス面、製造業としてのノウハウなどさまざまな面で課題が多く、実際に価値を生み出すのはまだまだ先の話になるとみられる。

そういう意味ではIoTに関する技術的な強みを多く抱え、加えて多くの有力な顧客やパートナーが参加するNECものづくり共創プログラムの場で、迅速な実証実験や豊富なノウハウを蓄積できるNEC Industrial IoTは、最も早く実効性の高い価値を製造業にもたらす新たな次世代ものづくり基盤となり得るのかもしれない。IoTを活用した製造業革新を脅威に感じながらも踏み出せずにいる製造業にとっては、NEC Industrial IoTは一歩を踏み出す大きな助けになるだろう。

図版NECが提供する価値

  • ※1)ロボット革命イニシアティブ協議会:安倍政権の「ロボット新戦略」を具体的に押し進める組織として2015年5月に発足。3つのワーキンググループ(WG)が活動するがその内「IoTによる製造ビジネス変革WG」が製造革新の動きを支援する。
  • ※2)CC-Link協会:日本・アジア発のオープンフィールドネットワーク「CC-Link」の普及推進を図る組織。世界8地域に拠点を設置し活動を進めている。
  • ※3)ORiN協議会:工場情報システムのための標準ミドルウェア仕様であるORiN(Open Resource interface for the Network)の普及や振興を進める団体。
  • ※4)IVI(Industrial Value Chain Initiative):日本機械学会生産システム部門の「つながる工場」分科会が母体となり2015年6月に発足したコンソーシアム。ものづくりを基軸に“緩やかな標準”による新たな連携の仕組み作りを目指す。

(2015年12月28日)

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