ページの先頭です。
ここから本文です。
サイト内の現在位置を表示しています。
  1. ホーム
  2. NEC Information Square
  3. Innovators 100 Series
  4. Vol.15 バイオプラスチック開発のリーダー 位地 正年
ここから本文です。

Innovators 100 Series Vol.15 位地 正年

バイオプラスチック開発のリーダー

2014年9月16日

Vol.15 CHAPTER2 バイオプラスチック開発のリーダー 位地 正年NEC スマートエネルギー研究所 主席研究員 工学博士:位地(いぢ) 正年

―今回開発した画期的な難燃性ポリ乳酸複合材について、教えてください。

写真:位地 正年 氏

位地:NECが開発しているバイオプラスチックの総称を「NeCycle®(ニューサイクル)」と呼びますが、今回新開発した難燃性ポリ乳酸複合材がその代表例です。特長は大きく2つあります。

ひとつは、難燃性などの高い機能が必要とされる耐久製品用のバイオプラスチックとして、世界最高のレベルである植物成分率(有機成分中75%)を実現したことです。NECでは、ポリ乳酸の弱点である難燃性や耐久性の改良に、他社のような特性改良のための石油系成分を大量に配合する処方ではなく(他社例:植物成分率30%程度)、特有な非石油系の添加剤を利用して難燃性や耐久性を高める独自技術を開発することで、植物成分率の大幅なアップに成功しました。

もうひとつの大きな特長はこれまでのバイオプラスチックにはなかった付加価値となるさまざまな機能性(耐薬品性、耐光性、傷防止、抗菌性など)の創出です。

今回開発したポリ乳酸複合材は、土の成分で安全性が高く、高温で吸熱作用のある水酸化アルミニウムを難燃剤として採用し、さらに他の特有な添加剤を併用するNEC独自の配合技術をもとにして生まれたバイオプラスチックです。

写真

ポリ乳酸用として、どこの材料メーカも使用していなかった水酸化アルミニウムを難燃剤として着目し利用した結果、樹脂の成形性の確保などには相当苦労しましたが、ポリ乳酸複合材に難燃性以外にも大きな特長をもたせることができました。

水酸化アルミニウム自体は薬品や光を通さず、膨張・収縮性が小さく、しかも硬い素材です。これと他の特有な添加剤も加え、配合調整することによって創られたこのポリ乳酸複合材は、従来のバイオプラスチックにない高度な機能性を発揮します。

ガソリンやオイル、強アルカリ洗剤などが触れても劣化や変色が起こりにくい耐薬品性、膨張や収縮などの変形を起こしにくい寸法安定性、20年以上にわたり日差しが当たっても変色しにくい耐光性、傷防止塗装が不要なほどの高硬度、さらに衛生状態を守れる抗菌性など、数々の付加価値が生まれました。

―難燃性ポリ乳酸複合材と石油系プラスチックを比較した時の違いは何ですか。

位地:私たちが追求したのは、石油系プラスチックや他社のバイオプラスチックにはない新たな差異化ポイントでした。今回開発した難燃性ポリ乳酸複合材は、難燃性バイオプラスチックとしての最高の植物成分率(CO2削減率)に加え、耐薬品性や耐光性、表面硬度、抗菌性などにおいて、従来の電子機器用の石油系プラスチックを凌ぐ特性を発揮しています。

―今回の難燃性ポリ乳酸複合材開発の経緯や苦労を、教えてください。

写真

位地:今回の難燃性ポリ乳酸複合材は、2007年から行っていた花王株式会社(以下花王)との共同開発によって生まれました。本材料の中核技術である高度な難燃化技術をもつNECと、ポリ乳酸を早く固まらせる成形性改良技術をもつ花王が、その強みを併せることで、この高付加価値なバイオプラスチックが生まれたのです。

それぞれが、他社にない強い技術を持ち寄ることで、早期な製品化を狙ったのですが、実際はさまざまな技術上の課題が生じ、お互いに知恵を絞って課題をひとつひとつ解決していくという、まさに総力戦でした。
何と言ってもいちばん頑張ったのは、実験を繰り返して課題を突破した両社の研究チームのメンバーたちです。予想以上に時間がかかってしまいましたが、最終的には従来にないすぐれた特性をもつ材料を仕上げることができました。

