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電力システム改革に伴う新たな市場の誕生

第2回
求められる系統運用のさらなる高度化

2015年9月15日

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重要性が増す系統運用

本コラムの第1回では、電力システム改革の一環として、電力会社の管轄区域を超えた電力の効率的な融通を実現するための広域的運営推進機関の設立が進められてきており、今後は2016年4月の電力小売の全面自由化、2018年~2020年を目途とする送配電部門の法的分離および電気小売料金の全面自由化が予定されていることを述べた。

これまでのところ、我が国の系統運用は、一般電気事業者10社による垂直統合体制のもと運営がなされてきたが、それらの送配電部門が法的に別会社化され、広域的運営推進機関のもと電力の効率的な融通を行っていく体制となる。電力小売の全面自由化によって、これまでは限定的にしか行われてこなかった電力の「越境販売」(=一般電気事業者が、自社の送配電区間を越えて、他の一般電気事業者の送配電区間で電力販売を行うこと)もますます盛んになると想定され、電力の効率的な流通といった観点から、今後の電力システムにおいて、広域的運営推進機関と一般電気事業者の送配電部門の果たすべき役割・責任は、より重要なものとなると考えられる。

さらに我が国では、電力システム改革と並行して、CO2削減手段の1つとして再生可能エネルギーの導入を促進しているところであり、今後も再生可能エネルギーの導入が拡大すると考えられる。再生可能エネルギーは日射量や風況といった気象変化によって供給力が大きく変動する電源であり、他の石炭火力発電所やガス火力発電所に比べて取り扱いが困難であるため、一般電気事業者の送配電部門にとって再生可能エネルギーの受け入れ拡大の実現は重要なテーマである。

コラム第1回では、日進月歩で進むICTの技術革新が電力システム改革に影響を与えることを述べたが、以上のような背景の下、広域的系統運営推進機関や一般電気事業者の送配電部門が担う系統運用においても、情報通信・ICTがますます導入されていき、広域融通や再生可能エネルギーの受け入れ拡大のために活用されていくものと考えられる。

図版[拡大する]拡大する図表-1 電力システム改革後の電力市場セグメント(第1回コラム再掲)

出所:日本総研作成

再生可能エネルギーの導入見通し

地球温暖化対策が世界的に急務となる中、我が国においても、CO2削減手段の1つとして再生可能エネルギーの導入拡大に期待されてきた。こうした背景のもと、再生可能エネルギー導入を後押しすべく、1997年に「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法による補助金」の施行から再生可能エネルギー導入政策が開始され、一般電気事業者に対するRPS法(Renewable Portfolio Strategy)の施行による一定量の再生可能エネルギーの調達義務化、2009年からの太陽光発電システムの余剰電力(=太陽光発電システムの導入量-自家消費量)に対する固定買取制度の適用を経て、2012年からは太陽光発電システムの他、風力、水力、地熱、バイオマスといった再生可能エネルギーについても、発電種別・規模別に一定期間・一定価格で買い取るFIT制度(Feed-in-Tariff:FIT)が施行された。長年に渡る政策の積み重ねにより、我が国における再生可能エネルギーの導入は大きく進んだと言える。2014年度からは新たに洋上風力がFITの対象となるなど、制度の対象も拡大している。また技術的にも、次世代太陽電池の開発、未利用水面や壁面に設置可能な太陽電池設置モジュールの開発(例:フロート型太陽電池)などが進められており、未利用地を活用した再生可能エネルギーの導入が今後も拡大する見通しである。

2014年7月、2030年のエネルギーミックスが公表された。内訳は、石油火力:3%、石炭火力:26%、LNG火力:27%、原子力:20~22%、再生可能エネルギー:22%~24%とされ、2030年に向けて再生可能エネルギーの導入を進めていくという政府の姿勢を示した。

図版[拡大する]拡大する図表-2 これまでの再生可能エネルギー導入政策

出所:日本総研作成

図版[拡大する]拡大する図表-3 2030年のエネルギーミックス

出所:経済産業省「長期エネルギー需給見通し」(2015年7月)

早くも導入限界に達しつつある再生可能エネルギー

一方で、急速に進む再生可能エネルギーの導入は、系統運用にも大きな影響を与えた。例えば太陽光発電を例に取ると、日射量に応じて出力が変動する特性を考慮し、ゴールデンウィーク等の発電量が増大する時期に系統安定化を図るため、電力会社が30日を上限に発電事業者に対して無補償で出力抑制を求めることができるという系統接続ルールが従来から存在していた。

しかし、太陽光発電の設備認定量が急増した結果、従来の系統運用方法では拡大する再生可能エネルギーの導入に対応できず、2014年秋、九州電力など5つの電力会社は、系統接続申し込みの回答を保留するという状況に至った。その後、九州電力は個別の接続協議を受け入れる条件を開示したが、その内容は、出力変動が大きな太陽光及び風力の場合、それぞれ定格出力の83%、95%に相当する容量の蓄電池設置を求めるというものであった。

