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Innovators 100 Series Vol.18 工藤 耕治

蓄電池を用いたエネルギーマネジメントの開拓者

2014年12月16日

Vol.18 CHAPTER1 蓄電池を用いたエネルギーマネジメントの開拓者 工藤 耕治NEC スマートエネルギー研究所 主任研究員 工学博士:工藤 耕治

「CEATEC AWARD 2014」で経済産業大臣賞を受賞。街中に分散したさまざまな蓄電池をICTを使って束ね、巨大な仮想大容量蓄電池として、タイムリーかつ安定した充放電を実現する世界初の技術を生み出したプロジェクトリーダー工藤 耕治。半導体研究者から転身した理由、知識も経験もない技術に挑む目的、プロジェクト推進を支えた思いなどを、熱く語ります。

蓄電池を束ねて、街の中に仮想大容量蓄電池を

―世界初の「需要家側の分散蓄電池を用いたリアルタイム・デマンドレスポンス技術」についてわかりやすく教えてください。

写真:工藤 耕治 氏

工藤:われわれの技術は、街に分散した蓄電池をICTで束ね、クラウドを通じてひとつの巨大な蓄電池としてコントロールすることで、社会全体の電力需給調整を可能とする技術です。家庭やビル、商業施設などに設置されている蓄電池や電気自動車の蓄電池など、社会にはさまざまな蓄電池が増えていますが、これらをまとめて、社会全体としてひとつの大きな蓄電池ととらえ、有効活用します。“電力”には、利用するとき、需要と供給が常に一致していなければならないという原則があります。そのため、社会全体の電力需給状態をリアルタイムに把握する必要があります。またそれにあわせて、各蓄電池の状態に応じた指令を出す必要があります。これらの状態を把握し、リアルタイムに制御を行うことで、電力会社の電力システム網のきめ細かい需給調整に貢献できる技術です。

―発想としては、1台1台の性能は低い小さなPCなどを束ねて、仮想的な大規模コンピュータとして機能させるグリッドコンピューティングに似ていると言えるかもしれませんね。

工藤:そうですね。最近では、太陽光発電など再生可能エネルギーが特に注目されています。自然の力を有効利用できる一方で、それらは天候などにより、つくり出す電力量が変動するため、導入量が大きくなると、電力の需給調整がより難しくなると考えられています。
発電所には2つの重要な役目がありますが、1つ目は電気をつくること、2つ目は、電気の品質を維持しながら継続的に安定して需要家へ送り届けることです。後者の役目のために、発電所は常に電力の需給バランス調整を行っています。われわれの技術は、不安定な再生可能エネルギーの導入に対して、発電所の電力需給バランス調整能力の補強ができる有望な技術と言えます。これは結果的に、蓄電池ユーザの便益をも向上させる技術になります。

今回の「分散蓄電池を用いたリアルタイム・デマンドレスポンス技術」は、小さな蓄電池を束ねて大容量蓄電池として利用できるだけでなく、需給バランス調整に用いることで電力の継続的かつ高品質な安定供給に貢献するという、2つの価値を両立した技術なのです。

図版:多数の小さな蓄電池をICTで束ね、制御し、仮想的な大容量蓄電池として利用する

―この新技術開発の背景にある目的や狙いは、何ですか。

工藤:ひと言でいうなら、再生可能エネルギーと共存できる社会への貢献です。これまでもNECは車載用蓄電池や家庭用・ビル用蓄電池の開発・提供などにより、エネルギーの新しい利用に力を入れてきました。ですが従来、蓄電池は、電力使用のピークカットや夜間に貯めた電力の日中利用、さらに万一の停電時のバックアップ電源としての利用など、ユーザ自身の利便性向上のために自分たちで貯めた電力を自分たちで消費すること(自家消費)が主な目的でした。

私たちの研究の最大の狙いは、そうした従来の蓄電池の価値を大きく変えて、社会価値にまで高めることでした。多数の小さな蓄電池を束ねて仮想的に大きな蓄電池を構成し、大容量かつ高品質な電力供給を可能にすれば、電力の安定供給に役立てる働きができます。

特に、タイムリーかつ安定した充放電をリアルタイムに実現することは重要です。太陽光発電、風力発電など、天候により発電量が大きく変動する再生可能エネルギー電源に対して、電力の安定供給を可能とする新しい手段として力を発揮します。蓄電池の社会価値を高めることで、世の中にとっても、蓄電池ユーザにとってもメリットが生まれるシステムを実現できれば、再生可能エネルギーの普及拡大につながると考えたのです。

膨大な数の需要家の蓄電池を、リアルタイムに同期制御

―こうした技術がこれまで実現できなかった、理由について教えてください。

写真:工藤 耕治 氏

工藤:1つは、膨大な数の需要家側の蓄電池を束ねて、情報を処理し通信の遅延を起こすことなく充放電タイミングを同期させながらリアルタイムにコントロールする難しさがあります。電力会社が運用する大型蓄電池でも、こうした多数台制御は難しいと言われてきました。

もう1つの難しさは、さまざまな蓄電池が持つ状態の“バラツキ”の克服です。蓄電池は、ユーザ毎に使い方、電池の蓄電状態、充放電出力など、それぞれに違いがあるからです。

