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Innovators 100 Series Vol.15 位地 正年

バイオプラスチック開発のリーダー

2014年9月16日

Vol.15 CHAPTER1 バイオプラスチック開発のリーダー 位地 正年NEC スマートエネルギー研究所 主席研究員 工学博士:位地(いぢ) 正年

枯渇資源である石油を使わない新たなプラスチックの開発。プロジェクトリーダーとしての仕事や責任、新材料開発における数々の課題をクリアして生まれた新しい複合材の驚くべき特長、さらに次への挑戦など、植物を原料とした安全・安心なバイオプラスチックの開発に挑む位地 正年が、日頃の思いを語ります。

プラスチックの原料は、石油から植物へ。

―初めにバイオプラスチックとは何か、わかりやすく教えてください。

写真:位地 正年 氏

位地:プラスチックは、ご存じのように日用品やクルマ、家電品など我々の生活の中で幅広く利用されています。加熱すると溶けて、冷やすと固まるという成形のしやすさから、さまざまな商品や製品に使われていますが、多くのプラスチックは枯渇する石油を原料としています。

その一方で、トウモロコシやサトウキビなどの植物資源を使って作られるのが、バイオプラスチックです。現在では、これらの植物からのデンプンを原料としたポリ乳酸やバイオポリエチレン、さらにこれらに各種の添加剤を加えた複合材がバイオプラスチックとして作られています。

―バイオプラスチックの特長や魅力は、何でしょうか。

位地:バイオプラスチックの第1の特長は、枯渇資源である石油を使わず、再生が可能な植物を資源として活用する点にあります。第2の特長は、地球温暖化防止への貢献です。植物は、光合成を行う際に空気中のCO2を大量に使い、植物自体の構成成分を作ります。何度も再生できる植物を資源として利用することは、CO2の削減にも役立つのです。

さらにバイオプラスチックは、土の中で分解できるという点や人間など生体にやさしい安全な材料である点も特長と言えますが、これは種類によって適不適があります。

写真

先ほどバイオプラスチックは、トウモロコシなどのデンプンを原料にするとお話ししましたが、現在は、人が食べない飼料用や工業用を使っています。NECでは、デンプンを原料にしたバイオプラスチックの開発のほか、非可食原料である木材や茎などの主成分のセルロースを活用したバイオプラスチック開発も進めています。

現在、デンプンの供給量は年間約14億トンですが、セルロースの生産量は年間800億トンにも上ります。そのうちの大部分は活用されずに廃棄されているので、今後この原料を使っていくことが重要となります。

NECが材料開発に挑戦する、その理由とは。

―ICTメーカのNECがバイオプラスチック開発に取り組んだ理由は、何ですか。

写真:位地 正年 氏

位地:NECには元来、キーとなる材料を自社開発するという社風があります。たとえばすぐれたエコ材料を独自開発して自社製品に採用すれば、環境対策において他社製品に対する優位性が生まれます。また、開発したエコ材料を広く世界に展開すれば、地球環境の保全などグローバルな社会貢献にも大きく役立ちます。

そうしたビジョンをもとにNECでは、ICT系の技術者の他にも材料や化学系の技術者も採用し、一流の材料メーカに匹敵するほどの研究設備や実験環境を早くから充実させていました。

―NECのバイオプラスチック開発の歴史について教えてください。

位地:1990年代はじめ、世界では電子機器などの耐久製品用のプラスチックに対する大きな課題を抱えていました。石油を原料としたプラスチックの難燃性(火災防止のための燃えにくさ)を高めるために使っていたハロゲン系難燃剤は、焼却時に有害なダイオキシンを発生させやすいという問題でした。

我々はこの課題解決に取り組み、1998年に脱ハロゲン難燃性プラスチックの開発に成功。これまでの課題を解決する技術として世界的に注目され、材料メーカとの提携で製品化し、現在複数の材料メーカからグローバルに展開されています。

一方、石油を原料としない次世代プラスチックとして、NECがバイオプラスチック開発に取り組み始めたのは2000年でした。私たちが研究で目指したのは、材料メーカなど他社が難しくて取り組んでいなかった、高い植物成分率と機能性の同時実現、という高い難易度の目標を目指す新しい視点からの開発でした。

