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地球を見つめる星を造って 第1回 30年目のバトン

軌道上不具合ゼロを目指して

  • 小笠原:では「しずく」の開発から運用に至る中での印象に残った話を。
  • 川口:

    写真:振動試験後の徹底的な点検を実施するNEC東芝スペースの検査員振動試験後の徹底的な点検を実施するNEC東芝スペースの検査員

    苦労はいっぱいあったが、実用(プロジェクト内部では「利用実証」といわれているが)と言っていいほどのレベルが要求されていましたので、軌道上での不具合ゼロを目標にするしかない。この点はJAXAの中川プロマネからもきつくいわれたことなのです。徹底的にやるしかない、そんな決意を持っていましたね。

    試験中に問題が起こった場合はプロマネとして「とことんやる」という意志を表明するために対策会議には必ず出席していました。メンバーの中には「こんなことまでやるの?」という人もいました。そんな時には何度も説得してやってもらったものです。

    中には再現しない不具合というものもあって、その場合は試験用の別の機器をわざわざ作って繰り返し試験をして、結果的に原因を究明できたということもありました。

    「しずく」では、衛星に命令を与えるコマンドが3000くらいあるのですが、それを全て試験でやってみて確認するということもしました。これだけ徹底してやった衛星は私の経験では他には無いですね。これが「しずく」の軌道上不具合ゼロの一番の理由だと思う。
  • 小笠原:これだけやると、打ち上げの時に「絶対上手くいくぞ」という自信がありましたか?
  • 川口:私は筑波の運用室で、打ち上げにのぞみましたが、「安心して、自信をもって見ていました」、“天命を待つ”心境でしょうか。
  • 吉田:種子島で打ち上げを迎えました。正直不安はありましたが、やるべきことは全てやったという気持ちでしたね。結果がどうであれ受け入れるしかない、そんな気持ちでした。
  • 小笠原:吉田さんは、2011年3月の東日本大震災の時は筑波におられて大変だったようですが。
  • 吉田:

    写真:NEC「しずく」システムマネージャ 吉田 達哉NEC「しずく」システムマネージャ
    吉田 達哉

    筑波での衛星システム試験の最中で、ちょうど衛星を横倒しにしてAMSR2の取外し作業が終わった後でした。
    地震で衛星には直接的な影響が無かったのですが、周囲の壁が剥落したりしました。電源も落ちていました。当日の夕方には皆で協議の上、衛星にカバーをしてしまおうということになり、急遽ビニールシートで全体を覆うことをはじめました。衛星は高さがあるので、高所台車に乗っての作業もやりました。

    作業に関わったメンバー全員があの異常事態のなかで本当に良くやってくれたなというのが、私の心境でした。すごく責任感の強いグループでしたね。当日は無我夢中のまま一日が過ぎたことだけが思い出されます。

    その後、どうやって復帰まで持っていくかが大変でした。誰もやったことのないことでしたから。検査をして衛星が無事であることを一つ一つ確認していくプロセスは大変でした。
  • 小笠原:こうして5月18日、無事衛星は打ち上げられました。その後の運用の中で一番印象深いところはどこだったのですか?
  • 川口:色々いっぱいあるんだけど、「しずく」は実績のある機器を積んでいたので、非常に衛星が安定しているなという感が強かった。各機器がきちんと性能を出してくれている安心感がありました。運用に携わったメンバーもそうでしたね、「だいち」などで経験を積んだ人が多かったので、自信を持っている感じが非常に心強かった。

    A-Train軌道投入のための一連の軌道制御の中で、姿勢を180度くるっとまわして制御をする必要があったときに、姿勢系担当の星野君に「大丈夫ですか?」と聞くと、彼がはっきりと「全く心配してません・・・」と言ってくれた。力強かったですね、本当に実績に裏付けられた「枯れた技術」の衛星だと・・・
  • 小笠原:「ひやっと」した場面は無かったのですか?
  • 川口:無かったですよ、前に担当したある衛星では、プロマネの私が居ない時に限って問題が起こっていたのですが(笑い)、今回は全くそういったことが無かった。
  • 小笠原:今度は吉田さんに、打ち上がってからのことを・・・
  • 吉田:一番ハラハラしていたのは、太陽電池パドルの展開かな。ここは一発勝負で、最初の関門です。これさえ成功すれば衛星は何とかなる、そう思っていましたから。
  • 川口:パドル展開時のモニタカメラ画像には感動しましたね、きれいに展開した様子がわかりました。

図版:モニタカメラによる太陽電池パドル展開画像モニタカメラによる太陽電池パドル展開画像

  • 小笠原:初画像の取得の時はどうでしたか?
  • 川口:初画像が撮れたときに、JAXAの方が「撮れたぞ・・・」とプリントした画像を手に、みんなに見せてくれたのは嬉しかったです。みんなで拍手して喜びました。やはり画像が出ると喜びはひとしおですね。その夜の宴会では他社の技術者とも一緒に喜び合ったものです。本当にこのことは技術者冥利につきますね。

    私は、これが担当する最後の衛星かな・・・と思ってますから。
    もうすぐ60歳なので、「技術屋の遺言」として聞いてもらいたい(笑い)。本当に「しずく」で有終の美を飾れた、そう思えました。この成果は沢山の人達、みなさんの努力のたまものと伝えたい。
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