医療や交通など多彩な分野で活用が期待。

―開発した難燃性ポリ乳酸複合材は、現在どんな分野で活用されているのですか。

写真

位地:本材料はこれまでにパソコンのフロントパネル、プロジェクタのフレーム、店舗のPOSシステムなど、NEC製品の6機種に採用されています。さらに2014年4月には、厳しい屋外設置環境での耐久性やガソリンなどの耐薬品性が要求される、ガソリン給油シリテムのPOSにもバイオプラスチックとして初めて採用されました。

NECでは、2017年度末までに全製品群にバイオプラスチックの適用を図っていく予定ですが、電子機器メーカでは世界で例のないプランです。また、このような品質に厳しいNEC製品への適用をアピールして、他社での利用も拡大していく予定です。

―今後、難燃性ポリ乳酸複合材の活用が期待されるのは、どんな分野ですか。

位地:さまざまな耐久性や抗菌性という利点を活かし、これまでの電子機器に加えて交通機関の券売機や金融機関のATM、医療用機器、各種産業用機器など、社会インフラ関係の機器や、他の耐久製品分野への活用が期待できます。

私たちが開発したエコ材料技術を世界に拡げることでグリーンICTによる便利で持続的な社会づくりや地球環境保全などに貢献できればと願っています。

―NECが進めているもうひとつの研究テーマである、セルロース系バイオプラスチックの取り組みについて、教えてください。

写真

位地:セルロース系バイオプラスチックの研究では、2010年に、カシューナッツの殻に含まれる油状成分をセルロースと結合することで、強度や耐水性、耐熱性といった、耐久製品用としての主要な特性をクリアしました。

その後、実用化に向け、製造エネルギー(コスト)の削減に取り組み、2014年5月には製造時の有機溶媒の使用量を90%低減することで、製造エネルギー(製造時のCO2発生量)を約1/10にする新しい製造技術の開発(実験室規模)に成功しました。今後は、実用化技術の開発と量産化という最終目標に向かって、さらに研究を進めていきます。

真の環境調和型プラスチックを目指して。

―バイオプラスチック開発における、NECの今後の展望をお聞かせください。

位地:難燃性ポリ乳酸複合材については、材料メーカである花王と一緒に、一層の耐久性の向上や利便性の強化を図り、電子機器だけでなく、社会インフラ関係や他の分野の機器に活用していけるようにしたいです。生産規模が拡大すればコストダウンにもつながり、それがまた活用領域を広げるという好循環を築いていけるものと考えます。

セルロース系のバイオプラスチックについては、実用化技術の開発を進め、適切な材料メーカと提携して、早く量産化を実現したいです。

―バイオプラスチック開発において、位地さんの研究者としての思いやこだわりは何ですか。

位地:材料メーカでは通常、材料の機能性を重視しながら環境対策を進めていきます。つまり実用化のリスクを避けながら材料開発を進めるので、高度な環境調和性を実現できる材料はなかなか生まれません。

そこで材料メーカにない視点として、高い環境調和性と機能性の同時実現を狙ってきたことが、バイオプラスチックを含めたこれまでの環境調和型プラスチックの研究でのこだわりです。

リスクはもちろん高いですが、材料メーカでないNECだからこそ挑戦できる研究テーマであり、真の環境調和型プラスチックとは何かを世界に示し、このブレークスルーとなる技術を自ら開発して先導していくことに意義を感じています。

―位地さんの仕事のやりがい、オフタイムの過ごし方などを教えてください。

位地:仕事においては、世の中に役立つ環境技術の研究開発に取り組んでいることに大きなやりがいを感じます。また、ひとりの研究者という立場を忘れずに、メンバーたちと議論してアイデアを出し、課題をクリアしていくこともやりがいですね。

若い研究者に伝えたいのは、専門の勉強や文献調査はもちろん重要ですが、その分野での権威者の言うことや常識に捉われていると大きな発見はできないので、自由な発想で研究を進めて欲しいということです。

オフタイムの過ごし方は、読書が多いですね。冒険、推理、歴史小説など、ジャンルを問わずいろいろ読みます。それから樹木や土に触れたり、空の雲を眺めたり自然に接しているのも好きです。子供の頃から好きな自然鑑賞が、バイオプラスチック研究の原点になっているのかも知れません。

写真:実験室で現在の研究メンバーと実験室で現在の研究メンバーと

(2014年9月16日)

インタビューへのご意見を聞かせてください。


このインタビューはいかがでしたか?


NEC Information Squareやこちらのインタビューに関する感想を寄せてください。


  • ここで書き込まれた内容に関しましては、返信は差し上げておりません。
  • いただいたコメントはプロモーション等で活用させていただく場合がありますので、あらかじめご了承願います。
ページ共通メニューここまで。

ページの先頭へ戻る