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Voyage04 月を知る

約10年の開発期間を経て無事打ち上げに成功したJAXA月周回衛星「かぐや」。
今「かぐや」は月の周回軌道上にいる。調査に用いる機器は、JAXA、研究者からなる機器チームによる初期機能の確認を終え、本来の目的の段階へと入る。そう、「月を知る」という目的である。
月を知るためには、月のあらゆる情報を手に入れる必要がある。月を多面的に調査し分析することで、月の全貌が明らかになり、そこから地球が見えてくる。「かぐや」にはその調査を行うミッションが計15ある。NECがJAXAのもとで担当しているミッションをいくつか紹介しよう。

100兆分の1の返答

大気や海がない月の表面は地球よりもはるかに複雑な起伏に富んでいる。しかし、その複雑な地形は現在まで精密なデータとして確立されていなかった。特に月の極域は十分なデータが存在しなかった。
「かぐや」のミッションの中にレーザ高度計による月面の起伏高度調査がある。レーザ光線を使って月の地形と標高を調べ、地図を作ることが目的だ。月面から100km上空を周回する「かぐや」からレーザを照射し、返ってくるまでの時間を計測することで起伏を計測する。毎秒1回の割合で測定されるデータは極域にも及び、今回のミッションで月全体の起伏を把握できることになる。しかし、月へ照射されたレーザは、月面で拡散反射するため、「かぐや」まで返って来たときには照射時の100兆分の1程度まで弱まっている。そのわずかなレーザ信号を確実に受け止め、起伏のデータとして測定する技術が今回のミッションで求められていたのである。

NEC誘導光電事業部 観測・情報技術部 加瀬 貞二

NECは60年代にレーザ測距技術を確立し、その精度を今日まで高めてきた。その成果がきめ細かな月面の情報へと形を変えつつある。月の素顔が余すことなく見え、そこに他のミッションの成果を組み合わせることで、真実への道程はさらに短くなる。
「はやぶさ」以来、日本の月・惑星探査ではまだ2度目となる今回のレーザによる起伏高度調査。宇宙利用としては、歴史が浅い技術だが担当者は笑顔でこう言う。「NECはチャレンジングなんです。多少無理だと思われることもやってのける。そういうところがなければ、今回のミッションも実現出来なかったと思います」
点から面へ。わずかな情報の集合が今、大きな図面になろうとしている。

レーザ高度計から得られた月面の地形高度データ
月面で特徴的な地形「オリエンタル盆地」付近。青が濃くなるほど高度が低く、赤が濃くなるほど高度が高いことを示す

リレーする技術

月の重力場は、均一ではない。その事自体は周知であったが、地球からの測定によるため、俗に言う月の“表側”の情報しか得られなかった。それは月がいつも同じ“表側”の面を地球に向けているからであり、月の“裏側”は推測によるものでしかなかった。
「かぐや」のミッションに月全域の重力場測定がある。月のコア構造までを知ることにより、諸説溢れていた「月の起源」が明らかになってくる。地点によって異なる重力の差を測るには、月の重力(引力)によって「かぐや」の高度が上下するデータをとる必要がある。そのデータを地球に送り、重力場を測定していくのである。ここでひとつの疑問が生じる。「かぐや」が月の“裏側”にいる間、月が邪魔をしてデータは地球に送ることが出来ない。データはどのようにして届くのか、である。その答えが、「かぐや」の2つの子衛星であった。
月の“裏側”に入らない場所に位置し、「かぐや」と地上局の間のデータを中継することで、月の“裏側”の重力場を観測するリレー衛星「おきな」。電波源を搭載しリレー衛星と複数の地上局を連携することで、地上からの正確な位置測定を実現したVRAD衛星「おうな」。これら子衛星と「かぐや」が連携し、地球との間に常に通信が出来る環境が出来上がり、より精度の高い重力場の情報を得ることができたのである。
そこには月の周回軌道上における衛星間の電波や、地球との電波のやりとりが共存できる複雑な設計も求められた。「この電波機器の開発には経験豊富な技術者がいて、その人のお陰でこの難しい課題をクリアできました。いわゆる“頑固オヤジ”なんですが、彼の設計は厳密で、このミッションになくてはならない存在でした」と担当者は語る。宇宙事業を長きに亘り行ってきた中で蓄積されたノウハウ。そのノウハウは次の世代の技術者へリレーされていく。

