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届け、あかつきの星へ 第5話 「あかつき」の旅路を見守るまなざし

「執念」が探査機を蘇らせた

Q:打てる手は限られているが、頭の中はフル回転、という状況だったのでしょうか。


見つかるまで時間が経っていたので、急いでも周回軌道に入れ直すことはできなくなっていました。一方、金星に落ちる心配はない。あわてずに姿勢を立て直し、探査機の情報を地球に降ろすことを第一に考えました。厳しい状況だったのは間違いないですが、探査機の状態が見えるようになったところで、やることははっきりしてきました。


Q:その後、5年間のうちに近日点通過が9回……。


「あかつき」を熱から守っている熱制御材が、最終的にどれだけ劣化するかの推定を近日点のたびに行いました。最初のころは急に劣化が進んだので、「このまま行くと、結構大変なことになるかもしれない」と心配しましたが、近日点を迎えるたび、劣化のカーブがなだらかになってきて、「これだったら何とか行けそうだ」となってきました。劣化量推定によって、「状況は厳しいが、まだまだ望みはある」と確認することは、このプロジェクト継続の補強材料になったのではないかと思います。


Q:軌道計画の面では、探査機が宇宙に飛び出した後にここまで大胆に軌道の計画を作りなおすなんて、相当にイレギュラーなことではないですか?


普通はないことです。しかし、火星探査機「のぞみ」でもトラブルからのリカバリーのため、なんとか火星に到達させる軌道が考えられましたし、「はやぶさ」初号機も帰路の軌道はつくり直しています。どんなに困難な状況でも、ほかにミッションを達成できる方策がないか考え抜き、アイデアを見つけ出してしまうJAXA宇宙研の皆さんの執念はすごいと思います。

「頑張ったからこそ、ムダになる」というジンクス

Q:今回の再挑戦、具体的に「あかつき」は何をするのでしょうか?


基本的には、ある姿勢を決め、時間を決め、エンジンを噴きます。その準備はできていますが、やはり、やってみないと分からない部分はあります。何が難しいかというと、うまく噴かなかったときにそこで諦めていいのか、というところなんです。噴いた量が0%ならどうか、20%なら、50%なら、70%ならどうするんだ、と。どんな値もあり得るわけですが、限られた時間でそれに対処しなければならない。たとえ最初のトライがうまくいかなくても、すぐに姿勢を変えて別のスラスタで噴くなど、準備と議論を重ねてきました。もちろん、うまく行くのであれば全然必要のない準備です。うまくいく前提で必要と思われる量に対し、10倍も100倍も考えて準備しています。


Q:ムダになるかもしれない、多分ムダになるだろうことも準備を……。


この5年間に、1度も起きていない事象まで想定し、それが起きたらどうするかまで考えています。5年間起きてないことは起きないと思いたいですが、でも起きたらどうするか。考えておかないと対処もできません。実際に起きるかもしれませんからね。


Q:そこまで考え抜くのなら、確かに10倍とか100倍になってしまいそうです。


異常時対応のエッセンスはA3用紙1枚ぐらいですが、そこに至るまでには多くの検討が必要です。今はその内容について議論を重ね、対応する手順を準備しています。トラブルを想定して対策を考え、かつそれを紙に残しておくことは、ケーススタディであり、訓練にもなりますから。


Q:まさに机上訓練ですね。


そうです。でも、より多くの準備をするほどミッションはうまく行って、その準備したことがムダになってくれるというジンクスがあります。「頑張ったからこそ、ムダになる」という(笑)。


Q:12月7日をどういう心境で迎えることになりそうでしょうか。


準備がすべて終わっていても、頭の中ではぐるぐるとシミュレーションが回っていて、「あれはどうなっていたかな?」と引っかかると、設計データとか運用手順とか仕様書を調べ始めたり、そんなことをやっているのではないかと思います。これまでも大きなイベントの前はそんな感じでした。


Q:では、もし今から、12日7日の自分に声をかけるとしたら?


「大丈夫だよ」と言ってあげたい気はしますが、たぶん言わないと思います(笑)。


Q:どうしてですか?


頭をぐるぐるさせているのは良いことなので、そっとしておきます。安心させても仕方がないし、言ったとしても安心しないだろうから、そっとしておくのが一番です(笑)。

2008年12月、一次噛み合わせ試験実施中のJAXA中村 正人教授(左)とNEC大島 武(右)2008年12月、一次噛み合わせ試験実施中のJAXA中村 正人教授(左)とNEC大島 武(右)

2015年10月20日 取材
(取材・執筆 喜多 充成

金星探査機「あかつき」は、金星周回軌道投入に成功しました!

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