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模造品を1秒で鑑定!「物体指紋認証」

2015年12月28日

写真

指紋でヒトを特定できるよう、モノの表面にある微細な模様のバラツキを「物体指紋」として個体を特定するのが「物体指紋認証」です。ICタグやバーコードなしで効率的な管理を可能にします。


今回のテーマは「物体指紋認証」。指の指紋で人物を特定するように、工業製品の製造工程で生まれる微細な表面紋様のばらつきを「物体指紋」として、ICタグやバーコードなしで効率的な個品管理を可能にする技術が誕生しました。

「物体指紋認証」とは

工業製品の一部の画像を管理データベースと照合して、短時間で一致/不一致を識別・認証する技術のこと。2014年11月、NECが同社の指紋認証技術をはじめとするさまざまな画像認識技術を援用して、スマートフォン内蔵カメラを用いて瞬時に個品認証を行う技術を「物体指紋認証技術」として発表した。

  • 「物体指紋」って何?

工業製品に「指紋がある」ということにまず驚かされるが、実は「指紋のように世界にただ1つしかない表面紋様」のことを指している。大量生産される製品であっても、その表面には製造工程でいくら均一に加工しようとしてもし切れずに残る、個品ごとの微細な差異がある。

典型的なのは、サンドブラスト加工による梨地表面だ。曇りガラスのように、本来は表面がツルツルピカピカする素材なのに、わざと微細な凹凸をつけて、光沢をなくしたり、滑りにくくしたり、見ばえをよくしたりしている製品はよく見かけるはず。これには製品の表面に研磨材を勢いよく吹き付けて微細な凹凸をつける方法がとられている。

このような加工をしなくとも、鋳物や粒子混合塗料など、多くの物体表面に、もともと細かな凹凸が存在する。その凹凸のパターンは一見均一に見えるものの、ルーペでよく見ると個品ごとに全く違う。どんなに精密にブラスト機を制御しても、個品ごとに完全に一致することはない。

そんな違いを、指紋照合の場合と同じように、登録された画像と撮影された画像とを照合して見分けようというのが、「物体指紋認証」の基本の考え方だ。

  • 物体指紋認証で何ができるの?

何をどのように認証するかは、具体例を見た方が分かりやすいだろう。以下にNECのデモの模様を紹介しよう。図1には、ボルトが8本、シャーシに取り付けられた状態(左)になっている。それぞれのボルトの頭には同一の金型に施された梨地加工と文字が転写されて浮き彫りにされている(右)。どのボルトも肉眼では全く同じに見えるが、実は長さの違うボルトが混ざっている。これを物体指紋認証により見分けてみる。

写真図1 8本の施行済みボルトに2種類の長さのボルトが混在

スマートフォンにクローズアップレンズが組み込まれた専用のアタッチメントを取り付け(図2 左)、ボルトの頭をアタッチメントにはめ込むようにして、専用アプリで写真を撮ると、その画像はクラウド上にあるボルト個品管理データベースに送信されて照合が行われ、わずか1秒で結果がスマートフォン上に表示される(図2 右)。この場合は、長い方のボルトであり、データベースに登録済みの正当な部品である旨が表示されている。

写真図2 アタッチメントをつけたスマートフォンで撮影して「物体指紋」を照合

もう1つ、例えば正規ルートで入手した製品ではない機器、あるいは模倣製品を見分ける例を見てみよう。図3 左上に並んでいる機械は産業用のミシンで、この中に1つだけ非正規品が混ざっている。先程と同様に照合対象となる部分の部品に合わせたアタッチメントをつけたスマートフォンで撮影を行う(図3 右上)。データを送信すると、すぐさま結果が返ってくる。正規品であればデータベースに登録されているので、照合結果は「OK」(図3 左下)であり、登録外品であれば「×」(図3 右下)が表示される。

写真図3 非正規製品を部品から見分ける例

正規品であれば、その製造番号や出荷検査日、受け入れ検査日、稼働開始日、次回検査予定日などのような個品に付帯する各種の情報も、データベースから抽出して表示することも可能だ。

  • 製品のトレーサビリティ

このデモではボルトの種類の判定やミシンの非正規品の発見を行っているが、全てのボルトやミシンの部品画像を登録した個品管理データベース(クラウド側にある)が前提になっており、個品ごとに画像の照合が行われるとともに、個品にひもづけられた各種の情報が照合結果と同時に入手できる仕組みだ。