リレー衛星「おきな」が「かぐや」と地上局の間のデータを中継し、月の裏側の重力場を観測

電波源を搭載したVRAD衛星「おうな」が、リレー衛星と複数の地上局と連携し、地上からの正確な位置測定を実現

「おきな」と「おうな」、量産ではない人工衛星をそれぞれ個性のある「双子」の衛星として同時期に作り上げるのは、人材やコストなどの面でも容易ではなかった。妥協なき開発に携わった試験・製造担当の若者たちは、2つの衛星のネームを借りていつしか「チームRV」と呼ばれていた。名付けたのは製造部門の部長であった。2つの子衛星のように、宇宙への情熱も新たな世代へと着実に中継されている。

宇宙システム事業部 宇宙システム部 増井 亘

「かぐや」に搭載された「おきな」「おうな」

「チームRV」のメンバー

月へ向かうエネルギー。

宇宙システム事業部システムマネージャー 池上 真悟

人工衛星のリソースには限りがある。それは衛星自身の物理的なスペースの限界であったり、電源の容量であったりと多岐にわたる。だが、それらをすべてクリアにしないとミッションは遂行できない。今回の「かぐや」も例外ではない。
開発当初に掲げた目標値がそのまま打ち上げまで維持できれば問題ないのだが、ある機器が軽くなると衛星重心が変わってしまったり、あるミッション機器の性能が向上すると、他の機器のEMC(電磁的な適合性)性能を向上させる必要が出たりした。ただ、より良い結果を求めるためには、バランスをとり、その為に関係者と調整を繰り返す必要がある。9年間での会議数は3000回を越えた。限られた条件の中でいかにプロジェクトをまとめるか。システムマネージャーである池上はこの点が苦労したと懐述する。
まとめ役という立場は、人工衛星と同じように、携わるチームの人間にも気を配る役目を持つことになる。地球とは違い月に関するデータはアポロの時代まで遡らないと出てこないモノもある。わずかな情報を元に池上自らが手を動かすこともあった。調整を繰り返して製造されたミッション機器は、その稼働試験を行う。JAXA/SELENEプロジェクト、SELENE研究者チーム、NEC「かぐや」プロジェクト、およびミッション機器を製造するベンダーからなる「かぐや」の開発メンバーが一堂に介し、望む結果を出すために試験を繰り返していく。試験を行うNECのメンバーは、若手が多いとはいえ、体力的にも精神的にもハードであることに変わりはない。「だからよく飲みにも行きましたよ」池上はそう言った。月に行くという高いモチベーションを持つチームではあったが、そこに潤滑油を入れるのは、「まとめ役」としてチームにいる池上の役目であったようだ。
最新鋭の人工衛星というリソース。そして、それらを造り上げる人間というリソース。その両軸を余すことなく機能させることが成功へとつながる。事実、「かぐや」がこれまでに消費した燃料は、軌道力学チームの綿密な解析により最小限に抑えられており、当初の計画以上のミッション遂行が検討されている。
必ず成功させるというチームのエネルギー。池上がまとめ上げたそのエネルギーが「かぐや」を月へと到達させ、ついに観測ミッションが始動した。
「非常に良いデータが取れたと研究者の方からお聞きしたときは、嬉しかった」
という彼の次の目標は、月面無人調査。「二足歩行ロボットが月面を歩いている姿をお茶の間に届けたい」と話す裏に、NECのチャレンジ精神が見える。

遂にはじまった「かぐや」のミッション。
月の全てが明らかになる日は、すぐそこまできている。

NECは月周回衛星「かぐや」を応援しています。

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