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Innovators 100 Series Vol.09 鳥海 強

宇宙開発に挑み続けて20年の「衛星屋」

2014年3月19日

Vol.09 CHAPTER2 宇宙開発に挑み続けて20年の「衛星屋」鳥海 強NEC 宇宙システム事業部 宇宙システム部 シニアチーフエンジニア: 鳥海 強

―「ひさき」の開発で特に難しかったのは、どんな点ですか。

写真:鳥海 強 氏

鳥海:それは2つあります。ひとつは、宇宙の中の小さな点のような惑星を正確に狙う技術です。2つ目は点のような惑星を確実に捉えながら、真空の宇宙で衛星を正しい位置や姿勢のまま止め続ける技術です。この2つを両立しなければ、ミッションである惑星の長時間観測ができないからです。

私たちはポインティングと言うのですが、そこには想像を絶する精度が要求されます。今回要求されたポインティング精度は5秒角ですが、通常の言い方に直すと0.00139度です。そう言ってもイメージしにくいでしょうから、たとえ話で説明しましょうか。直径12cmのDVDを山手線の線路上に敷き詰め、その中から目標となるたった1枚のDVDを山手線の中心から狙う精度。これが5秒角です。JAXA様とともにNECは、最先端技術を駆使してこの困難な精度を実現しました。

―NECの衛星開発という観点からは、どんな成果がありましたか。

鳥海
:JAXA様の要望を無事にクリアしたという安心感に加え、これからさまざまな目的に利用できる柔軟な衛星開発の実績が築けたということが、NECにとって大きな成果ですね。短期間でしかも低コストで開発できる標準衛星バスの実現で、宇宙へのハードルがグンと低くなったと言えます。 今回の「ひさき」のプロジェクトを通して得た技術やノウハウは、これからの衛星開発の共通ベースとして役立っていくと思います。NECが推進したい海外への小型衛星拡販にも大きな期待が生まれます。今回は小さなロケットと小さな衛星による初めての試みでしたが、日本の宇宙開発事業にとっては大きな1歩だと自信を深めています。

―「ひさき」衛星開発では、どんな苦労がありましたか。

鳥海
:「ひさき」に限らず衛星開発は、細心の注意を払って作業を進めます。修理が効かない宇宙空間で壊れたり、故障しないように設計から開発、製造、組み立てのすべての工程で、これでもかという審査や試験を繰り返します。部品や装置もほこりが付かないようクリーンルーム内でつくりますし、組み立てた衛星も振動ができるだけないように大事に射場まで運びます。こうした念入りな作業のすべては、衛星が壊れないようにするためです。
私たち衛星開発者の思いとしては、大事につくり上げた衛星は打ち上げの直前にロケットに乗せて、すぐに発射して欲しいというのが本音です。ところが、今回のイプシロンは初号機ということで、射場で初めてロケットを組み立てることになりました。初めて組み立てたロケットは振動テストを行わなくてはなりません。組み立てた衛星の実機を乗せて、振動テストを行うことになったのです。スケジュールの関係から、プロマネとして苦渋の決断を下し、夜間行われた振動テストにも立ち会いました。プロマネとしては、JAXA様やロケッ
ト制作パートナーとの間における仕様やスケジュール調整も大事な仕事です。今回のプロジェクトではロケットも衛星も初めての試みだったので、JAXA様を中心としてロケットと衛星の開発チームが一体となった成果だと思っています。衛星の開発においては、厳しい開発期間の中でさまざまな現場のスタッフたちの妥協しない頑張りが、初めての試みを成功に導いてくれたと心から感謝しています。

気が休まるのは、ミッションが終了した時

―プロジェクトマネージャーとしては、どんな苦労がありましたか。

写真:鳥海 強 氏

鳥海:人工衛星をつくるのはエンジニアとして楽しいのですが、プロジェクトマネージャーという仕事は、それ以上に苦しいというのが正直な気持ちですね。衛星は打ち上げてしまったら、手直しすることはできません。ですから打ち上げ前には、試験に漏れはないか、見落としや、やり残しはないか、毎日不安な思いでいっぱいです。
打ち上げ後も、衛星から送られてきた電波を地上で捉えるまで、気を抜くことはできません。電波が届くということは、衛星のアンテナが地球の方向に向いている、さらに太陽電池のパドルが開いて太陽の方を向き、電気がきちんと発生しているなど、衛星が正常に動いていることが確認できるわけです。軌道上に乗る予定時刻になって衛星から第1信号が届くまでは、ホントに胃が痛くなります。地上のモニター上に衛星から届いた数字データが表示された瞬間、部屋中に大きな歓声や拍手が沸き起こります。
打ち上げが成功した日は、スタッフとともに祝杯を上げたりしますが、プロマネの仕事はその日で終わるわけではありません。ミッションが終了する日まで、ずっと気の抜けない日々が続くのです。

