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「つながる工場」の基盤は“変種変量生産”時代の特効薬

2015年12月28日

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インダストリー4.0など製造業革新の動きが注目を浴びる中、その第一歩として「つながる工場」への注目が高まっている。IoTを活用した次世代工場の実現は「まだ先」と考える企業は多いが、実はその第一歩として取り組む工場ネットワーク基盤の整備は、工場の柔軟性を高め、製造業務の効率を向上させるなど、今現在の工場の課題解決にも大きく貢献する。工場ネットワーク基盤を整備する価値をあらためて紹介する。


ドイツのモノづくり革新プロジェクト「インダストリー4.0」など、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)を活用した製造業革新に大きな注目が集まっている。第4次産業革命ともいわれるこの大きな変化の中で、工場も「つながる工場」への進化が求められているところだ。

インダストリー4.0で描かれているような世界が実現されるのは2020~2030年だといわれており、多くの企業にとって「まだ先」のことだと捉えられているが、実は「つながる工場」実現のためのネットワーク基盤の整備は「今」にも大きな効果を発揮する。「今」役立つ工場ネットワーク基盤の価値とその技術について紹介する。

“常に変化し続ける”ことが求められる工場

現在、製造業における工場に求められる役割はどのような変化があるだろうか。グローバル化の進展や、ライフスタイルや社会の変化によって顧客ニーズの多様化は進み、生産リードタイムにもさらなる短縮が求められている。

モノが不足していた時代は、まずモノを行き渡らせることが重要であった。そのため、同じ製品を大量に効率よく作る「少品種大量生産」が求められた。一方、ニーズの多様化が進みリードタイムが短くなる中「多品種少量生産」へと時代が移る。これらの時代の変化で、多くの品種を効率よく作るために、柔軟な生産ラインとして注目を集めたのが「セル生産方式」だ。さらに現在は、決まった品種を一定量作るのではなく、常に変化し続ける生産物と生産量に柔軟に対応する「変種変量生産」の時代が到来したといわれている。

写真:NEC グローバルプロダクト・サービス本部 ITネットワークソリューション部 樋下 順 NEC
グローバルプロダクト・サービス本部
ITネットワークソリューション部
樋下 順

これを実現するためには、工場は「変化」を前提にしつつ、安定した品質の製品を効率よく生産できなければならない。頻繁に発生する仕様変更にもフレキシブルに対応し、素早く生産計画を引き直したり、生産ラインを組み替えたりできる体制や総合的な仕組みが求められている。

従来、生産ラインの大幅な変更を行う際には、各要所の責任者が集まって協議を重ね、それぞれの部署の要求をすり合わせた綿密な変更計画を立て、年末年始や夏季休暇など、工場が一斉に停止する時期を選んで、変更を実施するという段取りで実施してきた。

「そこで重要になるのが工場内のネットワーク基盤だ。ネットワークは『最初からあるもの』『つながっていて当たり前のもの』という感覚の人が多いかもしれないが、実はネットワークの設定変更時にはネットワークを止めなくてはならず、設定変更作業にかなりの時間を要していた。変化への対応をいかに実現するかが急務である」とNEC グローバルプロダクト・サービス本部 ITネットワークソリューション部の樋下 順は強調する。

現状ネットワークの課題

しかし、「変化への対応」といっても、現実的には工場全体をつなぐネットワーク自体が、複雑で難解なものとなっているケースが多い。

工場内にはFA用ネットワークの他、OA用ネットワークも存在し、建屋内および建屋間をケーブルで結んでいる。無線LAN設備も一般化しており、広い敷地内に多数のネットワーク機器が分散している。機器の設定変更や生産ラインの組み替えなどを行うためには、これらの複雑化したネットワークを考慮した上で、綿密な設計を行い、機器に対し1台ごとに設定作業をしなければならない。