2006年には、温暖化防止効果の高いケナフという植物の繊維とポリ乳酸を複合化して、熱で変形しにくく強度にすぐれたバイオプラスチックを開発し、NTTドコモ様の携帯電話用として世界で初めて実用化しました。さらに、難燃性にすぐれたポリ乳酸複合材の研究も進め、2010年にはビジネスPCのフロントパネルやPOSシステムの部品として実用化を成功させました。これは研究チームと事業部の関係者、そして材料メーカの協力によって成し遂げられたものです。

図版:NECにおけるバイオプラスチックの開発NECにおけるバイオプラスチックの開発

安全な材料開発への挑戦がスタート。

―NECにおける位地さんの仕事の歴史について教えてください。

位地:材料メーカで電子部品用プラスチックの開発と実用化を経験した後、夢であった環境調和型材料を研究することを目的に、1990年にNECに入社しました。入社後しばらくは、プラスチックのリサイクル技術を中心に研究を進めていました。しかしリサイクル技術を突き詰めていくほど、材料そのものの安全性が絶対に必要と確信していきました。

プラスチックに使用されていた有害なハロゲン化合物に代わる難燃剤としては、有機リン化合物の使用が一般的でしたが、当時の有機リン化合物の安全性は十分ではありませんでした。だったら、有機リン化合物を使わずにもっと安全性の高い難燃性の石油系プラスチックを自分たちで開発してみようと考えたのです。

その頃はメンバーも少なく研究設備も整ってはいませんでしたが、いろいろ調査・検討していくうち、安全性の高いシリコーン(有機ケイ酸ポリマー)の中で、ある新しい分子構造のものに高い難燃効果があることを発見しました。そしてこのシリコーン系難燃剤を使った難燃ポリカーボネート樹脂を材料メーカと提携し世界に先駆けて実用化しました。これは『エコポリカTM』と名付けられ、NECのPCやプロジェクタなどの筐体に加え、液晶TVなどの他社製品の部材にも広く採用され、社内外で高く評価されました。

さらに、難燃剤がなくても自ら消火性をもつエポキシ樹脂の開発にも成功し、電子機器の内部部品であるICパッケージに採用されました。これらの材料の成功事例によって、当社のエコ製品での差異化(ブランド力の向上)と、他社販売による材料メーカからの特許料収入(収益確保)という、ひとつのビジネスモデルができあがり、環境調和型プラスチックの研究テーマが確立されました。そこでメンバーや体制などが強化されて、さらに高度な環境調和性を実現できるバイオプラスチック開発に向けた大きな流れが生まれたのです。

それからは、デンプンを原料にした難燃性ポリ乳酸複合材と非可食原料であるセルロース系バイオプラスチックの開発の2つが、私たちにとっての大きな研究テーマとなりました。

―バイオプラスチック開発のリーダーとして位地さんの業務を教えてください。

写真:位地 正年 氏

位地:石油系プラスチックの環境対策を行っていた頃は、課題解決の方法を考え、さまざまな実験を繰り返す研究者としての仕事がメインでした。現在、バイオプラスチック開発におけるリーダーとして、最も重要な業務は研究戦略の策定と実際に研究を推し進めるマネジメントです。

私たちは単なる研究機関にいるのではなく、メーカの研究チームなので、限られた期間内で結果を出し、実用化していくなど、企業にとっての利益や価値を生み出さなくてはなりません。

そこで、材料メーカでないNECの材料の研究戦略として、これからの世の中のニーズと技術動向を見極め、特に大手の材料メーカが未開拓・未着手で、しかも我々のコンピタンスを活かせる研究テーマを設定します。そして、差異化のポイントとなるブレークスルー技術を自社開発し、さらに、この技術とともに、NEC製品への利用という初期市場も活用して、適切な材料メーカと提携し、彼らの技術を併せることで、他社に先駆けて製品化していく、という具体的なストーリーを練り上げます。

そしてプロジェクト全体の進捗管理を行いながら、研究が行き詰まったり、課題にぶつかった時には私もメンバーと一緒になって議論しアイデアを出しあいます。この時、いかにしてメンバーのモチベーションを上げ、アイデアを引き出すことができるかが重要だと思っています。

また、国内外での広報活動や社内事業部や社外メーカとの対外折衝も欠かせない業務です。さらに、メンバーの育成も重要であり、自ら深く考え挑戦していく力を伸ばすようにしています。

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