―衛星開発における技術者としての、鳥海さんの歩みを教えてください。

超高速インターネット衛星「きずな」

鳥海:私が初めて衛星開発に関わったのが、1994年に打ち上げられた日本初の大型衛星「きく6号」でした。その後、無人の人工衛星2機が初めてくっついたり離れたりするランデブー実験を行う「きく7号」の開発を手がけました。このプロジェクトでは、宇宙ロボットを地上から遠隔操作でコントロールするといった実験も行いました。
そして2008年、ルータを乗せた初の超高速インターネット衛星「きずな」では、システムマネージャーとして開発を担当しました。「きずな」は、へき地や離島などにおけるインターネット利用や、災害時における映像配信などを目的に開発されました。2011年3月11日に起こった東日本大震災の時は、現地の災害本部と東京消防庁の間でリアルな映像によるハイビジョン会議、IP電話、無線LANなどによる支援に役立ちました。
そして、今回の「ひさき」の開発プロジェクトではプロジェクトマネージャーとして関わっています。初めて担当した「きく6号」から数えると、20年以上にわたって衛星開発に携わっています。

可能性が無限に拡がる宇宙に、ぜひ挑戦を

―衛星開発におけるNECの今後の展望を教えてください。

写真:鳥海 強 氏

鳥海:地球観測などの分野で利用が期待される標準衛星NEXTERを、海外を中心に広く拡販することがNECとして大きな目的です。いままでは衛星の開発そのものが目的でしたが、これからは実現したいシステムやソリューションの一部として人工衛星を活用するという時代に変わってきます。さまざまな企業や世界の国々では、これから人工衛星を使って実現したいさまざまな目的があります。そこにNECのビジネスとして、技術やノウハウを提供する活躍の場があると思っています。人工衛星をきっかけとして、その先にある社会ソリューションなどの実現をグローバルにサポートしていくことが、総合力を誇るICTベンダーとして今後のNECの重要な役割だと思います。さまざまな社会ソリューションを実現するためにも、低コストで短期間でつくれる衛星が求められているのです。

―鳥海さんの衛星開発における、やりがいとは何ですか。

鳥海
:自分たちがつくったモノを誰かが使ってくれていることにエンジニアとしての喜びを感じます。ただ、衛星は宇宙のはるか彼方にあるので、クルマやパソコンなどと違ってみんなが使っている様子や、実際に衛星が動いているシーンを直接目のあたりにできないことに、開発者としてちょっぴり寂しい思いもします(笑)。私の思いとしては、もっと大勢に人が身近に感じたり、もっと身近に使える人工衛星をこれからもつくり続けたいと思っています。

―これから衛星開発を目指す若い世代に、アドバイスをお願いします。

鳥海
:宇宙開発の歩みは、人類の長い歴史から見れば、ほんの短い期間です。宇宙事業で約60年間、つくり上げた衛星も約70機におよぶNECですが、人類の歴史としてはまだまだです。宇宙の謎の解明もほんのわずかですし、宇宙はいまでも謎がいっぱいです。宇宙開発に対する道筋も無限にありますし、その可能性もまさに星の数ほどあります。私たちが常識だと思っていることが、宇宙で覆されることもたくさんあります。そうした驚きに出会うことも、宇宙開発の楽しさのひとつです。
また、地球は資源が限られているため、これから私たち人類は宇宙の資源に目を向けることも大切になってきます。若い人たちには、柔軟な発想と自由な夢を持って、アイデアの宝庫である宇宙にチャレンジしていただきたいですね。

衛星の実物大模型の隣に立つ鳥海の写真府中事業場ショールームにて

(2014年3月19日)

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