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Innovators 100 Series Vol.17 吉平 健治

システムの異常を自動検知する先進技術の開発者

2014年10月21日

Vol.17 CHAPTER1 システムの異常を自動検知する先進技術の開発者 吉平 健治NEC Laboratories America,Inc(北米研究所)Associate Director,Solutions Incubation:吉平 健治

センサから収集したデータを使って、コンピュータシステムや発電所、工場、ビルなど、システムのふるまいを理解し、システム自身が異常を自動検知できるようにする先進の分析エンジン「SIAT」。ユニークな分析エンジンの開発者である吉平 健治が、その仕組みや開発エピソード、安全・安心な社会インフラへの貢献、さらに仕事に対するモチベーションなどを語ります。

異常や故障を、システム自身が自動検知

―まず初めにSIATとは、どんな技術なのか。わかりやすく説明してください。

写真:吉平 健治 氏

吉平:SIAT(System Invariant Analysis Technology)とは、簡単に言うと「システムのふるまいを理解する」ことをコンセプトに、開発した分析エンジンです。

SIAT開発の原点は、いまから10年前に、NECの北米研究所に採用された3人のスタッフが立ち上げた自律コンピューティングに関する研究プロジェクトでした。

私たちが取り組んだ自律コンピューティングとはどういうモノか、もう少しわかりやすくお話ししましょう。たとえば人間は病気になったり、ケガをした時自らの力で修復したり、発熱などの異常を自分自身で感知します。こうした修復や異常検知、防御などをコンピュータ自身が自動的に行えるようにしたい、というのが研究の基礎テーマでした。

―システムのふるまいをどうやって理解するのか、 SIATの仕組みを教えてください。

吉平:システムのふるまいを理解するには、センサなどによって集めたデータの中に含まれる情報を見つけ出すことから始めます。わかりやすい例として、水道管で説明しますね。

水道管の入口と出口にセンサを設置して、中を流れる水の流速を図るとします。入口の流速が速ければ出口の流速も速くなり、入口の流速が遅くなれば出口の流速も遅くなりますよね。これが、不変関係(インバリアント)という情報です。

もし入口と出口の流速に大きな違いがあるとしたら、水道管のどこかに穴や亀裂などの、異常が考えられます。水の流れそのものを監視するのではなく、入口と出口にあるデータの関係性に着目したのが、従来のやり方と大きく異なるSIATの特長です。センサの値そのものという情報ではなく、センサ間の関係性という情報を利用するのです。

SIATでは、センシングによって集めたシステムの通常時におけるふるまいの2つのデータの関係性を、まずモデル化します。そしてリアルタイムで集めたセンサデータの数値と比較し、その違いから異常を検知します。集めるセンサデータやモデル化した関係性の数が多くなるほど、システム全体としてのふるまいが見えてきます。

SIATは、システム全体にあるたくさんの関係性を俯瞰的に捉え、取りこぼしがないように監視できるのが最大のポイントで、専門家でも見落とすようなわずかな異常も検知することができます。

発電所、工場、道路、橋などの、安全を監視

―SIATは、どんなシステムで、どのように役立つのですか?

吉平:SIATがふるまいを理解する対象というのは、人間がデザインして、作り上げたシステムであれば何でも構いません。データセンターや通信ネットワークシステムなどのコンピュータシステムをはじめ、発電システム、工場や化学プラント、ビル、橋、航空機、船などの構造物も対象で、広範囲におよびます。

こうしたシステムを、温度や圧力、流量、振動などさまざまなセンシング技術を使って計測し、そのデータを読み取ることで、通常時のふるまいや異常がわかります。SIATにとって、システムという相手を理解するための「ことば」が、データなのです。

図版:NECサイト ビッグデータソリューション オペレーション高度化/最適化の図

NECグループは現在、社会ソリューション事業に注力しています。通信インフラをはじめ、水・電気などのライフラインを障害から守る監視システムとしても、SIATは役立ちます。

また地震が発生した際にはビルや高速道路の倒壊、橋・トンネルなどの崩壊による2次的な被害が起こるかも知れません。こうした被害を最小化するために、人間の眼では気づかない異常や脆弱な部分をSIATで検知して事前に補修するなど、人々が安心・安全に暮らせる社会づくりにSIATが貢献できる分野は多いと思いますね。

