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将棋電王戦で活躍するAI企業の社長とNECのデータサイエンティストが語るAIの可能性とは?

チェス、将棋、囲碁の名人を次々と打ち破る人工知能(AI)。ゲームの世界では向かうところ敵なしだ。また近年ではAIの力をビジネスや社会生活に活用する動きも活発になりつつある。私たちの知らないところで、すでにその恩恵を受けていることも少なくない。AIはどのような可能性を秘め、そして私たちの生活やビジネスはどう変わっていくのか――。AI開発のベンチャーであるHEROZの林 隆弘氏と、AIを活用した企業の業務革新の提案やコンサルティングを行うNECのデータサイエンティスト・本橋 洋介が熱く語り合った。

プロフィール

HEROZ株式会社 代表取締役 林 隆弘 氏

大学卒業後、NEC入社。IT戦略部、経営企画部に在籍。趣味の将棋はプロ棋士に勝ったこともあるほどの腕前。アマチュア将棋大会で全国優勝数回。その実力向上のためにAIに興味を持ち、HEROZを設立。「驚きを心に」をコンセプトに、世界を驚かすサービス提供を目指している。

NEC ビッグデータ戦略本部/情報・ナレッジ研究所 エキスパート 本橋 洋介

データサイエンティストと研究者という2つの顔を持つデータのエキスパート。AIを活用したデータ分析の仕事に従事する一方、実際にお客さまと接することでわかる現場からの課題や要望などを基に、新しいAI技術の研究開発を行っている。

短期間で棋力を高めるAIの実力とは?

本橋:先頃、第1期電王戦でHEROZのメンバーのひとりが開発した将棋AI「PONANZA(ポナンザ)」が勝利。これでプロ棋士を相手に無傷の5連勝を飾りました。AIと人間の対局では、「AlphaGo(アルファ碁)」が韓国のプロ棋士に勝ったというニュースも世界に衝撃を与えました。こうした対局を林さんはどのように見ていましたか。

林:アルファ碁の対局の下馬評は人間有利。囲碁AIがプロ棋士に勝つには、あと10年かかるだろうといわれていました。実は、私も人間有利と思っていた一人です(笑)。

NEC 本橋 洋介の写真

本橋:それは意外ですね。HEROZは初めて将棋のプロ棋士に勝利したAIを開発した会社ですし、今も「将棋ウォーズ」などAIを駆使したゲームアプリを提供していますよね。当然、AI有利と予想すると思っていました。個人的にはいつも人間を応援していますが、結局は車と人間が100m走を走るようなもので、数年かかることもなくAIが圧倒するだろうと見ていました。

林:将棋AIは駒の強弱や影響力などを計算して候補手を絞り込み、数手先まで局面を予想し、最も形勢が有利になるものを選んで指し手を決めます。しかし、囲碁には駒の強弱がなく、同一の石を並べて最終的に陣地の多寡を競うゲーム。盤面が広く、想定される局面数も複雑なため、形勢を定量的に評価するのが難しいという側面を持ちます。
アルファ碁は将棋AIやチェスAIのアルゴリズムとは異なり、画像認識技術と深層学習(ディープラーニング)を組み合わせて棋力を高めたといわれています。囲碁の盤面を画像として捉えてパターン認識を繰り返し、最良の打ち手を導き出しているようです。グーグルが囲碁AIの開発に名乗りを上げたのが2015年の秋。この短期間でそんなに強くなるのかという思いがあったわけです。今回はプロ棋士に1回勝てれば上出来だと思っていたくらいです。

株式売買予測や与信管理へのAI活用が進行中

本橋:確かに短期間で強くなったという点は驚きですね。AIの技術はどんどん進化しています。実際、ビジネスに活用するシーンも増えつつあります。HEROZではAIを使って、どのようなビジネスを行っているのですか。

将棋ウォーズの画面イメージ

林:注力分野は大きく3つあります。1つめは先ほど出たゲーム分野です。将棋AI「将棋ウォーズ」のほか、チェスAI「CHESS HEROZ」、バックギャモンAI「BackgammonAce」などを提供しています。
特に将棋ウォーズは人気が高く、登録会員数は260万人以上、アプリのダウンロード数は300万以上を達成しました。人がAIと対局できるほか、人との対局でAIのサポートを受けられるサービス(棋神)も有料で提供しています。楽しみながら自分の将棋の腕前も磨けるわけです。単に「勝った、負けた」だけでなく、自分が考えもしなかった指し手を間近で見れば、将棋の奥深さ、楽しさに気づける。ゲーム事業の根幹には、AIを使ってエンターテイメントのイノベーションを起こしたいという思いがあります。

本橋:ただ単にAIを使うのではなく、時には強い敵として、時には自分の棋力をあげるeラーニングの先生として登場することで、新しい将棋の楽しみ方を教えてくれるわけですね。その他の注力分野はなんでしょうか。