こうした状況では、特定の資格やスキルを持つ専門家でなければ、ネットワークに変更を加えることができない。障害発生時や設定変更を加えたい時にも「担当者不在で対応不可能」という状況になってしまうのだ。そもそも、ネットワークエンジニアが常駐していない工場も数多く存在している。生産ラインの組み替えを行うたびに、本社の情報システム部門やSIベンダーから専門家を呼び寄せなければならい。これらの複雑化による「ネットワーク運用の属人化」が工場を硬直化させる要因の1つとなっているのだ。

写真:NEC グローバルプロダクト・サービス本部 ITネットワークソリューション部 田中 進悟 NEC
グローバルプロダクト・サービス本部
ITネットワークソリューション部
田中 進悟

同様に工場ネットワークの複雑性が引き起こす問題として「ループ障害」がある。ループ障害とは、データがネットワークにできたループ内を無限にかけめぐることで、最終的にはネットワーク全体をダウンさせてしまう障害だ。例えば、工場現場の担当者が、ネットワークケーブルを誤って差し込んだり、機器を誤設定したりすることで発生する。

「多数のネットワーク機器やコンピュータが混在し、何がどこにつながっているか正直分からなくなるほど、ネットワークが複雑化しているという悩みを聞くことも多い。この状況で、ループ障害の発生を防止することは困難な作業だ」とNEC グローバルプロダクト・サービス本部ITネットワークソリューション部の田中 進悟は述べる。実際にループ障害が発生してしまい、工場がストップした事象などもあり、生産現場に与える影響は甚大なものとなり得る。

さらに「セキュリティ」の問題も深刻だ。工場の製造装置で利用しているPCは、通常のオフィス用PCより長期間にわたって使用するケースが多く、既にサポートが切れ、ウイルス感染リスクの高いWindows XPの端末も数多く残されているのが現実だ。一方で工場に存在するあらゆる機器のメンテナンスのためにIoTを活用して常時監視する動きなどが広がってきており、工場の機器が外部とデータの授受を行うケースが増えてきている。こうした状況下でセキュリティをいかに確保するかというのは大きな課題となってきている。

これらの「属人化」「ループ障害」「セキュリティ」という3つの課題は、あらゆる工場が共通して抱える課題だということができるだろう。

「変化に柔軟に対応できる工場」の足場を築くネットワークとは

こうした現在のネットワークの3つの課題を克服し、工場自体が頻繁な変更要求に柔軟に対応できる仕組みを得るためにはどういう手段があるだろうか。この課題解決の手段として注目を集めているのが「SDN(Software-Defined Networking)」の活用である。

SDNとは、物理構成やネットワーク機器1台1台に手を加えることなく、ソフトウェアでネットワークを柔軟に集中制御できる技術だ。

従来のネットワークの仕組みでは、目的地にデータを届ける際に、複雑に張り巡らされたネットワークの中をどういう経路や手順(ルール)で送るのかを、スイッチやルーターなどのネットワーク機器が個別に判断しながら、バケツリレー式にデータの受け渡しを行っている。そのため、通信の流れを変える場合は多くの機器の設定変更が必要となり、データの混雑状況やメンテナンスなどに応じて、その都度最適なルートに変更するといったことは困難だった。また、高度な専門知識が要求されるとともに、煩雑な手間が発生する。

そこでSDNは、これまでネットワーク機器がそれぞれ持っていた「ネットワーク制御」と「データ転送」の2つの処理を完全に分離する。データ転送処理のみに特化したネットワーク機器を、ソフトウェアから動的に集中制御することで、柔軟で効率の良い、安全性の高いデータ通信を実現できるようになる。もちろん本社のIT部門など、遠隔地からの集中制御も可能になる。

このSDN技術で先行している企業がNECである。「NECはいち早くこのSDNの研究開発に着手し、対応製品を他社に先駆けて商品化してきた。その納入実績は、国内外で250システム以上を数える」と樋下氏は語る。SDNを活用することで、「変化に柔軟に対応できる工場」への足場を容易に築くことが可能となる。

SDNでさまざまな課題を解決!

