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地球を見つめる星を造って 第3回 二人で見上げる宙の彼方へ

「しずく」データを処理する

  • 小笠原:実際にはどういった仕組みで画像ができあがっていくのですか?
  • 内木:じゃ、まずデータを受け取り、配信する私から。
    私が担当するシステムは「地球観測研究センター(以下EORC)情報システム」と呼ばれています。スバルバード局からデータが衛星の2周回分まとめてやってきます。大きさは200メガくらいのものです。
    このデータと、気象庁や漁業センターから送信されてくるデータを保存します。これらをまとめて整理し、データ処理の順番をつけて、データ処理部を起動します。次に、データ処理部で作成した画像を、配信先に配信します。言ってみればユーザごとに必要なデータを準備して受け渡す頭脳のような役割をします。

図版:地上系のブロック図地上系のブロック図

  • 北本:私は受け取ったデータを処理して、みなさんが見ている画像にしていく部分を担当しています。私が担当した処理の説明をする前にAMSR2が取得するデータについてお話します。
    AMSR2は地上の大きさ15kmくらいの楕円状の広がりを(周波数によってその大きさは3km~60km程度まで変わる)観測していきます。アンテナの回転にともなって走査していくことで円弧状のバンドができます。アンテナは衛星直下から前方へ約47.5度傾いて(オフナディア角)いて、前方約120度の範囲をカバーします。高度約700kmから見下ろしているので、その円弧状の観測幅は約1450kmに達します。「しずく」は毎秒約7.5kmで軌道上を進むため、1回転する1.5秒で約11km進み、こうして円弧状の領域が重なりながら徐々に全球を覆っていくのです。

    ですから画像に作りこむ私の処理では、「しずく」の軌道位置、姿勢、アンテナの回転角度をデータベースとして、瞬間瞬間のアンテナスポットの方向を計算しながら地図上にマッピングしていくのです。

図版:AMSR2観測イメージ観測幅1,450kmの円弧状の領域が重なりながら全球を覆っていく。
日本列島を南から北(画像では上から下へ)に飛行しながら観測を行うイメージ。

  • 北本:全球のデータを作るのにレベルが4段階あります、L0からL3と呼んでいます。
レベル0(L0) 半周回(時間にして約50分)単位で帯状の画像を生成
(これがファイルの単位です)
レベル1(L1) 幾何学的な補正、輝度値補正を行い “輝度温度※” にする

※輝度温度:センサで観測したエネルギーを、プランクの法則を用いて変換して求められた温度

レベル2(L2) L1をベースにして、降水量/温度といったわかりやすい物理量変換する
ここまでは半周回単位の処理
レベル3 (L3) 帯状のL1、L2データ1日分または1ヶ月分を統計処理して全球データにまとめていく
  • こんな順番に、みなさんが見ている全球の画像が出来ていくのです。L1をきちんと作っていくのが処理的には負荷が高くて大変です。L2処理に関しては、専門家である大学の先生方が作ったアルゴリズム(プログラム)も中に組み込んでいます。
  • 小笠原:なかなか大変な処理ですね。これらの処理はマニュアル操作で行われるのですか?
  • 北本:いえ、そうではありません。まず内木の担当したソフトが、処理ソフト側に「データが来たよ!」と トリガーをかけるのです。するとこちらの処理部分が自動シーケンスで動き始めます。あわせて全球の気象データなども取得して処理に使っています。
  • 小笠原:このシステムを作るのに大変だったこところは・・
  • 内木:客先であるJAXAから、最新の設計手法や、オブジェクト指向を全面的に導入して設計するようにとの強い要求があり、2009年の設計、2010年の製造/試験はなかなかスケジュール的にも大変でした。新しいこともたくさん覚えなければならなかった。

    メンバーも多くてピークには30名くらいいたかな。若い私たちがメンバーを引っ張る必要もあって大変苦労しました。スケジュールが遅れたときなどは、とにかく目前の目標に向かって、ここを通り過ぎれば楽になる、と自分に言い聞かせながらやってた時期もあります。
  • 北本:私の担当したデータ処理部は結構センサ(AMSR2)の細かい仕様を理解しないと設計もできません。ずいぶんセンサのメーカにも聞きましたね。なにしろインタフェースを記載した仕様書だけでは理解出来ないことが沢山ありましたから。このシステムはこれからのGCOM-C1、W2などにも使われるので先を見据えた設計が必須でした。
  • 小笠原:JAXAの中川プロマネが「「しずく」はもう実用レベルの衛星だから、確実に止まることなく毎日動き続けなければならない」とインタビューでも強調されていましたが、そうするために特に工夫した点はあるのですか?
  • 内木:とにかく止めないシステムを目指しました。普通ソフトは異常が起きると安全サイドに向かい、機能が止まるように出来ていますよね。このシステムは何か起こっても、別の経路が用意してあってとにかく止まらない。何度でもリトライして動き続ける。そう作りました。起こりうるまれなケースに対応した試験を何度も何度も繰り返しました。こうして出来たソフトを結合して、全体を通して処理が動いた時は本当にやった、という充実感がありました。
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