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エネルギー革新戦略が目指す新たな市場創造

第2回
エネルギー革新戦略によって誕生する新たなエネルギーシステム

2016年3月7日

エネルギー革新戦略が目指す新たなエネルギーシステム

前稿で述べた通り、日本再興戦略改訂2015で謳われている「未来への投資・生産性革命」の一翼を担うべく、資源・エネルギー政策を所管する資源エネルギー庁において「エネルギー革新戦略」が策定されている。この中では、1.徹底した省エネルギー化、2.再生可能エネルギーの導入拡大、③新たなエネルギーシステムの構築を行うことを掲げている(図表-1)。

第2回目となる本稿では「3.新たなエネルギーシステムの構築」に着目し、政策動向と今後のビジネスチャンスを考察したい。

[拡大する]拡大する図表-1 エネルギー革新戦略における主な検討課題

出所:資源エネルギー庁「エネルギー革新戦略の検討状況」(平成27年12月)を基に日本総研作成

ネガワット市場の創出

エネルギー革新戦略における「新たなエネルギーシステムの構築」においては、節電のインセンティブの抜本的向上、ネガワット取引市場の創出にむけたルール整備、バーチャル・パワー・プラントの技術実証などを行っていくとされている。

このうち、ネガワット取引市場においては、2015年11月26日に行われた第3回官民対話においても、安倍首相から、「節電のインセンティブを抜本的に高める。家庭の太陽光発電やIoTを活用し、節電した電力量を売買できる『ネガワット取引市場』を、2017年までに創設する。そのため、2016年度中に、事業者間の取引ルールを策定し、エネルギー機器を遠隔制御するための通信規格を整備する」との指示があったことから、今後は急ピッチで検討が進むものと考えられる。

ネガワットとは、節電等によって消費電力を削減した際に、本来の使用量と比べて削減された電力分を、発電量と同等に捉える考え方である。例えば需要家が節電によって14時~15時のピーク時間帯に1MWを節電したとすると、小売事業者は1MW分、調達量を削減することができ、発電事業者は1MW分、発電量を削減することが出来る。発電量を減らすことが長期に渡って見通すことが出来れば、稼働率が低いピーク用の石油火力などの発電容量を削減することができ、発電所への投資を合理化することも可能となるため、小売事業者や発電事業者にとってもメリットがある。このようなネガワットを創出するために、需要家に働きかけ、需要家の取り組みで節電を促す行動を「デマンドレスポンス(需要応答)」と呼ぶ。

従来では、需要家による節電が事前の取り決め通りになされる確実性が低いと考えられており、ネガワットはあくまでも理論上の考え方と捉えられてきた。しかし近年では、ICTの進展により、需要家側の機器を肌理細かく制御したり、需要家による節電の実行状況をリアルタイムでモニタリングし、節電の実行確実性が高い需要家から順番にネガワットを積み上げていき、複数需要家を束ねて所定のネガワットを創出する「デマンドレスポンス・アグリゲーター(ネガワット・アグリゲーター)」などの新たなビジネスモデルが登場しており、電力システム改革で先行する欧米ではネガワットの取引量が急拡大している。

ネガワット取引の類型

ネガワットを取引する事業者としては、大きく分けて小売事業者と、送配電事業者・系統運用事業者が存在する。

[拡大する]拡大する図表-2 ネガワット取引の類型

出所:日本総研作成

小売事業者は、自社で調達する電力の代替としてネガワットを活用するため、主としては卸電力取引市場(一般的には、前日市場及び1時間前市場)や、需要家との相対(直接)契約によってネガワットを調達し、供給力の一部として活用する。ネガワットの活用により、自社で保有しているピーク電源の稼動を抑えられたり、ピーク時の市場価格での調達(一般的には他の時間帯よりも高い価格で約定)を回避することが可能となる。前述のとおり安倍首相が言及した『ネガワット取引市場』とは、短期的には小売事業者がネガワットを調達できる市場を整備するというものである。

送配電事業者・系統運用事業者は、ネガワットを主にバランシング用途(系統全体の周波数調整、予備力調整)として活用する。通常、卸電力取引所による電力量の取引は、実際の電力流通の1時間前に締め切られる(これをゲート・クローズと呼ぶ)。但し実際には、天候の変化等によって、1時間前に取引を締め切ってから実際の電力流通が行われるまでの間に、需給バランスは細かく変動する。その需給バランス管理を担うのが送配電事業者や系統運用事業者であり、系統安定化のために必要な調整力をバランシング市場から調達する。日本では、送配電部門の法的分離がまだなされておらず、一般電気事業者の送配電部門が自社内で実施しているが、2018年~2020年に予定されている送配電部門の法的分離がなされた後は、バランシングメカニズムも外部化されていくものと考えられる。

実際にアメリカやフランスでは、バランシングのための調整力の1つとして、ネガワットがバランシング市場で取引されている。フランスでは、バランシング用途として活用可能な調整力を持つ小売事業者、発電事業者、ネガワット・アグリゲーターなどがBE(Balancing Entity)としてネガワット取引市場に自社の調整力を登録し、ネガワットの売買を行っている。