従来は、生産ラインの変更や追加で工場内のネットワークの設定変更をしたい時があっても、下手に止めると工場内にどんな影響を及ぼすのか分からず、生産ラインが止まっている時間帯以外は対応が難しかった。しかしSDNは通信経路の変更を柔軟に行うことができるため、生産ラインを動かしながらでも、他に影響を与えずに経路を切り替えてメンテナンスをしたり、設定変更や機器の追加などを行ったりすることができる。「従来は休日作業や深夜作業が必要だったメンテナンスなどを、平日の日中にも行えるようになり、労働環境改善につながったケースもある」と樋下氏はSDNのメリットについて述べる。

先述した「属人化」「ループ障害」「セキュリティ」という工場ネットワークの3つの課題についても、SDNで多くは解消できる。それぞれのケースを見てみよう。

属人化の解消

従来のネットワーク機器は専用のコマンドで設定を行わなければならなかったが、NECのSDNであれば、視覚的に分かりやすいGUI管理画面から設定が可能で、属人化が解消できる。例えば、入社3カ月目の新人でも、ネットワークの運用ができるようになったという導入事例もある。また、管理画面からは、ネットワークの通信状態をグラフィックで見ることもできるので、システム障害時の迅速な対応が可能になる。そのため、従来は原因特定に数日間かかっていたが、すぐに特定できるようになったというケースなども生まれている。

ループ障害の回避

SDNでは、そもそも「ループ」という概念が存在しないため、誤ってケーブルを差し込んだだけでは、先述したような「ループ障害」が発生しない。ネットワーク構成の設計自由度が高く、また、運用の負荷も軽減できる。

図版SDNによるループの回避

セキュリティの強化

SDNは、単一の物理ネットワーク上に、用途ごとに独立した複数の仮想ネットワークを構築できるため、OA端末のウイルス感染が工場全体に波及してしまうといった事態を避けることができる。Windows XPのようなセキュリティリスクの高い端末についても、SDNなら仮想ネットワークで論理的に隔離しておくことができるので、ウイルス感染リスクを低減する。さらには、セキュリティ製品との連携で、マルウェア感染などによる不正通信を検知し、感染端末を自動的に隔離する「サイバー攻撃自動防御ソリューション」なども用意されている。

SDNで将来の“あるべき姿”を実現

ドイツが描いた「インダストリー4.0」の世界は、加速する需要の多様化に柔軟に対応できる自律的な生産現場を作るということが目的となっている。工場内にとどまらず、工場間をつなげ、さまざまな機器や設備、部品もつなげ、IoTを活用して取得した情報を見える化し、さらに生産計画などの上位のシステムと照らし合わすことで工場が自律的・自動的に変化しながら、最適な生産を行うという「つながる工場」の世界だ。しかし、こうした将来の理想像を実現するには、財務的にも人材的にも負担は大きく、技術的にもまだ確立されてはいない。多くの企業や工場にとって、これらの動きは「まだ自分たちがする余裕はない」と考えるのが率直なところだろう。

しかし、将来的には工場の未来像はその方向性に進むことが既定路線となりつつある。そうであるならば、まずはその将来像を描きつつ、現在でも利点が得られる基盤整備に乗り出すのは合理的な判断ではないだろうか。田中は、「大切なのは、将来にどんな可能性が広がっていくのかをイメージしながら、そのメリットをしっかり把握していくことにある」と語っている。

また、樋下は「将来的に“つながる工場”“変種変量生産”の理想像を実現するためにも、柔軟性が高いネットワーク基盤の構築は重要な要素になる。センサーなどさまざまな機器や設備がつながる工場では、今以上に頻繁に、生産ラインの見直しや変更が必要となる。またセキュリティの確保もさらに深刻な課題になっていく。それを全て従来の技術、従来の機器で解決することは非常に難しく、必然的にSDNを採用することが求められているといえる」と強調する。

その際に、SDNで世界をリードし、多くの実績を持つNECは、「ものづくり共創プログラム」など製造業支援の取り組みも積極的に行っており、有益なパートナーとなってくれることだろう。

図版NECが描くSDNによる次世代工場ネットワークのイメージ

(2015年12月28日)

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