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エネルギー革新戦略が目指す新たな市場創造

第3回
省エネの一層の進展に向けて~聖域なき省エネの徹底~

2016年3月16日

エネルギー革新戦略が目指す省エネルギー目標

前稿で述べた通り、日本再興戦略改訂2015で謳われている「未来への投資・生産性革命」の一翼を担うべく、資源・エネルギー政策を所管する資源エネルギー庁において「エネルギー革新戦略」が策定されている。この中では、①徹底した省エネルギー化、②再生可能エネルギーの導入拡大、③新たなエネルギーシステムの構築を行うことを掲げている(図表-1)。

第3回目となる本稿では「①徹底した省エネ」を実現するための取り組みについて考察を行う。

[拡大する]拡大する図表-1 エネルギー革新戦略における主な検討課題

出所:資源エネルギー庁「エネルギー革新戦略の検討状況」(平成27年12月)を基に日本総研作成

エネルギー革新戦略が掲げる省エネ戦略

エネルギー革新戦略が掲げる省エネ戦略は、産業部門向けの施策、民生・家庭部門向けの施策、運輸部門向けの施策から構成される。

産業部門向けの施策では、省エネトップランナー制度の拡充、中小企業向けの省エネ取り組み支援強化、新しい省エネ評価精度の構築が重点テーマである。省エネトップランナー制度においては、流通・サービス業へベンチマーク制度を拡大するとともに、製造業におけるベンチマーク基準をさらに強化(深堀)することを予定している。また、中小企業の省エネ取り組み支援強化においては、中小企業向けの省エネルギー相談地域プラットフォームを新たに構築するとともに、共同省エネ制度の見直しを行うことを予定している。現状の共同省エネ制度は、事業者が共同で省エネし、中立的な第三者の認証を得た場合において、省エネ法の定期報告書上で省エネ量に勘案することができる仕組みであるが、見直しによって、中小企業の省エネを支援した事業者についても、省エネ法上で優遇されるようになる見込みである。さらに、新しい省エネ評価制度の構築においては、事業者クラス分け評価制度を創設するとともに、未利用熱活用制度の創設を図ることとされている。

民生・家庭部門では、省エネ機器の導入促進と、住宅・建築物のさらなる省エネ化の徹底が重点テーマである。省エネ機器の導入促進では、トップランナー基準の拡充を図ることとされており、まずは照明へトップランナー基準の適用範囲を拡大する予定である。住宅・建築物のさらなる省エネ化の徹底では、建築物省エネ法に基づく省エネ基準への適合義務化、住宅・ビルのゼロ・エネルギー化の推進(ZEB: net Zero Energy Building/ZEH: net Zero Energy House)、省エネリノベーションの推進を図る計画である。

運輸部門では、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)、プラグイン・ハイブリッド自動車(PHV)、燃料電池自動車(FCV)などに代表される次世代自動車の普及を図ることを目標に掲げており、そのための初期需要の創出とインフラ整備を重点的に進める計画である。また、運輸部門の省エネ化の一環として、自動走行の実現に向けて検討を進めていく計画である。

エネルギー革新戦略では、こうした全方位的な省エネ化によって、徹底した省エネを図り、2030年にエネルギー消費効率改善▲35%を展望している。

急務となる省エネトップランナー制度拡充への対応

従来の製造業向け省エネトップランナー制度(ベンチマーク制度)は、全産業の約50%をカバーできるよう、鉄鋼、化学、窯業土石、紙パルプなどのエネルギー多消費産業向けに適用されてきたが、トップランナー制度の拡充により、貸ビル、ショッピングセンター、スーパー、百貨店、ホテル、コンビニ等の流通・サービス業にも適用されるようになる。これによって、全産業の約70%がトップランナー制度によってカバーされるようになる。

また、製造業におけるベンチマーク基準のさらなる強化(深堀)においては、製品1ton当たりに必要とされるエネルギー量を現行基準よりもさらに厳格化する。具体的には、セメント製造業:▲4%、洋紙製造業:▲22%、ソーダ工業:▲7%という目標値が課される見込みである。このように産業部門では、かなり思い切った製造効率向上、省エネの徹底が必要となる。

なお、2014年4月1日に施行された改正省エネ法では「電気の需要の平準化の推進」が盛り込まれており、需要家が従来の省エネ対策に加え、蓄電池や自家発電の活用等により、夏期・冬期の昼間の電気の使用量を削減する取り組みを行った場合に、取り組みを行った事業者が省エネ法上不利な評価を受けないようプラスに評価できる体系にし、日本の電気の需要の平準化の推進を図ることとされている。事業者は、省エネだけでなく、ピークカットという観点からもエネルギー消費の効率化に取り組まなければならない。

以上のような政策動向を踏まえると、産業部門においてはさらなる省エネ化のために、製造効率の向上、省エネの徹底、蓄電池や自家発電を活用したピークカットなどの施策が必要とされるだろう。

