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スマートコミュニティ。その先端モデルを地方都市から―

人口5000人の、自然エネルギー活用都市

東京都心から約80km、関東平野の西北部に位置する埼玉県本庄市。市内にはJR上越新幹線や関越自動車道が通り、北関東における交通の要衝となっています。
上越新幹線 本庄早稲田駅の周囲には2011年9月現在、広大な更地が広がっており、目立つ建物といえば早稲田大学の本庄キャンパス(早稲田リサーチパーク)と、建設中のオフィスビルがひとつのみ・・・。じつはこの場所に2014年、人口5000人規模のニュータウンが誕生するのです。

写真:嶋根 繁 氏財団法人 本庄国際リサーチパーク研究推進機構専務理事 嶋根 繁 氏

『本庄スマートエネルギータウンプロジェクト』と名付けられたこの街づくりのねらいを、事業主体である財団法人 本庄国際リサーチパーク研究推進機構(*1) 専務理事 嶋根繁氏が解説します。「本庄早稲田駅周辺エリア 約64haは、拠点都市地域(*2)に指定されており、このエリアと早稲田大学のキャンパスを使い、産官学が協同して自然エネルギーを活用した商業施設と住宅、EV(電気自動車)利用の次世代交通システムを整備する計画です。環境・エネルギー・都市工学分野の研究者と、広範な業種の会員企業35社、自治体など関係機関が連携し、新しい街づくりに取り組みます。スマートグリッドや商業施設など、5つのテーマを掲げてワーキンググループをつくり、技術開発と実証研究を進めています。
東日本大震災を機に社会の電力供給基盤が不安定化したことで、環境・低炭素都市というコンセプトに加えて、エネルギーを自立化できる社会の構築もテーマとなっています。とくに地方都市においては、大都市とは異なる自立型のシステムが必要になります。つまり、この本庄での実証研究は、“地方版スマートシティ”のモデルを確立するという意味でも、非常に重要なプロジェクトになると考えています」。

本庄市は全国有数の高温地帯でもあり、「空気中の熱や地中熱を取り込んで活用するなど、自然エネルギーを有効利用できる条件も揃っているのです」と、嶋根氏は話します。

  • (*1)財団法人 本庄国際リサーチパーク研究推進機構・・・本庄地方拠点都市地域(*2)を中心に、産・学・地域の連携による研究交流・協働活動の促進を担う公益法人。
  • (*2)地方拠点都市地域・・・1992年に施行された「地方拠点法」で定められた、地方発展の拠点となるべき地域のこと。主務大臣、関係市町村と協議の上、知事によって指定されます。指定地域の都市機能と居住環境を整備し、魅力を高めることで、地方の自立的成長を目指すこととしています。

「電力」と「熱」の需給を、いかにマネジメントするか

本庄スマートエネルギータウンプロジェクトでは、太陽光発電設備や蓄電池設備はもちろん、太陽熱と大気・地中の熱、ガスタービンなどの分散型電源から発生する余剰熱を用いたヒートポンプシステムが街の各所に導入され、商業施設には街中を走る燃料電池車向けに水素供給ステーションが設置されます。

このような、自然エネルギーと蓄電池、ガスタービンなどを組み合わせて街のエネルギー基盤を構築する場合、エネルギーを供給できる量は気象条件によって左右されます。エネルギーを使う商業施設や住宅も、時間帯などによる消費量の差が大きくなります。

写真:荒川 正夫 氏財団法人 本庄国際リサーチパーク研究推進機構事務局長 荒川 正夫 氏

この課題への対応について、財団法人 本庄国際リサーチパーク研究推進機構 事務局長 荒川正夫氏が語ります。「分散型のさまざまな電源と、蓄電・蓄熱設備を一元的に管理していくシステム、つまりエネルギーをどのように貯め、どのように融通し合うかというマネジメントシステムの確立が、このプロジェクトを成功に導くカギになると考えています」。

自然エネルギーなどから創り出す「電力」と「熱」を適切にマネジメントして、CO2の削減につなげる技術開発――。本庄国際リサーチパークのこの取り組みは、企業や公的機関が進める温暖化対策技術の開発と実用化を環境省が後押しする「平成23年度 地球温暖化対策技術開発等事業」にも採択されており、NECはこの事業の共同研究企業として参画しています。

図版:早稲田リサーチパーク(本庄市)で開発・実証研究が進められる「分散電源等エネルギーマネジメント制御システム」の概念図▲早稲田リサーチパーク(本庄市)における分散電源等エネルギーマネジメント制御システム(CO2削減展開イメージ)

コンビニとレストランが、熱エネルギーを融通し合う

実証研究の主な舞台となるのは、早稲田リサーチパークと、本庄市に新しく建設される商業施設群。NECはまず、既存店舗における空調、照明、IT機器などの電力消費量をリアルタイムに集計して、データセンターに蓄えていきます。