この方法によれば、製品の種別判定や真贋判定ができるばかりでなく、例えばある製品に使われているボルトがどこの国のどの工場で作られたのか、さらには工場内のどの生産ラインでできたのか、検品されたのは何月何日何時何分かなど、どこまでも詳細に来歴をトレスできるようになる。

例えば、電子部品、服飾用部品、食品・薬品の容器などの表面紋様を登録し、製造日、購入店舗や日時などを対応付ければ、部品や製品の流通経路のトレサビリティを確保できる。

  • 細かい部品の個品管理、真贋判定、ブランド保護

製品のエンブレムやロゴマークなどの表面紋様を登録すれば、簡単に個品が識別できるため、従来のようにシリアルナンバーを刻印したり、バーコードやICタグをつける必要がなくなる。上掲のようにボルトの頭のように、タグ付けやコード印刷がほとんど不可能な部品でも、簡単に個品管理ができるようになる。もちろんブランド品や組み立て後の製品の真贋も瞬時に判定できるので、ブランド保護にも利用できよう。

  • 製品・設備の保守点検が効率化

加えて製品や設備の保守点検の際の部品の確認が簡単にできることになる。類似品が多い部品でも、表面紋様を登録するだけで個品管理が可能になるので、間違った部品使用の予防につながり、施工後のボルトやねじの頭などの紋様から、どのような種別の製品なのか、適正な検査を通過してきた製品なのかが判断できる。万一、製造工程の一部で特定の時間帯だけに問題が発生して不良部品が出回ってしまった場合でも、その日の生産ロット全部というような単位ではなく、欠陥が生じた時間帯に製造された部品だけを交換すればよいことになり、品質管理・保証と保守コスト削減に役だつだろう。

コラム:不適切なボルトの使用で航空機の窓が外れた事件も!

1990年、イギリスの航空機のコックピットの窓が飛行中に外れ、機長の体が外に飛び出してしまう事故が起きた。幸い副操縦士や客室乗務員の奮闘で無事に緊急着陸でき、機長も九死に一生を得たが、1つ間違えれば大惨事になったことは想像に難くない。その事故を起こした原因は窓を固定していたボルトが、規格サイズのものではなかったことだった。小さなボルトのような部品であっても、種別の誤認や品質確認ミスは、時に人命にもかかわるリスクがある。部品や製品の生産がグローバル化する中にあって、部品の個品管理は今後ますます重要になってくる。

「物体指紋認証」の技術の特徴と今後

  • 「物体指紋認証」の技術は指紋や顔認証技術の発展形

指紋を光学スキャンしてデジタル情報として読み取り、あらかじめ登録された指紋パターンと照合する「指紋認証」技術は1970年代から発達してきた。早期から取り組んできたNECは1982年に実用化に成功し、その後も世界の第一線で指紋認証技術の普及と発展に寄与してきた。

また画像をもとに人物の特定を行う「顔認証」技術、さまざまなものが写った画像から特定の被写体を抽出・認識する「被写体認識」技術も、これまで熱心に磨き続けてきている。それらの技術を集めて、2011年にはメロンの表面の網目画像をデータベースに登録し、店頭のメロンの画像と照合して生産地の真贋などを判定するアグリバイオメトリクス技術を開発した。

1個1個微妙に違うメロンの網目をいわば「指紋」として照合する仕組みだ。今回の発表はその延長上にあり、より微細な違いを、スマートフォン内蔵カメラのような一般的なカメラ(1メガピクセル程度)の画像で判別可能したうえ、ごく短時間での照合が行えるようにしたところが進化だ(図4)。

図版図4 生物の個人・個体認証から工業製品の個品認証へ

  • 認識精度と今後の課題

気になるのは認識精度だが、同社は1000本の金属ボルトの個品認証を実証している。それに要する時間は約1秒、しかも100万回の画像照合の認証成功率は100%だったという。同一の金型によって作られた部品(図5)でも、その違いを見分けることは容易であり、1ミリ~数ミリ角の面積であれば、1000個程度の照合は瞬時にできるという。

図版図5 同一金型で作成された金属部品の表面を拡大した例。同じ金型から製造した部品にも個体差があることを確認できる

金型を利用した製品の場合には、個別の特徴がある一方で、その金型に特有の紋様もあり、それを識別することもできる。金型で作ったサンプルが10個以上あれば、その金型で作成した部品かどうかを識別することが可能とのことだ。プラスチック部品についても有効性が検証されている。

なお、4Kなどさらに高精細なカメラによれば、もっと表面の変化が少ないものにも応用可能であり、一方、例えば木目のある素材、壁紙などなら、一般的なカメラでアタッチメントなしで普通に撮影しても照合は可能だという。要は、表面紋様がはっきりと写し出せれば、どのようなものにも応用可能ということだ。