―SIAT開発において、吉平さんはどんな役割を果たしたのでしょうか。

吉平:初めの方でも触れましたが、システムの運用に役立てる分析エンジンの研究は、北米研究所の3人のスタッフによって2004年にスタートしました。一人は、分析エンジンとしてSIATそのものの考え方やフレームワークの発案、根本的なアルゴリズムを開発しました。もう一人は統計学や機械学習の専門家で数式的な検証を行い、私はデータを実際に取り込み分析エンジンとして動かすソフトウェアの基本設計と機能評価が役目でした。

SIATの発想が生まれた時のことは、いまでも鮮明に覚えています。会議ルームのホワイトボードにあれこれ書き込みながら、3人で知恵を絞り合い、考えに考え抜いていた時、これなら行けるんじゃないかというSIATの発想がひらめいたのです。

―SIAT誕生に関するエピソードがあったら教えてください。

写真:吉平 健治 氏

吉平:分析エンジンの開発は、初めからうまく行った訳ではありません。私たちが研究所で開発するのは要素技術で、最終的なゴールはNECとしての製品化や実用化です。

プロジェクトがスタートして数か月後、3人で考え作り上げた最初の分析エンジンの試作品を、私が日本へ持ち込んで、NECのソフトウェア製品を担当する事業部に提案したことがありました。

アプローチはSIATと似ているのですが、根本的な前提や発想が異なるその技術に対する事業部からの評価は惨憺たるモノで、北米に戻った私は2人の研究スタッフに「これでは、使いモノにならない」と告げました。

その後、3人で考え抜いて開発したのがSIATです。SIATの試作品を抱えて、再びNECの同じ事業部の担当の方に提案しに行ったところ、今度は強い興味と関心を示してくれました。それからはアドバイスや実システムを使った評価など、事業部のみなさんの後押しや協力があって、実用化の道が拓かれました。

SIATという要素技術はその後、コンピュータシステムにおいて通常では見つけにくいサイレント障害などを検知するNECの統合管理ソフトウェア「WebSAM(ウェブサム) Invariant Analyzer」として初めて製品化されました。これが世の中への最初のお披露目になります。

データが頼り。でも、その意味は考えない

―SIATという技術は、とてもユニークだとお聞きしましたが、どんな点ですか。

吉平:SIATは、水圧や流速、温度といった「センサデータの意味を考えない」という点ですね。データの中にある法則性だけから、平常時にないふるまいを異常として検知する発想やアプローチがとてもユニークで、開発当初は研究所内でも懐疑的な意見が多かったほどです。

データの意味を知らなくても、データをSIATに取り組むだけで、そのシステムはどうふるまうべきかが判断できるのが、SIATです。クルマの設計者ではない私にクルマの専門知識はないですが、クルマに設置したセンサデータの法則性を読み取ることによって、クルマはこう動くべきだということが、SIATから理解できるのです。

―SIATという先端技術を、なぜNECは実現できたのでしょうか。

写真:吉平 健治 氏

吉平:その答えは、大きく2つあると思います。NECはこれまで、国内外を問わず幅広い業種のお客さまにICTシステムやネットワーク、デバイスなど、さまざまな製品や技術を提供してきました。そうした製品やソリューション提供を通じてお客さまの業務を深く知ることで、新たにどんな価値をお客さまに提供したらいいのか、俯瞰的に考えられる強みがNECにはあります。

また、分析エンジンを活用してお客さまの価値を高めるためには、まずデータを収集・処理するための仕組みが必要です。NECは、M2M技術やセンシング技術などの多彩なプラットフォームを自社で持っていることが、2つ目の強みです。

NECには、SIATをはじめ世界をリードする先進の分析エンジンがいくつもありますが、プラットフォームやインフラを提供できる総合力があるからこそ、実用化や製品化によってお客さまに新たな価値を提供できるのです。

もうひとつ加えるとすれば、NECという会社は新しい技術開発に対する関心や熱意が高く、しかも開発された技術を公正に評価してくれる風土があるからだと思いますね。一度や二度失敗しても、次に来る技術が革新的で魅力的、それがマーケットに直結していれば、その本質をしっかりとそして鋭い目で、新しい技術提案を検討してくれるのです。

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