自己託送の活用

製造業においてピークカットを進めるための方法の1つとして、「自己託送制度」の活用が挙げられる。

「自己託送制度」は、需要家側の埋蔵電力(埋蔵発電設備)を有効活用し、日本全体のピークカットを促進するという目的で、2014年4月1日から施行された。自己託送とは、非電気事業用電気工作物(いわゆる自家発電設備等)を有する需要家が、自己と密接な関係性(資本関係、生産取引関係等)を有する他の需要家(グループ会社の工場等)に対して、送配電事業者の送電線を活用して、自家発電設備等の余剰電力を託送供給することを可能にするものである。自己託送制度の特例として、①自己託送の場合は完全従量制の託送料金(=基本料金不要)、②インバランスは当初2年間±10%まで、の2点が適用される。

[拡大する]拡大する図表-2 自己託送制度の概要

出所:資源エネルギー庁

自社の工場内で自家発電設備を有効に活用できていない場合でも、自己託送を活用して他拠点に余剰電力を融通できれば、グループ全体としてはピークカットが可能になる。うまくピークカットができれば、省エネ法上も有利な評価を得ることが可能だ。さらに、電力料金のうち、基本料金負担を大きく低減できる可能性がある。加えて、自家発余剰電力には再生可能エネルギー発電促進賦課金が課されないため、この点でも経済性が見込める。

既に某電子精密機器メーカーは、自社工場の自家発電設備を活用し、約1万5千kWをグループ16拠点への送電用に確保するとともに、16拠点で必要とする電力の予測量と実需要量を30分単位で管理するシステムを導入し、自己託送を行っている。ピークカットによる基本料金削減効果が大きく、グループ全体での電力コストの低減に寄与しているようだ。
このように、省エネ法対応や電力コスト削減という観点から、自家発電を保有する企業において、「自己託送制度」の活用が今後ますます盛んになると考えられる。自己託送の実現に当たっては、供給側(自家発電側)、需要家側双方において、30分単位で電力を見える化したり、制御したりすることが必要となるため、企業側でもEMS活用の動きが加速すると考えられる。

民生・家庭部門ではZEB/ZEHが省エネの切り札

民生・家庭部門では、照明のトップランナー基準を拡充することで、省エネ機器の導入促進を図る。従来では「蛍光灯器具及び電球形蛍光ランプ」及び「電球形LEDランプ」についてトップランナー基準が存在していたが、対象に白熱灯等を含めるなど、照明のトップランナー基準を新たに策定することで、民生・家庭部門においてエネルギー消費率が大きい照明分野の省エネ化をさらに促進させる構えである。

また同時に、住宅物・建築物の省エネ化を徹底する。2015年に、一定規模以上の非住宅建築物について省エネ基準への適合義務化を講じる建築物省エネ法が成立しており、今後は住宅物・建築物の省エネ化に一定の強制力が働く構造となる。具体的には、延床面積2,000m2の非住宅建築物(大規模オフィスビル等)の新築では、従来は届出義務のみ(著しく不十分な場合のみ、指示・命令等)であったが、今後は建築確認申請と連動する形で省エネ基準への適合義務化を遵守しているかどうかを確認されるようになる。こうした施策によって、大規模オフィスビルを中心に、省エネ化が進むものと考えられる。

新築住宅については、2020年までに、ハウスメーカー、工務店等の新築注文戸建の過半数をZEH化することが目標として掲げられた。今後、新築住宅においては、断熱性の高い躯体、気密性の高い天井・壁・窓等の採用、太陽光・太陽熱・地熱の活用と、エネルギーをためてかしこく使うための蓄電システムやHEMS(Home Energy Management System)の導入などが進められ、徐々にZEH比率が高まっていくだろう。

既築住宅については、2020年を目標に省エネリノベーション(窓ガラスの交換、窓の取替え、天井・床・等の断熱改修)が行われていく見通しである。既築住宅の省エネ化は、新築に比べて技術的・経済的にもハードルが高いが、新築住宅でのZEH化の取り組みと並行して、既築住宅においても徐々に省エネリノベーションが拡大するだろう。

次世代自動車への期待が高まる運輸部門

運輸部門では、現在24.0%に留まっている次世代自動車比率を、2030年に50%~70%にする目標を掲げている。内訳は、ハイブリッド自動車(HV):30%~40%、電気自動車(EV)・プラグイン・ハイブリッド自動車(PHV):20%~30%、クリーンディーゼル車:5%~10%、燃料電池自動車(FCV):3%程度、である。

ハイブリッド自動車(HV)以外の次世代自動車は、ガソリンとは異なる燃料で駆動する機構を有している。電気自動車の燃料は電気であり、燃料電池自動車の場合は水素である。(燃料電池自動車は、搭載された燃料電池において水素と酸素を化合させて電気を発生させ、その電気でモーターを駆動させて走行する。)そのため、従来のガソリンスタンド以外に、次世代車両向けのステーション(充電ステーション、水素ステーション)を整備する必要がある。