一般的に調整力としては、立ち上がりの早い一次調整力(Primary)、それに続く二次調整力(Secondary)、立ち上がりに時間を要する三次調整力(Tertiary)があり、デマンドレスポンスによって創出されるネガワットは、顧客との需要応答に要するリードタイムに一定の時間を要するため、通常は三次調整力や二次調整力として用いられることが一般的であった。しかし近年では、需要応答速度の速い蓄電池と連携したデマンドレスポンス(Fast DR)が徐々に普及しつつあり、蓄電池を活用して創出されるネガワットは、一次調整力として高い価格で取引される例も見られるようになった。

このように、ネガワット取引市場が拡大すると、需要応答性の高いネガワットの価値が向上し、その活用のためにICTや蓄電池技術がますます重要となるのである。

バーチャル・パワー・プラントの商用化

エネルギー革新戦略における「新たなエネルギーシステムの構築」において、もう1つの重要テーマに位置づけられている施策が、バーチャル・パワー・プラントの技術実証である。

バーチャル・パワー・プラントとは、言葉どおり「仮想発電所」を意味しており、従来のような大規模な発電所ではなく、需要家側の創エネ・蓄エネ・省エネリソース(太陽光、蓄電池、デマンドレスポンス等)を、IoTを活用して統合制御し、あたかも一つの発電所のように機能させるというものである。

図表-3 バーチャル・パワー・プラントの展開イメージ

出所:資源エネルギー庁

このために必要な要素技術の確立や、必要な政策措置を取るために、下記に示す技術実証が計画されている。

  1. 蓄電池の大規模群制御技術の実証
  2. 気象観測・予測データを活用した再エネ電源の 出力予測の精緻化
  3. 創エネ・蓄エネ・省エネリソースの統合制御のための通信規格の整備
  4. 需要家側設備からの逆潮流電力の計量方法の整理

既に予算要求にも反映されており、平成28年から平成32年までの5年間の事業を通じて、50MW以上の仮想発電所の制御技術の確立等を目指し、更なる再生可能エネルギー導入拡大を推進するために、平成28年度の新規予算として29.5億円が盛り込まれている。

バーチャル・パワー・プラントの要素技術を用いたビジネスモデルとしては、「蓄電池等のエネルギー設備を活用したビジネスモデル」、「高度制御型デマンドレスポンス」などが想定されている。後者の「高度制御型デマンドレスポンス」は、送配電事業者が要請する需要抑制量に対して、アグリゲーターは過不足のない需要抑制を確保できるよう、複数の需要家から需要抑制量を集めて整形することで、確度の高いネガワット取引を実現し、送配電事業者がネガワットを調整力に用いることを可能にする、というものである。

こうした要素技術の確立によって、日本においても小売事業者が活用するネガワット取引市場のみならず、送配電事業者が活用するネガワット取引市場も創出されていくものと考えられる。

新たなエネルギーシステムの構築に向けたNECの取り組み

以上のように、エネルギー革新戦略で目標に掲げられている新たなエネルギーシステムの構築に向けて、ネガワット取引市場の創設、バーチャル・パワー・プラントの技術確立およびビジネスモデルの創出が進められている。

このような新たなエネルギーシステムにおいては、30分単位で需要と供給を見える化・制御したり、分散する再生可能エネルギーや蓄電池などの負荷機器を肌理細かく制御したり、送配電事業者・系統運用事業者の指令に自動的に応答したりといったICT技術が必要になる。

NECでは、ICTとエネルギー技術の双方を持つ強みを活かしながら、長年に渡るICT関連事業で培った視覚化技術(リアルタイム分析・可視化ソリューション)、分析・予測技術(需要予測)、制御技術(需給管理・PV出力制御・蓄電池階層制御)をベースに、EMS(HEMS/BEMS、DR)、蓄電池(蓄電クラウド)、通信技術(ネットワーク、AMI等)を活用することで、見える化~制御まで一貫して統合された技術・ソリューションを提供している。これによってエネルギーの自律的制御を通じてエネルギーの地産地消を促進したり、エネルギー源の分散化および全体を通じた強調・安定管理を実現することが可能になる。発電事業者や送配電事業者にとっては、維持管理コストの削減、投資回収期間の短縮、需給管理・電力安定化等が可能になる。また需要家にとっても、電力コスト削減や生産効率化が可能になる。

新たなエネルギーシステムの構築に向けて、NECが果たすべき役割は大きく、今後のさらなる技術革新に期待したい。

(2016年3月7日)

著者プロフィール

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段野 孝一郎(Koichiro Danno)
株式会社日本総合研究所 総合研究部門 ディレクタ/プリンシパル
京都大学大学院工学研究科博士前期課程修了(工学修士)
技術戦略及びマーケティング戦略の観点に基づき、エネルギー(電力・ガス・再生可能エネルギー)、環境・CO₂削減、情報通信・ICT、スマートシティ、次世代自動車、水ビジネスなどの社会インフラ分野を対象に、経営戦略・事業戦略、新規事業開発に関するコンサルティングを実施している。

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