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第5話 「この世にひとつの「はやぶさ」を造る」システムマネージャー、構造設計、機械システム、組み立て担当者

解決はチーム全員の協力 -軽量化の戦い-

取材・執筆文 松浦 晋也

  • Q:「はやぶさ」ならではの開発の厳しさとして、どんなことが印象に残っていますか。
  • 奥平:私の場合は熱環境です。「はやぶさ」は、太陽にあぶられた小惑星に降りていきますから、基本的に冷えやすい設計になっていて、温度が下がるとヒーターで暖めるという運用をします。ところが、打ち上げが遅れたことで、目標天体が途中で2回変わりました。
  • Q:最初が小惑星ネレウス、次に小惑星1989ML、最後にイトカワになりましたね。
  • 奥平:そうです。ところが相手の星が変わると、降下時の太陽距離が変わることがあって熱環境も変わってくるわけで、その都度設計を見直さなければならなかったんですよ。熱だけではなく、様々な局面で設計の基本となる条件が変わったり、分からなかったりで、苦労しました。
  • 東海林:

    写真:機械システム担当 NECエンジニアリング 東海林 和典機械システム担当
    NECエンジニアリング 東海林 和典

    目標天体が変わることによる設計変更はきつかったですね。目標がイトカワになった時には、軌道が大きく変わったので中利得アンテナ の首振りの方向を90度変えなくてはなりませんでした。ところがそれまでアンテナを付けていた側面では、首振りのスペースを確保できなくて、アンテナ位置を進行方向前後に変更しなくてはなりませんでした。もう内部の機器レイアウトは固まっていたので、アンテナへの配線を通す余裕がなくて、苦肉の策として、高利得アンテナの下、本体の外に配線をはわせて、上から金色をしたカプトンの断熱材で覆うということをしています。

写真:中利得アンテナの設置位置中利得アンテナの設置位置

  • Q:そんなことをして大丈夫なのですか。
  • 東海林:設計上は大丈夫ですが、西根さんが担当するハンドリング (組み立て)に影響してきます。
  • 西根:その話は後でまとめてしましょう。ぎりぎりの設計になるほど、機体の組み立てに影響が出てくるんですよ。
  • 奥平:条件が変わるだけではなく、そもそも設計に必要な条件が分からないという場合もありました。サンプラーホーンにしても、どんなところに着地するのかで設計は変わってきます。平坦な砂地に降りるなら短くてもいいけれど、ごつごつの岩場だったら、ある程度長くして太陽電池パドルや機体に岩がぶつからないようにしなくちゃいけない。けれど、そもそも本当のところは行ってみなくちゃ分からないわけです。だから理学の先生方と議論を重ね「こんな条件にしよう」と決めていったのですが、これが大変な作業でした。随分長い時間論議しましたね。
  • 東海林:「はやぶさ」開発の厳しさというと、私の場合は、軽量化に対する要求が尋常ではなかったことが印象に残っています。だって、設計会議でわずかでも重量増加の報告をすると、それはもうみっちりレビューされて、その増加した重量はどこで削るかという議論を延々と行うことになります。軽量化に関しては機械システムはぎりぎりの工夫の連続でした。
  • 大島:重量に関しては、最初から「はやぶさ」の場合は考えられる上限の重さを積み上げて集計したらそもそも設計が成立しないのは明らかでした。だから、「この重さで作ります」という標準の重さで集計し、それにマージンを加えて重さを管理する方針だったのですが、マージンどころか重量オーバーからなかなか抜け出ることができませんでした。
  • Q:どういう手順で、山積する問題を解決していったのでしょうか。
  • 大島:問題があると、まずは社内に持ち帰って議論をします。方向性が出てきたらJAXAさんとさらに議論します。部分最適に陥らないということはいくら強調してもし過ぎることはありません。私たちシステムがすべての機器の議論に同席して全体を見ていきました。ただ、はやぶさにおいては、全体最適化はシステムの努力だけではありませんでした。全体の重量制約など、多くの厳しい制約条件が立ちはだかっていることが誰の目にも明らかだったので、逆にどのサブコンポーネントの担当者も積極的に全体最適化に協力をしてくれて、きびしい全体設計を成立させる大きな力になりました。きっと、システムに対する課題が厳しく、それを目の当たりにすると、サブコンポーネントの担当者のベクトルがそろって全体の最適化が進むってことなんでしょうね。
  • 東海林:

    写真:ハンドリング(組み立て)担当 NEC東芝スペースシステム 西根 成悦ハンドリング(組み立て)担当
    NEC東芝スペースシステム 西根 成悦

    重量軽減においては機体の構造の軽量化は最も効果的だった部分の一つだと思います。探査機重量に占める機体の構造の重量の割合は決して小さくないので、重量削減ができた場合の効果が大きいんですよ。
    軽量化といえば、私は、零戦の開発を追ったノンフィクションを買って読みました。零戦も徹底した軽量化を行った戦闘機です。設計に行き詰ったとき、当時の設計者の苦労にはまだ及ばないと自分を叱咤してました。
    本当に小さな節約から大きな工夫まで合わせて、当初から比べると結果的に機体重量としては20%近い軽量化を行ったと思います。これは自慢できます(笑)

  • 西根:先ほども言ったようにそういう設計を徹底していくと、今度は私たちが担当する組み立てにしわ寄せが来るわけです。
  • 東海林:いや、それは僕らが西根さんたちを信頼しているからこそなんですよ。
  • 西根:質量が厳しい中、小型の衛星に共通する宿命だね。私の担当はハンドリングといって、出来上がってきた部品を探査機に組み上げる仕事です。組み立てるだけではなくて、各種試験の度に組み付けたり外したりを繰り返します。「はやぶさ」は私を含めた数名でチームを作ってハンドリングを担当しました。
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