次世代車両の普及において、車両とステーションは「ニワトリとタマゴ」の関係に喩えられる。どちらも重要であり、車両、ステーションともども同時に普及していかなければ、大きな普及にはつながらない。そのため、政府は次世代車両向けの初期需要創出のための各種補助金(クリーンエネルギー自動車導入促進対策費補助金、エコカー減税など)に加えて、ステーション整備のために次世代自動車充電インフラ整備促進事業費補助金、水素供給設備整備事業費補助金を創設し、車両・ステーション双方の普及を後押ししている。

省エネルギーの進展に向けたNECの取り組み

以上で述べたように、エネルギー革新戦略では、産業部門、民生・家庭部門、運輸部門のそれぞれにおいて、2030年を目標に、徹底した省エネを図るものである。

産業部門では、拡大されるトップランナー基準への遵守のための製造効率向上、エネルギー消費の改善、全社的なピークカットが必要となる。今後は、製造効率向上のための設備稼動の効率化、グループ全体での効率的な電力消費のための自己託送制度の活用(埋蔵電力の有効活用)の機運が高まるだろう。

NECでは、米Space-Time Insight社と提携し、広域に分散する設備の状況をリアルタイムに可視化・分析するソリューションを提供。APAC地域で独占的に供給している。本ソリューションにより、グループ全体で管理する膨大な数の設備の稼働状況を分析・可視化し、その結果を運用管理に活用することで、設備の稼動効率向上や維持管理費の削減を行うことが可能になる。

また、製造業・流通業向けのエネルギーマネジメントソリューションも提供しており、エネルギーの利用状況を可視化し、PDCAサイクルを回すことにより、節電活動を支援している。本ソリューションは複数拠点間のエネルギーマネジメントにも活用可能であり、自己託送制度にも対応している。本ソリューションにより、高精度な発電予測、需要予測エンジンをベースに需給バランスを考慮した託送計画作成を行うことができ、余剰電力の更なる活用が実現する。また、蓄電池の活用により、拠点間のピークのズレを吸収し、自己託送の効果を最大化することも可能である。

太陽光発電システムやスマートメーター、蓄電池などのエネルギー関連設備の状況を地図上に表示。地域の電力状況を一覧できる[拡大する]拡大する図表-3 リアルタイム分析・可視化ソリューション(画面イメージ)

民生・家庭部門では、大規模オフィスビルの省エネ基準適合義務化、新築住宅のZEH比率の向上などに向けて、BEMS(Building Energy Management System)、HEMS、蓄電池の活用がさらに進むと考えられる。

NECは、これまでに培ったセンシング技術やビッグデータ解析技術を用いて、電力需要予測の高度化や異常検知技術の高度化を行ってきており、これらの実績とノウハウを活用したBEMSやHEMSを通じて、より一層の省エネ化に貢献しようとしている。

クラウド対応BEMS「Butics-SX」では、最先端のセンシング技術とビッグデータ解析技術(異種混合学習/QoWL)を活用した制御により、快適性と省エネの両立を可能としている。

図表-4 クラウド対応BEMS「Butics-SX」

また、クラウド型HEMSでは、スマートメーター情報サービス(Bルート)との連携やECHONET Lite対応により様々な機器と連携が可能なほか、気象予報と連動した蓄電システムの自動制御により、最適な充電を行い、家庭のピークカットに貢献している。

今後は、様々なデータから法則を見つけ出し、多様な分析技術で精度の高い電力需要見通しを立てて現場に適用することで、様々な省エネニーズに応えると共にコストダウンの実現を目指している。

図表-5 クラウド型HEMS

運輸部門では、次世代自動車の普及に向けて車両とステーション双方の普及が必要となるが、普及に向けた課題の1つはコストである。特にステーション運営については設備費(減価償却費)、人件費などの固定費負担が重たいため、投資回収には相応の時間を要する。

NECでは、次世代自動車のステーション事業向けに、クラウド型EV・PHV充電インフラサービスを提供している。クラウドを活用した個人認証・課金・遠隔メンテナンスが可能であり、ステーション事業の運営費削減に貢献できるだろう。

[拡大する]拡大する図表-6 クラウド型EV・PHV充電インフラ

※ ONEカードパス:1枚のカードで、すべての事業者のEV充電サービスを受けられる仕組み

エネルギー革新戦略を受け、今後も聖域なき省エネが図られていくと考えられるが、従来のアナログな手法では対応の限界を迎えつつあり、情報通信・ICTを活用した肌理細かい制御・管理によってエネルギー消費を一歩ずつ積み上げていく取り組みがますます重要となる。本分野においてNECの貢献はますます重要になるだろう。

(2016年3月16日)

著者プロフィール

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段野 孝一郎(Koichiro Danno)
株式会社日本総合研究所 総合研究部門 ディレクタ/プリンシパル
京都大学大学院工学研究科博士前期課程修了(工学修士)
技術戦略及びマーケティング戦略の観点に基づき、エネルギー(電力・ガス・再生可能エネルギー)、環境・CO₂削減、情報通信・ICT、スマートシティ、次世代自動車、水ビジネスなどの社会インフラ分野を対象に、経営戦略・事業戦略、新規事業開発に関するコンサルティングを実施している。

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