各蓄電池を集中管理して、こうした多くの異なる状態を考慮し、全体のバランスを取りながら、タイムリーに電力を最適配分しつつ、充放電タイミングを完全に同期させ、制御することは、実に難しいことなのです。ですから従来は、こうした仕組みを実現するという発想そのものがなかったように思います。

―不可能を可能にした、最大の技術的ポイントとは何ですか。

工藤:「仮想統合制御ソフトウェア」と「階層協調制御システム」。難しい言葉ですが、この2つが今回の「分散蓄電池を用いたリアルタイム・デマンドレスポンス」を実現した中核技術です。

図版

「仮想統合制御ソフトウェア」はNECが独自開発した複数の制御アルゴリズムを組み込んだもので、クラウド上のシステムに搭載され、インターネットを経由して各蓄電池の状態情報を収集するとともに、各蓄電池の充放電を最適に制御する頭脳としての働きをします。
「階層協調制御システム」は、クラウド側からの、蓄電池に対するリモート制御と、蓄電池側での充放電のローカル制御という、2階層の制御システムで構成されています。
クラウド側では、各蓄電池の蓄電状態や出力等のバラツキを把握し、蓄電池群を協調させながら、全体最適な充放電を各蓄電池に割り当てます。一方、蓄電池側はクラウドからの情報をもとに電力システム網の周波数等の情報を用いて、割り当てられた充放電を秒単位で制御します。

この2つの独自技術によって、全体が最適化された仮想的な大容量蓄電池による、継続的でリアルタイムな充放電が初めて実現できるようになりました。

写真:工藤 耕治 氏

―ほかにも、技術的な特長があったら教えてください。

工藤:他の大きな特長としては、クラウド側と蓄電池側における通信間隔を、10数分と長くできるようにしたのがポイントです。通信間隔が長ければその間に大量のデータ処理が行えるため、より多くの蓄電池制御が行えます。

また、一時的な通信障害が起きても制御の継続性が維持できます。どんなにすぐれた制御システムでも、通信障害でシステムがストップしてしまえば電力基盤としての価値は失われてしまいます。この新技術はリアルタイムで、しかも通信障害にも強い、高信頼な電力のデマンドレスポンスを可能にするのです。

知識や経験のない、未知の分野への挑戦

―「分散蓄電池を用いたリアルタイム・デマンドレスポンス技術」開発で、工藤さんが果たした役割は何ですか。

写真:工藤 耕治 氏

工藤:今回のプロジェクトにおける私の役割は、ひとつの技術の追求というより「分散蓄電池を用いたリアルタイム・デマンドレスポンス技術」に必要な技術全般をマネジメントしたり、社内事業部との折衝や外部研究機関との連携など、トータルな研究マネジメントが主でした。

私は、もともと“化合物半導体光デバイス”の研究者でNECに入社以来、光通信用の光源として半導体レーザなどの光集積素子の研究開発をずっと行ってきました。そんな私に2006年、大きな転機が訪れます。

―半導体レーザの専門家であった工藤さんが、転身した理由を教えてください。

工藤:2006年にNECで、有志メンバーによる新たなプロジェクトが立ち上がったのです。そのプロジェクトの目的は、今後の社会のグローバルトレンドを先読みしながら、将来社会で必要とされるNECとして取り組むべき技術を明らかにするというものでした。

そこでは、さまざまな専門領域の研究者が集まり、多彩なテーマにもとづいた検討や提案が行われます。そのプロジェクトで私たちのチームが選択したのが、今回の技術の原点とも言える「エネルギーコンシャスC&C」というテーマでした。

将来の社会においてエネルギーマネジメントが必要不可欠だと考えた私は、光集積素子の研究者という立場を離れて、このプロジェクトを本格的に立ち上げるべく、名乗りをあげました。スタート時のメンバーは、私を含め、たったの3人でした。

―「分散蓄電池を用いたリアルタイム・デマンドレスポンス技術」実現にいたる、研究の経緯を教えてください。

写真:工藤 耕治 氏

工藤:当初考えていたのは、「エネルギーの情報化」というテーマでしたが、私には電力についての知識も経験もないため、まさにゼロスタートというのが実態でした。

そこで、電力システムに関して権威のある大学の先生の研究室にNEC研究員を派遣する共同研究の道筋をつけたり、一方でNEC社内のさまざまな事業部に相談に行ったり、試行錯誤を繰り返しながらプロジェクトを進めてきました。

そして、“電力システムの中で、多くの蓄電池を仮想的に束ねて充放電を行う”という発想が生まれた2009年には、NEDO(New Energy and Industrial Technology Development Organization:独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が推進する米国ニューメキシコ州を実証の場とする国家プロジェクトに私たちの提案も採択されました。そうした実績も加わり、次第に私たちの研究に賛同してくれる人や研究資金を提供してくれる事業部も増え始め、開発を継続することができました。

さらに、2011年には東日本大震災が起こり、節電をきっかけにして電力のデマンドレスポンスといった分野にも世の中の注目が集まってきました。研究を進める中では紆余曲折がありましたが、2012年には、重要な研究者との出会いがありました。新たな組織では、衛星向けの機器制御や電池のエキスパートたちがいて、彼らとディスカッションしたり、知恵を借りることで「階層協調制御システム」という中核技術の骨子が固まったのです。

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