写真:勝田 正文 氏早稲田大学 理工学術院教授 勝田 正文 氏

エネルギーを作り出す側、つまり太陽光発電設備やヒートポンプシステムといった分散型電源の設計・製造・評価は、早稲田大学が担当します。同 理工学術院 教授 勝田正文氏が、技術開発の内容について解説します。「再生可能エネルギーを組み合わせた発電機や蓄電池のエネルギーステーション、コ・ジェネレーションシステム(*3)を街の各所に設置し、電気と熱を相互で融通し合う仕組みを作ろうとしています。そのポイントは、熱エネルギーの活用です。ロスなく運ぶことが難しいと言われている熱エネルギーの輸送技術と、蓄熱技術の確立に取り組みます。とりわけ、ガスエンジンやSOFC(*4)などの、温度の違う排熱を蓄積・移送する方法を実証研究します。
このほか、排熱を活用する冷凍機や温熱機など、熱駆動型のヒートポンプを効率的に稼働させる研究開発も並行して進めます。またコンビニエンスストアとレストランの間で冷熱・温熱の融通を行って、双方の省エネ・省CO2を実現する試みも、研究テーマのひとつに掲げています」。

  • (*3)コ・ジェネレーションシステム・・・ディーゼルエンジンやガスタービンといった通常の発電機は、電気だけを作り出します。しかし燃料を燃やす際には、熱も発生します。この熱を、給湯や暖房などに有効利用するためのシステムです。
  • (*4)SOFC・・・都市ガスなどから取り出した水素を、空気中の酸素と反応させて電気をつくる、セラミック製の燃料電池。小型で発電効率が高いという特長があります。

CO2を45%削減。スマートコミュニティの先端モデル

写真:佐多 直明NEC ITプラットフォームソリューション事業部エキスパート 佐多 直明

NECでは、これらの電源設備から供給されるエネルギーのデータと、既存店舗の電力消費データに加え、気象情報やカレンダー情報なども収集・蓄積します。NEC ITプラットフォームソリューション事業部 エキスパート 佐多直明が、そのねらいを説明します。「今回の実証研究によって、NECはスマートエネルギータウン全体の発電・供給計画と、需用量の予測をバランスさせ、最適なエネルギーマネジメントを実現しようとしています。そのために、需要側でどれだけのエネルギーが、いつ、どんな使われ方をしているのかを計測しておく必要があります。また、商業施設と一般家庭、オフィス、大学ごとに、エネルギーの使われ方には特色があるはずです。季節や気温、曜日、時間帯などによっても変化します。これらの傾向をとらえて、需要全体の構造を把握したいと考えています」。

NECではさらに、店舗や事業所など建物ごとの電力消費パターンから無駄の多い場所や時間帯を見つけ出し、CO2削減余地の抽出と、ピークシフトを促すようなしくみを構築しようとしています。「つまり業態の違う事業者間で、熱を含むエネルギー資源を融通し合い、有効に活用できるようなソリューションの開発を目指しています」(佐多)。
開発を進めていく中で、課題も浮上しています。たとえば、電気と熱の使用量を最適化するアルゴリズム(コンピュータを使って特定の目的を達成するための処理手順)の実装や、法人同士でエネルギーを融通し合う際の法的な制約などです。現在、実施企業・団体が共同で、解決に向けた取り組みを進めています。
勝田氏は「NEC の強みであるITとエレクトロニクスの領域に、当方で展開してきた『熱』に関する研究成果が加わることで、環境管理と省エネの分野にかつてないイノベーションが生み出せると見ています。目下の課題を一つひとつ解決しながら、企業と大学、行政、そして地域社会が良くなるWin-Winの関係を、ぜひとも築いていきたい」と話します。

本庄スマートエネルギータウンプロジェクトでは、既存店舗での調査データを基に、複合型ショッピングセンターなどの10分の1モデルを今年度内に建設し、このモデルを使って実際の実験を行います。目標に掲げているCO2の削減比率は、商用電源を使う既存施設との比較で45%です。

図版:10分の1モデルの設計図(完成予想図)▲10分の1モデルの設計図(完成予想図) 多様な再生可能エネルギーを効率的に使用しながら店舗運営が可能な、次世代型のコンビニエンスストアモデルを建設し、実証研究に活用します。

荒川氏は「多様な電源を組み合わせ、最適なエネルギー制御のシステムを開発することで、45%の削減は充分に達成可能と見ています。3年後には、全国の自治体でも採用していただける、汎用性の高いシステムの完成を目指しています」と語ります。

このように、環境負荷の少ない多様なエネルギー源を安定して使用できる新しいスマートコミュニティのモデルづくりに、NECは先端技術で貢献していきます。なお、ソリューション開発への取り組みについては、次号(「電力使用制限令下の実験値を基に開発する、スマートな新製品」)で引きつづき取り上げる予定です。

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