ただし光を完全に吸収するような布素材、徹底的に表面研磨された部品、色ムラや表面のざらつきのない部品、数万個のオーダーでの誤認証可能性などについての検証はこれからだ。また表面の摩耗や欠損、キズ、腐食などが生じて劣化した場合の照合についても今後さらに研究が必要だとしている。現在のところ、照合対象面積の50%が失われても認証可能なところにまでは到達しているという。

もう1つの課題はどのように個品をデータベース化するかだ。生産ライン上の点検ポイントで生産品の撮影が行われていることは多いので、その際に、照合対象とする部分を適切な範囲で撮影しておく必要がある。それさえできれば、画像と付帯情報とをデータベースに登録することは難しくはない。データベースさえ出来上がれば、独自アルゴリズムによる照合プログラムによって高速な照合が行えることになる。メーカーがデータベースを一般に、またはパートナー企業や販売店、検査機関など特定の相手先に公開することにより、トレサビリティが確保できる。

この技術発表からこれまで、同社には多数の引き合い、相談が寄せられているという。今後はより多様な素材についての技術検証と改善を進め、より多用途・大規模での実証を推進していく予定だ。2015年度上期中には製品・部品の真贋判定向けサービスなどをソリューション化し、販売開始をしていく。

関連するキーワード

指紋認証

  • どういうもの?

指紋は生物学上、「同一の紋様を持つ人はただ1人」「終生紋様が変わらない」という特徴があり、本人特定のために19世紀から用いられてきた生体情報だ。あらかじめ登録された指紋の紋様と、例えば犯罪現場から採取された指紋の紋様との一致/不一致を鑑定するような用途に用いられてきた。

1970年代からは指紋を光学的にスキャンしてデータとして保管、コンピュータユーザーなどが手元の指紋スキャナで入力した指紋データと照合して本人認証を行うシステムが発展してきた。ただし指表面の汚れなどの条件で精度が落ちる場合があり、現在は皮膚の下の静脈のパターン照合による「静脈認証」システムも多くなってきている。指紋と静脈のハイブリッド認証も活用されている。

  • 「物体指紋認証」との関連は?

指紋認証システムの開発によって発達してきた画像処理や照合アルゴリズムの延長上に、物体指紋のための画像処理技術や照合アルゴリズムが生まれた。また後述する「顔認証」技術に使われている要素技術も、物体指紋認証システムに取り込まれている。

ちなみにNECは指紋認証技術の開発を40年以上行っており、本技術を用いたシステムは世界40カ国以上に導入されている。同社は2014年、米国国立標準技術研究所(NIST)が実施した指紋認証技術のベンチマークテスト「Proprietary Fingerprint Template Test II(PFT II)」で約12万件の実運用データにおいて2つの指紋画像の1:1照合で平均照合精度99.47%と、参加ベンダーのうちトップの成績を記録している。

顔認証

  • どういうもの?

指紋認証や静脈認証にはスキャナが必要であるのに対し、「人の顔」を認識する「顔認証」にはWebカメラなどの一般的なカメラが利用でき、例えば入退室管理に使えば、手がふさがっている状態でも認証を通ることができて利便性が高い。また複数の人間の同時認証も可能。現在では、国民IDや出入国管理など、セキュリティ分野への利用が広がっている。

  • 「物体指紋認証」との関連は?

カメラで撮影した画像を照合するところが共通しており、位置(向き)補正やゆがみ補正といった補正技術や照合アルゴリズムの一部などが物体指紋認証に生かされている。NECはこれについてもNISTによる顔認証技術のベンチマークテストで3回連続の第1位評価を獲得している。

個品認証

  • どういうもの?

製品や部品の同一性を識別する「個品識別」技術と、その生産や流通履歴の情報の管理と開示を行う「個品情報管理」技術を融合させ、製品や部品の来歴を個々に確認可能にしたり、正規品と非正規品の識別「真贋判定」をしたりできる技術のこと。個品識別には、シリアルナンバー、ICタグ、バーコードなどが用いられることが多い。

  • 「物体指紋認証」との関連は?

シリアルナンバーの印字や刻印、ICタグの付与、バーコード印刷などができない小物部品はこれまでロット管理はされていても、個品認証まではできないケースがほとんどだった。物体指紋認証技術によれば、特別な加工やシール貼付などの必要がなくなり、クラウドなどに記録した個品データベースと画像を照合することで個品識別、個品情報管理が行える。

(2015年12月28日)

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