HEROZ株式会社 林 隆弘 氏の写真

林:2つめは金融分野です。FinTechの流れと相まって、様々な金融サービスにAIを活用する動きが高まっています。先日発表した、ある金融機関との取り組みはその1つ。当社のAI技術を株価や市場予測に活用し始めています。あるメガバンクとは、与信管理にAIを活用する取り組みも進めています。新規事業の立ち上げや事業の拡大、ベンチャー育成などに役立つものと期待しています。
そして3つめがヘルスケア分野です。ある医療機関と連携し、生活習慣病のリスクを減らす予防医療への活用を模索しています。AIはデータから「このまま同じ食事や生活習慣を続けていたら、近い将来病気になりそうだ」というリスクを見つけ出します。それをもとに、医師が患者を診断し、指導を行うという使い方を想定しています。

本橋:投資売買の判断や医療における診断は、ゲームの意思決定プロセスと共通点が多い。機械学習によるAIの強みを活かしたビジネス展開をされているわけですね。

「人とAIの協調」が未来を拓く

本橋:NECも様々な分野でAIを使った事業展開を進めています。例えば、防災カメラが捉える群衆映像から混雑状況の把握・異変検知を行う「群衆行動解析技術」はその1つ。これは異変につながる「群衆全体の動きの変化」を、個人を特定することなくリアルタイムに解析する技術で、すでに東京都豊島区様で運用を始めています。災害時の帰宅困難者への早期対応や、混雑エリアでの事故・犯罪防止に効果が期待できます。

POSシステムを開発・提供する強みを活かし、流通・小売業でもAIを活用したビジネス展開をサポートしています。機械学習に過去の売り上げを入れることで、将来の売り上げを予測し、発注量を決定します。さらに、店舗の品揃え、最適な価格設定まで自動化するものを開発しています。さらに医療分野では健康診断や医療行為のデータを分析し、自治体の保険指導をサポートする取り組みも進めています。

林:流通・小売業の場合、店舗によって客層や地域特性が異なります。それを加味した分析・提案は非常に難しいのではないですか。

本橋:おっしゃる通りです。店舗ごとの特性を踏まえた分析を行うには、各店舗の数年分のデータの蓄積が必要です。祝祭日やイベント、行事などによって売上がどのように変動するか。そういったところまで見ていかなければならない。短期的に売上が上がっても、長期的に見て売上に貢献できなければ意味がないからです。
結果を追い求めるだけでなく「いかに人に納得してもらうか」という点も重視しています。例えば、AIが「明日はアイスクリームがたくさん売れるから発注量を3割増やせ」と提案したとします。真夏ならともかく、そうではない時期にこんな発注は通常ありえないわけです。人は経験則から「なんで?」となる。この「なんで?」を「そうなのか!」と思ってもらえるような裏付けが必要になるわけです。
AIには発見したルールを説明できない「ブラックボックス型」AIと、人とAIが協調して問題にあたる「ホワイトボックス型」AIがあります。社会システムの運用や意思決定など、実は「人とAIの協調」が必要な分野は非常に多いため、NECとしてはホワイトボックス型のAIにも注力しています。

林:ビジネスでAIの活用を図る上で「人とAIの協調」はすごく重要なポイントですね。AI技術の進化は大切ですが、今のAI技術でも社会課題やビジネス課題の解決に貢献できることはたくさんある。でも、人が足りないためにAI技術の供給が追い付いていないのが現状だと思います。ここでいう人とは、技術者を含めた“AIの使い手”のこと。マーケットニーズを捉えてマッチングを図り、人と協調したAI活用を進めていく人材です。今後、AIの市場が拡大していくためには、こうした人材の育成が欠かせないと思います。

生活に溶け込む「AIの大衆化」が普及のカギ

本橋:“AIの使い手”が増えていけば、業界や個々の企業ニーズだけでなく、個人にフォーカスしたAIの活用も進んでいくのではないかと思います。ビジネスをもっと効率的で生産性の高いものにし、生活もより快適で豊かなものにしていく。AIを受け入れる世の中の雰囲気みたいなものも大事ですね。その意味で、今はまだ過渡期の状態だと思います。

林:19世紀の産業革命時には、人々が自分たちの仕事を奪われると思い、機械打ち壊し運動が起こった。しかし、産業革命で機械化が進んだおかげで、仕事の生産性は上がり、経済が発展し、生活も豊かなものになっていきました。今では広く普及している掃除ロボットもAIを活用した製品の1つだと思います。掃除ロボットみたいにAIが大衆化し、生活に自然に溶け込んでいけば、いろんな可能性が広がるでしょう。

本橋:NECでは「知性レベルのAI」という開発ビジョンを掲げ、人との協調と図るAIの実現に向けた活動を強化しています。過去を学習してルールを作るだけではなく、AI自らが仮説を立て、発言し、対話を通して人の判断・意思決定を支援する。これが進めば、経営者とAIが対話しながら経営ビジョンを作る。そんなことも可能になるかもしれません。

林:AIを何でもできる“魔法の箱”のように思っている人もいますが、決してそうではない。人に専門家がいるように、AIにも様々な技術があり、それぞれに得意分野がある。そこにどう“味付け”していくかは、やはり人の仕事。今後も人とどう寄り添うかという視点を大切に、AI技術の進化とその活用に向けた活動を強化し、市場の開拓と拡大を目指していきます。

本橋:その通りですね。AIはとかく人間との対立軸で捉えがちですが、AIにも弱点はたくさんあります。AIが得意な分野で人を支える協調関係を社会でもビジネスでも作っていきたいですね。本日はありがとうございました。

林 氏と本橋の写真

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