その後、経済産業省は、2014年1月に省令改正を行い、東京電力、中部電力、関西電力を除く電力7社を指定電気事業者とし、従来の30日という上限枠を超える無制限、無補償の出力制限を認め、この条件に従う限りにおいて、接続を受け入れることとなった。本省令改正を踏まえ、一般社団法人太陽光発電協会は、九州電力を始めとする指定電気事業者管内の再生可能エネルギーの系統接続量の増加に伴う出力制御抑制率に関するシミュレーションを公表しているが、九州電力管内においては、系統接続量が1,300万kWに至った段階で、10kW以上の太陽光は実に年間23.4%も出力抑制される結果が予測されている。再生可能エネルギー事業者にとっては、系統接続条件への対応や、出力抑制への対応が必要になる。

系統運用事業者である一般電気事業者にとっても、事業者に負担を求めるだけでなく、系統側の努力によって再生可能エネルギーの導入量拡大に対処することが求められている。そうした取り組みの一環として、東北電力では、再生可能エネルギーの推進を復興の大きな柱と位置付けている福島県の復興に資する取り組みとなるよう、南相馬変電所に出力4万kW、容量4万kWhの蓄電池を設置することとし、着工工事を開始したところである。

図版[拡大する]拡大する図表-4 九州電力管内における太陽光の出力抑制率予測
(ベースロード:477万kW)

出所:一般社団法人太陽光発電協会
「系統接続制約問題の影響度を判断するための『出力制御シミュレーション』について」

一般家庭では、「2019年問題」が目前に迫る

一般家庭に導入される10kW未満の太陽光発電では、いわゆる「2019年問題」が目前に迫ってきた。固定価格買取制度の開始直後に認定を受けた家庭の太陽光発電は、設置から10年後に当たる2019年には買取対象から外れるため、その後の売電に関する諸条件(買取先・買取価格など)の未整備問題への対応検討が徐々に始まりつつある。これまで42円/kWhで売電できていたものが、ある日を境に回避可能原価(12円/kWh程度)での買取になるケース、あるいは出なり電源としてさらに安い価格(3円/kWh程度)での買取を余儀なくされるケース、さらには系統への接続(売電)を拒否される最悪ケースも想定される。こうした状況下では、否応にも売らない選択肢、すなわち「再エネの自家消費」の選択肢を取らざるを得なくなることが想定される。

蓄電池及びICTの活用による課題解決可能性

以上の状況を踏まえると、今後は再生可能エネルギーの導入に伴う蓄電池活用やICT活用ニーズが顕在化するものと考えられる。指定電気事業者7社の管区において再生可能エネルギーの新設を検討する事業者は、蓄電池の設置もしくは無制限出力制御の受け入れという二択を迫られており、蓄電池導入ニーズが徐々に高まっていくものと考えられる。また、一般電気事業者の送配電部門にとっても、東北電力の事例のように、系統分野においても蓄電池の導入が進むと想定される。さらに、系統運用の高度化に当たっては、再生可能エネルギーの供給力予測も必要となるため、供給量予測のさらなる高度化に向けて情報通信・ICTの活用も進むと考えられる。

また、「2019年問題」が迫る一般家庭では、FIT期間終了後の太陽光発電の余剰電力の有効活用(自家消費ニーズ)が徐々に顕在化する。高効率な小型蓄電池は、こうした家庭のニーズに対応するものと考えられる。

NECの貢献可能性

既にNECでは、再生可能エネルギーへの出力抑制制御の制度化を見据えて、系統接続条件への対応あるいは出力抑制指令発令時の余剰電力の有効活用のため、様々な需要に応じた蓄電システムを開発している。

蓄電システムは遠隔出力抑制指令への対応、再生可能エネルギーの短周期変動制御や長周期変動制御に対応するための強力なツールであり、柔軟性と即応性を兼ね備えた最適ソリューションといえる。NECは世界11の国と地域で大型蓄電システムを展開するなどグローバルでもトップクラスの納入実績を持ち、世界各地で蓄電システムを活用した系統運用への貢献を進めている。

図版[拡大する]拡大する

図版[拡大する]拡大する図表-5 蓄電システムによる再生可能エネルギー導入拡大への貢献

図版[拡大する]拡大する図表-6 NECの系統用蓄電システムの実績

一般家庭に向けては、最長15年間保証※・クラウドによる24時間365日の見守り機能を備えた小型蓄電システム(7.8kWh)を製品化している。また、NECのクラウド型HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)と組み合わせて使うことにより、エネルギーの利用スタイルの変化に合わせて家庭内のエネルギーを最適化でき、省エネかつ豊かな暮らしをサポートする。「2019年問題」が迫るにつれ、一般家庭の需要家にも蓄電システムが普及していくものと考えられるが、NECは培ってきたノウハウを活かし、工場、ビル、など様々な領域にむけて蓄電システムを展開していく。

  • 保証期間は15年保証のほか、10年も選択可能

図版[拡大する]拡大する

図版[拡大する]拡大する図表-7 家庭向けエネルギーマネジメントシステムの提供

(2015年9月15日)

著者プロフィール

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段野 孝一郎(Koichiro Danno)
株式会社日本総合研究所 総合研究部門 ディレクタ/プリンシパル
京都大学大学院工学研究科博士前期課程修了(工学修士)
技術戦略及びマーケティング戦略の観点に基づき、エネルギー(電力・ガス・再生可能エネルギー)、環境、情報通信・ICT、交通、水道などの社会インフラ分野における経営戦略・事業戦略、新規事業開発に関するコンサルティングを実施している。

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