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Innovators 100 Series Vol.04 今岡 仁

顔認証、性能世界一の立役者

2014年1月21日

Vol.04 CHAPTER2 これからも顔認証の「誤照合ゼロ」を目指し挑戦を続けたい。 今岡 仁NEC 情報・メディアプロセッシング研究所 主席研究員 工学博士: 今岡 仁

―NECに入社した今岡さんの研究者としての歩みを教えてください。

写真:今岡 仁 氏

今岡:いま現在は、顔認証における学習型アルゴリズムが専門分野ですが、大学時代はシミュレーションや数学などを応用した統計力学の研究をしていました。理論的研究を続けているうちに、もっと実体のある脳の研究への興味が湧いてきました。そうした時期に、さまざまな分野で有名な研究者が集まっているNECの基礎研究所が、脳に関する情報処理の研究スタッフを募集していることを知り、NECへの入社を決断しました。入社後の5年間は、大学時代の数学の知識を活かして、脳の視覚情報処理の研究を行っていました。簡単に言うと、人はどうやってモノを見ているのかという研究ですが、これは後に顔認証の研究にも役立ちました。

2002年からは情報・メディアプロセッシング研究所に移り、ここから私の顔認証の研究がスタートしました。顔認証には、顔がどこにあるかを見つける検出と、顔が誰かを見分ける照合という2つの分野があります。私の専門は照合分野の研究でしたが、当初は誤照合が30%以上もありました。その頃は、まだ手法が固まっていないこともあり、性能アップのために何を改善すればいいのかということさえ、わからない状況でかなり悩みました。

―顔認証の精度アップにために、どんな苦労がありましたか?
今岡
:そうした試行錯誤の末、開発したのが学習型アルゴリズムです。アルゴリズムによって照合精度が変わるのですが、いまあるアルゴリズムを改善したり、新たなアルゴリズムを開発したり、1人でアルゴリズムと向き合う毎日でした。具体的には、照合の基準となるパラメータを変えたプログラムを昼間つくり、夜間にシステムを動かしてその結果を検証。翌日、その結果を見て再びプログラムを改善して、夜に検証するという繰り返しで、その頃は頭のてっぺんからつま先まで、数式でいっぱい。そんな感じでしたね(笑)。このアルゴリズム開発によって、研究がだいぶ進化しました。

もうひとつ重要だったのは、機械に学習させるための顔画像データの収集です。その理由は、画像データが多く集まればそれだけ機械の学習能力が高まり、照合の精度アップにつながるからです。たくさんの人の写真を撮影したり、知り合いに頼み込んでパスポート写真や子供の頃の写真を持参してもらい、経年変化の照合に役立てるなど、画像データの充実にも努めました。こうした努力の結果、誤照合率は5~10%まで低下して、2006年には香港政府の出入国管理システムとして導入が決定しました。導入後には香港まで足を運び、今後の研究に役立てるために、実際の動作評価やシステムの課題検証などを行いました。

世界の国々で、NECの顔認証が活躍

写真:©
 & ® Universal Studios. All rights reserved. CR14-0031

―現在、NECの顔認証技術はどんな分野で実際に活用されているのでしょうか?

今岡:先ほどの香港政府の出入国管理システムをはじめ、米国、チリなどさまざまな国の警察・司法機関、入国管理機構などにおいて活用実績があります。ほかにも、東京電機大学様の入館管理システム、NTTドコモ様の携帯電話向け顔認証など、セキュリティ領域では一般企業や教育機関にも活用が拡がっています。また、ユニークな例では、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン®様の入場ゲートシステムにも、NECの顔認証が導入されています。年間パスをお持ちのお客さまが初回の入場の際に顔を登録しておけば、次回からの入場は顔認証でスムーズに行えます。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン®様では、これまでパスの発行やお客さまの本人確認に費やしていた手間を大幅に低減できたそうです。また、来場ゲストの本人確認はわずか1秒程度で、スムーズな入場にも役立っています。しかもゲストの方々にとって“顔パス”による入場は、とても好評とのことです。

―今後、顔認証技術はどんな分野に活用が拡がっていくのでしょうか?
今岡
:冒頭にもお話ししましたが、顔認証には人による認証行為がいらない、離れた場所から認証ができるなどのメリットがあります。こうしたメリットを上手く活かせば、これまでにない分野でも顔認証の活用が拡がると思います。たとえば、ホテルやデパートなどでは、訪れたVIPをいち早く見つけて付加価値の高いサービスを提供することもできます。また、迷子捜しもすばやく、簡単にできるはずです。さらに、膨大な学生が一堂に集まる大学などの入試では、受験生の本人確認も正確に、しかも迅速に行えます。人の目による見過ごしもないため、替え玉受験などとてもムリだと思いますよ(笑)。また、公共機関や役所などで顔認証が導入されれば、本人確認のためにいちいち免許証や健康保険証を持参する必要もなくなります。顔認証は、犯罪やセキュリティといった安全・安心の分野だけでなく、新たなサービス向上や付加価値の創造といった分野にも、もっともっと拡がって欲しいですね。

「誤照合ゼロ」を目指し、たゆまぬ挑戦を

写真:顔認証

―顔認証における今岡さんの現在の取り組み、今後のビジョンを教えてください。

今岡:現在も、学習アルゴリズムの進化による精度アップに取り組んでいます。2010年6月にNISTから発表された顔認識ベンチマークテストで第一位の評価を獲得して以来、引き続きディフェンディングチャンピオンを目指し、より誤照合が少ないアルゴリズムを実現すべく研究をしています。また、現在も引き続き、顔画像データの収集を続けています。時にはニューヨークの街角で、人々に協力を頼んでさまざまな表情や向きの顔画像を撮影させてもらうといったこともやっています。

今後の取り組みは、いままでと同様「誤照合ゼロへ」の挑戦です。アルゴリズムの研究とともに、これからは横や斜めなどいろいろな向きの顔画像からより精度の高い照合を目指していきます。また、遠隔撮影などによる低解像度画像に対する検出や照合の精度アップもこれからの課題です。NECは、「超解像」という、低解像度の画像を鮮明にする最先端の画像解析技術がありますから、こうした技術も融合しながら、他ではマネのできないNECならではの高精度な顔認証をこれからも追求していきます。

―研究者としてのこだわり。また、個人的な趣味などを教えてください。

写真:今岡 仁 氏

今岡:NISTのベンチマークテストを通じて変わったことは、「社内」から「社外」に目を向けるようになったことですね。論文や特許など世界の動向に目を配ったり、他社の動きを予測することで自分のやるべき目標が、よりはっきり見えてきます。NIST挑戦への取り組みでは、毎週日曜日にファミレスに行って次の一週間でやるべきことや改良点、その優先順位などをひたすら考え、それをノートにマインドマップとして書きつけるということを繰り返していました。2010年にはNEC社内で社長賞を受賞しましたが、賞を取ることも大変うれしかったですが、賞を取るきっかけでもあった、自分の開発した技術が世界で広く使われていることの方がうれしいですね。それが研究機関ではなく、NECという企業を選んだ研究者の醍醐味だと思っています。

趣味は、ランニングです。毎週3回、夜1時頃に家の周りを4kmくらい走っています。体調管理というより、ストレス解消が目的です。走ることが好きで、これまでフルマラソンも7~8回くらい完走しています。できることなら、年末に行われるホノルルマラソンを、ぜひ一度走ってみたいですね。

NECは、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン®のオフィシャル・マーケティング・パートナーです。
© & ® Universal Studios. All rights reserved. CR14-0031

(2014年1月21日)

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